──真菰ちゃんてさ…錆兎さんの恋人…とかではないん?
一応人目が届かなくなることだし、女子は女子同士で行動したほうがいいだろうということで、昼間に薬草や山菜をとるために女子組を先導する真菰。
森で罠にかかった獣で肉を補充したり、川で罠にかかった魚を補充したりする男子組と分かれて少し離れたあたりで、女子の一人がそんなことを聞いてきた。
昼間だと鬼も居ないのでガサガサと足音がするのにも構わず草むらに足を踏み入れつつ、振り返りもせずに聞き返す真菰。
後ろを見なくても、聞いた女子以外の二人もなんだか緊張気味に、前を歩く真菰に視線を向けているのは気配でわかった。
男子二人の中で唯一の女子と言うことで、そのあたりは興味を持たれるだろうなぁとは思って居たが、この生活が始まってすぐではなく、なぜ2日目の今なのか?と、そのタイミングについては不思議に思う。
それについて最初に口にした女子だけではなく、女子3人で顔を見合わせて視線で相談している気配。
そして結局最初の子、凡人百舞子が再度口を開いた。
「えっとさ、最初は唯一の女子だから錆兎君か義勇君、どっちかと恋仲とかか、二人が好意を持っているお姫様な立ち位置かと思ったんだけど…錆兎君、真菰ちゃんより義勇君に対しての方が優しいというか…甘いというか……」
なるほど、そういうことかっと、真菰は小さく笑った。
「みんな鋭いね~。
うん、確かにさ、お姫様役って言うなら、あたしより断然義勇だね~」
「あ…やっぱり…」
「なんかさ、錆兎君が…」
「そそ。真菰ちゃんより義勇君助けてあげてることが多いなと思って…」
口々に言う女子達に、真菰は言う。
「あたしはお姉ちゃんだからね。
錆兎より先に弟子入りしてる姉弟子だし、先生の所の生活の決まりとかを錆兎に教えたのもあたしだし?」
「義勇君は…一番あとから弟子入りしたの?」
「そう!あたし、錆兎、義勇の順ね。年齢も同じく。
だから物理的にはね、錆兎の方が腕力あるから色々やってはくれるけど、錆兎にとってあたしは守ってあげる対象ではない感じかな?」
「錆兎君はそうだとして…真菰ちゃん自身は?」
「あたし?あたしもそういう意味では錆兎はないなぁ…。
というか…あたしの人生の目的は師範の鱗滝さんを幸せにすることなのっ。
この世で一番誰が好きかと言えば、断トツで鱗滝さんだからっ」
そう断言すると、女子3人はどこかホッとした様子で顔を見合わせた。
「あたし的にはね、錆兎はあたし達の中で剣士としての才能が一番あるから、柱まで昇りつめて鬼殺隊の御旗くらいになって、鱗滝さんが元柱としてだけじゃなくて、育て手としても優れた人物なんだってことを広めて欲しいんだよね。
で、あたしはそのための黒子になって協力したいから、目立つことはしたくないっていうか…。
だから男女ともに好意を向けられるのを阻害する原因を作りたくないから、出来れば彼女とか作らずに、義勇を甘やかして過ごすくらいが良いかなと思ってるんだけど」
「「「協力するっ!!それ、あたし達もめっちゃ協力するっ!!!!」」」
個別ではなく3人揃って話してくる時点で、憧れやなにかはあっても自分が絶対に彼女にとかそう言うのではないんだろうなと思って話せば案の定で、彼女達は真菰の言葉に身を乗り出すように前に回り込んで、勢い込んで言ってきた。
「うちの兄弟子が言ってたんだけどね、隠に前田って衣装係の男が居てね、それが腕は良いけど女の子に露出の高い隊服作るっていうんで、大ひんしゅく買ってるんだって。
でもさ、ってことは隊服も少し改造するのが許されるってことじゃない?
だから私、選別超えたら隠を希望して、錆兎君と義勇君の服を作りたいなって思ってるのっ」
と、手を挙げて言う百舞子。
「あたしはね、暇をみつけて錆兎君のカッコよいエピソードとか義勇君の可愛さとか、色々書き留めて記事を作って…」
と、同じく手を挙げて言う、壱藩仁美。
そしてそれに続くように、最後の一人、園辺射子も、
「私は任務の合間にそれを広めるっ!」
と手を大きく振る。
「「「もう、めっちゃ推せるよねっ!!推し活できれば仕事も楽しいっ!!」」」
と、3人声を揃えて言ったところで、真菰は思いがけない…しかし心強い協力者が3人も出来た事を悟った。
思ってもみなかった良い流れに心の中でガッツポーズを決めながら、真菰が
「ありがとうっ!じゃあまずは選別を無事突破しないとだね」
と言うと、
「「「うん!!」」」
と、力強くも良い返事が返ってくる。
こうして思いがけず同期女子の絆は深まって、野望へ大きく前進することになったのであった。
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