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イングランドはたまにひどく思いつめたような…何かをこらえたような目をしているようにスペインは思う。 言いたい事を言いたい放題言っているようでいて、本当に言いたい事は言っていないのではないだろうか……。 それはきっと自分の気のせいではない。 実際、イングラ...
道中は、元々ジッとしてるのが苦手な親分は警護に混じって馬であちこち警戒してはるので、馬車の中にはうちとイングランドのみ。 「何か聞きたそうな顔してるな」 と、そこでお見通しの賢いうちの弟分は馬車の窓に付けられたカーテンを閉め、仮面をはずすと、ふ~っとため息を付きまし...
みなさんこんにちは、ベルギーです。 大変です。うちのイングランドがグレてしまいました。
最初はほんの好奇心だった。 深い意味は無い。 男女共に気に入れば手を出していた自分と違って、近頃羽振りの良くなってきた旧友が手を出すのは大抵女だった。 記憶にある範囲では男を相手にしていたことはない。
――月の光がみせてる幻…一夜の夢だから、そんなに怯えないで、愛しい人 遠く窓が開いた気配に身を起こしてみれば、風に揺れるカーテンの中から現れる人影。 はちみつ色のサラふわな髪が月明かりに照らされて光る。 濡れて潤んだような紫がかったブルーの瞳は柔らかく笑みの...
「ベルギー、ちょおええ?」 それは無事不可侵条約の調印式を終えて親分が帰城しはった時のこと。 珍しくイングランドのところへ直行せんと、相も変わらず洗濯に勤しむうちの側の茂みからちょこんと顔を出しはりました。
みなさん、こんにちは。ベルギーです。 うちの親分がやらかしました…
それは不本意な決断ではあった。 数百年にも及ぶ南下のための戦い。 それにフランスは終止符を打とうとしていた。 いや、正確には休止符というべきなのだろうが…。
みなさん、こんにちは、ベルギーです。 うっとおしいです。 ほんま、うっとおしいです、この男。 この男て誰て? そりゃあもちろんうちの親分、スペイン王国さんの事に決まってますやん!
ベルギーの宗主国である スペイン親分 は、ベルギーがこの城に引き取られて来た頃にはすでに馬鹿みたいに浮名を流している男だった。
イングランドが熱を出した。 なんだか疲労からきたものらしいが、その原因はどう考えても自分の宗主国、スペイン親分にあるとベルギーは思う。
「自分の部屋?もうないで」 「はあ??」 国に帰ろうとしてスペインにみつかって、城に連れ戻された日のことである。 何故かスペインの部屋で目が覚めたイングランドが自室に戻ろうとしたらスペインに告げられたその言葉は、イングランド的にはなかなか衝撃的だった。 ...
「まだ終わってへんで?イングラテラ」 と、それで許してやる気もなくて、スペインがその顔を覗きこむと、気を失っているイングランドの唇がかすかに動いている。 (…スペイン…スペイ……迎えに…来て……) つ~っと涙と共に溢れる本音。 それを認識した瞬間...
どうやら自分は結構長い間、無自覚に恋をしていたらしい…。 それに気づいたその日に、もうなし崩し的に押し切って、その最愛の相手と結ばれて幸せな気分で眠りについた翌朝のことだ。
…温かい……… 心地良い感触。 何かはわからないが、温かいものに包まれている。 薄めを開ければ欲を湛えたエメラルドの瞳
「大丈夫やった?」 にこりと浮かべる笑みは、出会った頃によく向けられていた温かみのあるもので、最近あまりに向けられていなかったせいもあって、あまりに現実味がなくて、イングランドはとっさに反応できずにそのまま言葉もなくスペインを見上げた。
一人ひっそりとスペインの城を抜けだして、自国への帰路をたどる道々。 ぽつりぽつりと降っていた雨はすぐやんだが、イングランドの目からこぼれ落ちる雨は当分やみそうにない。
自らの目から流れ落ち、頬を伝う雫を追うように、柔らかい温かい何かが頬に触れる。 久々に感じる心地よさ。 ああ…温かい…… やがてスッと離れていこうとする温かさに焦って手を伸ばすと、ビクリと震えたぬくもりは、しかしそれ以上離れては行かなかった。 ――薬草…変えるから…...
流されるイングランドを追っているうちに、少し離れた所まで来てしまったらしい。 イングランドを腕にスペインが泳ぎ着いたのは、どうやら崖に囲まれた入江のようだ。 見渡す限り海と木々。 そして幸いにも小さな小屋が立っている。
「待ってっ!!待ったってっ!!!イングラテラっ!!!!」 少女が逃げた事で半ば疑惑だったものが確信に変わった。 何故ここに?とか、何故ドレスで?とか色々疑問はあったが、一番の聞きたいのは、何故今自分から逃げているのか、である。