ダンデライオン_12章_1

みなさんこんにちは、ベルギーです。
大変です。うちのイングランドがグレてしまいました。



「自分…めっちゃ悪い顔しとるんやけど…」
「ん~、まあ悪ぃ事考えてるからな。」

国境沿いのフランスの城。
なんでもフランスの国体さんが親分が居はらへん隙にイングランドの寝室に忍び込んだという事で、大騒ぎになりました。

親分のその時の激怒っぷりに、すわ条約破綻の危機か?とおそれをなしたあちらの上司さんは、もちろん即公式に謝罪をすると共に、条約の正式な締結に際して、謝罪の意を表すために隣接する国土の一部をスペインの国に譲渡するといった低姿勢っぷりです。

スペインという国としてはそれを受け入れ、ことなきを得たわけなんですが、親分はもちろんまだめちゃ怒ってはって、親分が同席する場ではあちらさんはビクビクしはってます。


そして今は、譲渡される土地についてやら、色々な事で変更になった条約について詰めるために先を歩く上司や親分に付き従って広間に向かう途中です。

出来うる限り外ではイングランドを自分の身辺から離したないという親分の要望で、イングランドも出席することになって、さらに何かあった時のために信用のおける者を側に配置したいということで、うちまでわけのわからない条約の席につくことになりました。



なんや色々がおおごとになる中、親分いわく、

いきなり不審者に押しかけられて怖い思いした

らしいはずのイングランドが、可愛らしい顔に、仮面の上からでもわかるくらい悪どい笑みを浮かべているのは、幸いにして最後列を並んで歩いてるうちにしか見えません。

思わずコソリと冒頭のように声をかけると、冒頭のように返事が返ってきて、うちは内心冷や汗をかきます。

面倒な事にならんとええんやけど……。



「悪いことって…なに?」
と聞いてみると、イングランドは綺麗な白い人差し指を可愛らしい口元に近づけて、シ~ッとでも言うように小声で

「…あとでな。」
と、ニコリと微笑みました。


その笑みが妙に妖しく見えるのは、あどけない童顔を仮面で隠しているせい…だけではないようです。

こうして先様の待つ広間へ。



…うあ……この中で条約の話し合いなんて出来るん?

やたらと華美なテーブルと椅子…はいいとして、あちらの国体さん、めっちゃオシャレしてはって、うちらが入ってくると他が止める間もなく、こちらに来はる。
正確にはイングランドの方へ…

もちろん親分の不機嫌さはMAX。

「自分…何するつもりなん?!」
と、イングランドの隣に立とうとするフランスさんからガードするように、イングランドの両肩に手を置いて、クルリと自分を挟んで反対側に行かせはった。

それに対して、あちらさんは挑発的な口調で

「なあに?ゲストの椅子を引こうとしただけだよ?
余裕なさすぎでしょ。近づかれて取られるのがそんなに怖い?」
と、片方の眉をあげて、肩をすくめはる。


うああああ~~~。

国家としてはとにかくとして、個人としては全然反省する気なし、やる気満々や。

そして…当のイングランドはというと…少し困ったように俯いて、きゅっと親分の腕をつかんどる……けど、お互い睨み合ってる二人の目には入らへんその口元に一瞬笑みが浮かんどるのを、うちだけは見逃さへん。

「ああ、怖いわ。
いきなり寝所に忍び込むような不審者に近づかれてこの子に怖い思いさせるのは、めっちゃ怖いで?」
と、親分も珍しく皮肉な顔で言いはるし、それにまたフランスの国体さんが

「どっかの誰かがこの子の目が他に行かないように隠してるから、きちんと話して外の世界を見せてあげるには、他の方法が無かっただけで、誰かさんみたいに強引に連れて閉じ込めておこうなんて野蛮な真似、俺はする気はなかったよ、もともと」
と、知らぬこととは言え、痛いところをついてきはる。

