死にたがりの王子と守りたがりの王様の話6章_7(完)

「お前さ…俺にくらい本当の事言っておいても良かったんじゃね?」 美しくも温かいその光景を目の端に移しながら、ギルベルトはようやく立ち上がって、今回の仕掛け人の隣へと移動した。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話6章_6

………… ………… ………………?!!!! ああ~~~??? ぽか~んと男 3 人呆ける中、にこにこと微笑むエリザ。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話6章_5

「ふ~ん…じゃあ約束だから、これ」 と、そこでエリザベータが話を聞きながら指先でいじっていた小瓶をアントーニョの目の前にちらつかせた。 中にはまるでアーサーの瞳のように綺麗な黄緑色をした液体…。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話6章_4

「…ギルちゃん……」 そこでアントーニョは初めてギルベルトを振り返る。 静かな…しかしゾッとするような狂気の目で……。 「…な、なんだよ…」 冷やりとギルベルトの背を汗が伝った。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話6章_3

「寝とるかもしれへんしな…静かにな」 こうして足早に戻ったアーサーの寝室前、普段騒々しい男が、珍しくそうギルベルトに注意を与えて、ソッとドアを開いた。 部屋はランプの灯りすらなく、ただ月あかりのみに照らされ、薄暗い。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話6章_2

こうして着いたまだ肌寒い季節の夜更けの裏庭は少々冷え込んでいて、あまり長居をしたいとは思えない。 それはアントーニョも同じようで、 「もう…交渉とか要らん気ぃする。寒い…。はよ戻ってアーティと寝たいわ」 などと、両腕で自分の身体を抱えて震えながら呟いている。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話6章_1

夜…ここ数日そうであるように腕の中には愛おしい温もり。 小さな金色の頭をアントーニョの懐に潜り込ませるようにして眠る優しい命。 アントーニョの幸せの全てがここにあると言っても過言ではない。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話5章_4

そして…次に目を覚ましたのはベッドの上だった。 まだ牢に入れられていないのが不思議だ。 病人だからとりあえずは考慮しようということなのだろうか…。 あの優しい人の良い王なら考えられる。 そんな相手を騙して傷つけたと思うと、本当に居たたまれない。 それでもさすがに、い...

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話5章_3

――あった…。 自室とアントーニョの寝室の丁度間くらいにかけてある絵画。 その裏にレバーを見つけてそれを引くと、丁度その下あたりに通路が現れる。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話5章_2

「…とーにょ?」 とある日の明け方の事だ。 アーサーが起きたら隣に確かに一緒に床に入ったはずのアントーニョの体温がなかった。 それだけで、ひどく不安に駆られる。 外はひどい風で、ざ~ざ~と揺れる草木の音が、なんとも不吉な始まりを演出している気がした。 実際、それは...

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話5章_1

――ひと肌ってね、案外安心感与えるもので、精神の安定っていうのは時に体調の安定にもつながるのよ。 前回体調を大幅に崩したのは薬の飲みすぎによる副作用、胃痛との事だが、それを知っていて薬師エリザベータはアントーニョにだけではなく、アーサーにもそう告げた。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話4章_7

ギルベルトが自分の葛藤にそんな風に決着をつけている間…… 「…トーニョ………」 と、か細い声と共にアントーニョを潤んだペリドットが見上げてくる。 「…なん?ちょっと呼吸楽になったか?」 と、聞くと、コクンとあどけない様子でうなづく少年に、アントーニョは愛おしい宝物を...

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話4章_6

(…上手いな) 確かにこれでアントーニョはさらにアーサーの傍につきっきりになって、自ら前戦に行こうなんて気を起さなくなるだろう。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話4章_5

こうして一日千秋の思いで待ち続けているうち、ギルベルトが無事薬師を連れて戻ってきた。 エリザベータ・ヘーデルヴァーリ。 元王室付きの薬師の一族なのでフォレストの薬草その他にかなり通じている女性らしい。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話4章_4

――ああ、これでひとまず安心や……。 ギルベルトが薬師を探しに行ってしばらくすると、アーサーの容体は少し落ち着いたように見えて少しほっとはしたものの、単に一時的に小康を保っているだけかもしれないので、安心はできない。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話4章_3

痛みはだいぶ緩和されたものの、やっぱりどことなく胃のあたりの不快感は残っていて、アントーニョにどんなに勧められてもスープを一口二口しか食べられず、再び疲れて眠ってしまったアーサーが眼を覚ました時、アントーニョは隣にはいなかった。

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話4章_2

自分は契約の破棄を企んだ…と、アーサー的には認識していたが、ギルベルト的にはそれでもアーサーを害するという選択はないらしい。 ギルベルトにとっては、とにかくアントーニョに守られて生きてくれる事が最重要課題だという事だ。 ということで、アーサーの今回の行動も咎めだてす...

死にたがりの王子と守りたがりの王様の話4章_1

ちょっと苦しいとかそんなレベルではない。 ありったけの薬を飲んで数十分後、アーサーはすさまじい痛みにのたうち回っていた。 もう痛すぎてどこが痛いのかもわからない。 腹部全体に吐き気すらもよおすほどの壮絶な痛みが広がる。