死にたがりの王子と守りたがりの王様の話6章_6

…………
…………
………………?!!!!

ああ~~~???

ぽか~んと男3人呆ける中、にこにこと微笑むエリザ。

「普通に考えたら…相手に飲ませる事で自分が死ぬってねえよな……」
は~~とギルベルトはその場にしゃがみ込んだ。

普通ならそんな当たり前の事に気づかないはずもないギルベルトだが、今回は本当に色々ありすぎてすっかり判断力を失っていた。

アーサーはキャンディのように澄んだまん丸な目をさらにまん丸にしていて、アントーニョは同じく驚きに目を丸くしてしばらくフルフル震えていたが、歓声をあげてアーサーを抱き起してそのまま抱きしめた。

「え、えりざっ…いったいどうなって…っ…」

ぎゅうぎゅうと抱きしめられたまま真っ赤になってワタワタとエリザを振り返るアーサーにエリザは騙してごめんね、と、笑う。

「普通に王様がアーサーが誰でもかまわないくらいアーサーを大事に思っているって言ったって信じないでしょ。
だからね、王様の本音を聞かせてあげようと思って♪
でもこれでわかったでしょ?」

「わ…わかったでしょって……」
「ね、王様?」

ぱくぱくと口を開閉したまま言葉を無くすアーサーからエリザは対象をアントーニョに移す。

アントーニョはそこでようやく抱きしめたまま顔をうずめていたアーサーの黄色い頭から顔をあげた。

「結局…どうなっとったん?
別にアーサーがこのまま生きとってくれるならええんやけど…」

「え~とね、怯えて死にたがっていたアーサーに毒薬だと言って仮死状態になる薬を飲ませたの。
身体は動かない。呼吸も止まる。でも本人意識はあって声は聞こえてる。
だからね、アーサーが死んだと思ってどれだけ王様が悲しんだか、どこの誰でも構わないから生きていて欲しいと思っていたかはちゃんと聞こえるってわけ。
王様が生きている限りは守ってもらえる、怖がらないでも、死にたがらないでもいいんだってわからせるには、こうするのが一番と思ったから」

「…おおきに……ほんま、おおきに……」

アントーニョは先ほどとは違った理由で涙をぽろぽろ流しながら、両手でアーサーの頬を包み込み、上を向かせると、その額に口付けた。

「もう…やめたってな…。許すから…怒らんよ。アーサーが何しても親分許したる。
でも一つだけ…自分の命を自分で縮めるような真似だけはあかん。許さへんからな」

あかんよ…ともう一度震える声で言ったあと、アントーニョは再びアーサーを強く抱きしめて丸い頭に顔をうずめる。

本当に全てを失ったと思った事を考えたら、もう何でも許せる気がした。
この子を失う事以上に許せない事なんて何もない。

「…トーニョ……俺……」

揺れる大きな瞳…。
開きかけた震える唇に、アントーニョはそっと人差し指を押し当てた。

「どうしても言いたい事があったら言ってもええけど…そうでないなら言わんとき?
俺が聞かん言うたんやから、アーサーが何も気にする事ないんやで?
自分はただ親分の傍で笑っていてくれたらええんや…」

優しく優しく…自分が出来うる限り優しい声でそう言うと、そっと頭を撫でる。

もう二度と傷つけない…怖がらせないように…今度こそ守ってみせる…。


守りたがりの王は心に固くそう誓いつつ、温かさを再び取り戻した柔らかな頬、可愛らしい鼻先、金色の髪に覆われた広い額に口付けた。


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