ああ、もう話し合いどころじゃないんやない?と思ってると、

「スペイン、ええかげんにせえやっ!
話が進まへんと、いつまで立っても自国へ帰れへんで?!
と、うちらの上司が、

「フランス、謝罪をした翌日にその態度、我が国の信用を地に貶めるつもりか?
いい加減にしなさい。これ以上国土を失いたいのかね?!
と、あちらの上司が間に入りはった。

さすがに上司。

双方一番痛いところを突かれたらしく、しぶしぶ二人共それぞれの席に付き、それを確認して、双方の上司がため息混じりに着席しはる。


こうして双方の国体はムスッとそっぽを向いた状態で、二人の上司の間で着々と条約案が作られ、最終的に双方のサインで締結しました。

…が、双方上司が握手して立ち上がってからが、またバトルで……


「じゃ、これで仕事は終わりってことでっ。
イングランド、昨日の非礼のお詫びに城内を案内するよ」
と、にこやかに駆け寄ってきはるフランスさんと、

「結構!ノーセンキューやっ!!
仕事終わったし、早々に安全な自国に帰らせてもらうわっ」
と、またイングランドをガードしようとしはる親分。

「スペイン、お前に言ってないよ?
俺はイングランドに言ってるのっ。
お前一人で帰ればいいじゃん」

「寝所に忍びこむような危険人物の側に可愛えイングラテラ残していけるわけないやんっ!アホちゃうっ?!」

「お前だって他ではやってたくせにっ!」
「自分と違ってちゃんとやってええ相手かどうかは考えとるわっドアホ!」

「へ~、やってたことは認めてんじゃんっ!
イングランド、こいつも十分危険人物だからねぇ~」

「何アホな事吹き込んどるんっ!
イングラテラ、こいつの言う事なんて本気にしたらあかんでっ!」

などなど、再度勃発する口論。

まあ…セリフを華麗にスルーして絵面だけ見てれば、タイプが違うものの双方雰囲気のある整った顔の青年二人が真面目な顔で言い争ってる図はなかなか目の保養なんやけど、言い争ってる内容がタラシの暴露と思うと、頂けない気ぃがします。

というか、これどう収拾つけるんやろ?と、うちが争いのまさに渦中のイングランドにチラリと視線を向ければ、イングランドはうちの視線に気づいて他に気付かれないようにニコリと笑って見せました。

そしてその後おもむろに、親分の光沢のある黒い上等な礼服の腕を白いまだ華奢な手ぇでぎゅっと握りました。
もちろんどんだけ他と言い争っていたとしても、親分がそれに気づかないわけはありません。

「なん?イングラテラ」
と、急に優しい声になって、少し屈んでみせれば、イングランドはいかにも内気な子ぉみたいに、小さな小さな声で

「…俺を見つけてくれたのは…エスパーニャだから……エスパーニャがいい…」
と、俯いて、まるで子猫みたいな可愛らしい様子で小さな金色の頭をスリッと親分の肩口に擦りつけました。


なん?自分そんな殊勝なキャラやないやん?
猫は猫でも甘えん坊でおとなしいアビシニアン言うよりは、元気でやんちゃなアメショやんなぁ?
……と思うたのはうちだけらしかったです。

うちより長くイングランドといて、うちよりイングランドをよお知っとるはずの親分は、声にならない声をあげてイングランドを抱きしめはります。

「ほんま”親分の”イングラテラはめっちゃかっわ可愛えなぁ!」
と、ぎゅうぎゅうイングランドを抱きしめてつむじや頬などあちこちにキスを落としはる親分の隣では、フランスさんが

「だ~か~ら~!単に早く見つけただけだよね?!
騙されちゃダメだよ、イングランドっ!」
と、地団駄を踏みそうな勢いで悔しそうに異義を唱えます。


そんな様子にうちはため息。
なんやイングランドがわざとフランスさんの競争心煽ってるようにみえるのは、うちの気のせいやろか……

結局さいさん引き止めはるフランスさんの誘いを振りきって、うちらは翌日にはスペインへの帰国の途へつきました。




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