ベルギーの宗主国であるスペイン親分は、ベルギーがこの城に引き取られて来た頃にはすでに馬鹿みたいに浮名を流している男だった。
端正な顔なのに、笑うと目元が少しタレ気味になって、近寄りづらい感じがなく、親しみやすい。
普段ヘラヘラ明るいのに、こと色ごとになると、とてもセクシーなのだと、親分と関係のある女性陣は口を揃えて言っていた。
同じ相手とあまり続けることなく、その時々で目についた相手にちょっかいをかけるその様子は、まだそういう色ごとに興味のない年頃だったベルギーからすると、ちょっとありえへんわ…だったのだが、お年ごろのお姉さま達にしてみたら、一晩で良いから遊ばれてみたい男ナンバーワンだということだった。
ベルギー自身がそれなりにお年ごろになって、まああれはそういう意味では良い男なのだろうと言う気持ちは多少わかってきたものの、そのプラス面より先に、ありえへんわ、という感覚を持ってしまっているので、『家族として、仲間としては良い男だが、間違っても恋人にはしてはいけない男ナンバーワン』という認識を持つに至っている。
だから嫌いではないが、親分もイングランドと同様に、恋愛相手にはなりえなかった。
そんなふらふらと軽くあちこちで遊びまくっていたスペイン親分がイングランドに手を出した。
それは姉貴分としては由々しき問題なのだが、逆に知り合ってとてつもなく長い時間を共にしているのに今まで手が出なかったというのは、それだけ特別な相手だったのだろうか…とも思う。
そうならいい。
…というか、まあ色々協力してやってもいいくらいである。
「あんたはもう寝とき。姉ちゃんはちょっとこのままいつまでも睨まれても嫌やから、親分に話してくるから」
ポンポンと軽く頭を叩くと、ベルギーは
「おやぶ~ん、話あるんやけど~」
と、そこで初めて自分に気づいた宗主国に向かってブンブンと手を振って歩み寄った。
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