kmt 短編
最近、一番上の妹、貞子が、義勇と仲が良いらしいということは実弥も知っていた。
冨岡義勇は約束の10時ぴったりに来た。 ──は~い!今開けますっ! とインターホンで応えるのと同時に、貞子はそれまで一緒に準備や掃除を手伝ってくれていた長兄を
──家じゅうの大掃除するからっ! と、長兄以外の弟妹と次兄を母と共に出かけさせた休日。
──貞子ちゃんみたいに女子力高くてよく気がつく良い子が錆兎には似合うのかもね 『鱗滝先輩は何でも出来てカッコよくて完璧な人だから、その隣に居るのが似合う女子になろうと思うと大変そうですよね』 と言った貞子の言葉に、冨岡義勇からそう返ってきた時は、貞子は内心ガッツポーズを決めた。 ...
朝…貞子はいつも通り早く登校する。 部活の朝練の子達はちらほらいるものの、彼らはたいていそれぞれの部活の教室へと行ってしまうので、教室内に居る生徒はまばらだ。
例のハンカチの話以来、冨岡義勇には微妙に距離を取られてしまっている。 冨岡義勇が貞子と話すのが辛くなってきたか、貞子を嫌い始めたか…。
冨岡義勇はチョロいと思う。 ちょっと揺さぶって見ただけで容易に動揺する。
信じていないわけじゃない。 鱗滝君は浮気なんてする男子じゃない。 そうは思うものの、自分と貞子を比べてみたら、女子力と言う意味では完全に負けているし、年齢だって男性は年下が好きだとよく聞くから、2歳下の彼女には負けている気がする。
その日も朝に貞子と一緒にお菓子を食べながらお茶を飲んでいた。 色々おしゃべりをするその中で、義勇が中等部の入学式での錆兎との出会いの延長線上で、その時に借りたハンカチを今でも大切に持っているという話をしたら、いつもは笑顔の貞子が、少し戸惑ったような顔で、あっ…と小さくつぶやいた。
──鱗滝先輩って、本当に冨岡先輩のこと好きなんですね 義勇は今日も貞子と朝のお茶会中だ。 最近恒例となったそれは、誰にも内緒の秘密のお茶会。