魔王を倒すぞ
「今回は悪いが、トーニョ、最初はお前1人で突っ込んでくれるか? お姫さんの護衛を厚くしてえ」 さあ行くぞ、と、ドアの前。 最終確認の段階でプロイセンがいきなり言いだした。
――お姫さん、朝だぜ? ちゅっと額に振ってくる口づけ。 最後の街でイタリアに話を聞いた夜くらいからか…お休みとおはように何故か額への口づけが加わるようになった。
「トーニョ、大丈夫か?」 あれから3日後。 装備を整えて魔王へ初挑戦する事になった一行。 魔王城から数百メートルの所に今日は野宿。 そして明日の朝出発して、昼前に魔王城に突入だ。
――アリス…誰かに似てると思わない? というイタリアの言葉に、プロイセンはどういう方向に話を持って行くつもりなのかを確認せずにイタリアに主導権を渡した事を後悔した。
プロイセンがずるずると気を失ったアメリカを引きずって行くと、フランスが『ひぃっ』と悲鳴をあげた。 悲鳴をあげたいのはこっちだ…と、それを見たプロイセンは言いたくなった。 断固として言いたい。
プロイセンが酒場の入口に辿りついた時、中はちょっとした騒動になっていた。 …なんだっ?! と、慌ててドアをくぐる。
――で?俺に何を聞きたいの?プロイセン? さきほどまでの皆の前での邪気のない笑みと違って、どこか含みのある笑顔で聞くイタリア。 絶対にプロイセンが言わんとする事を分かって言っている。 ヘタレな平和主義者という表の顔があまりに前面に出過ぎていて皆忘れているが、彼もまた生き馬...
魔王の城までの道程で最後になる街。 そこについた時なぞは解けた。
やばい…お姫さんが可愛すぎる…… もうそれはプロイセンにとっては切実な問題だった。 日々きゅん死にしそうだが、外敵から身を守るためのとげを取り去ったイギリスは寂しがりやで、さらにこちらの世界では武器になる筋力も落ち魔法も使えなくてか弱いので、そんなイギリスを残して死ぬわけ...
フランスが連れて来た怪しい男いわく、今ヒーラーが狙われているらしい…。 イギリス扮するアリスが誘拐されたと言うのは飽くまでイギリスだと言う事を隠すための嘘で、当然ながら実際に誘拐されたわけではない。 だから、その話は初耳だった。 しかしその話を聞いて、そう言えば…イギリ...
こうしてトリックも連れて行くと言う事でスペインの同意も取って、まずは自己紹介。 スペインよりはボロを出さずに卒なくこなすだろうと言う事で、ギルベルトが一歩前へと踏み出した。
フランシスが戻ったのは丁度3日目の夕方だった。 村に戻って1件しかない宿屋に泊まっている一組しかいない泊まり客を見つけるのは当然難しいことではありえない。 それでもこんな携帯もない時代に無事にまた合流できるというのはラッキーなことだ。 だが…恐ろしい事にそんな幸運も時とし...
本当に小さなその村に1件しかない宿。 スペインとフランスと合流してから初めて宿を取る事になるのだが、そこで揉めた。
朝起きて食事を取ったら即移動。 昼食は朝のうちに作っておいて歩きながら摂る。 その代わり夕方になったら野宿の準備もあるので早めに移動を止め、フランスがテントや夕食の準備をしている間に自分は辺りを見周り、危険がないかの確認…と称した散歩。 グルリと半径200mくらいの範囲を見...
そしてプロイセンはそのままテントを出て悪友達が囲む焚火へ。 「お姫様どう?眠れたみたい?」 と棒でたき火を掻き混ぜて言うフランスに 「ああ、やっと寝た」 と返すと、プロイセンも焚火の前に座りこむ。
「お姫様どう?眠れたみたい?」 パチパチと焚火がはじける音がする。 それを囲んで火の番をしながら、フランスは顔をあげてプロイセンを見あげた。
イギリスの服を買い、その後、プロイセンが預けた荷物を宿屋のカウンターで受け取って預かり料を払って戻ると、スペイン達も同じく彼らが泊まっていた宿から荷物を持って出てきて、それから一緒に街を出た。
今プロイセンは非常にピンチだ。 その原因は腕の中。
「もう、ほんっと美しくな~い! 始まりの街って本来はのどかな田園の村みたいな所だよね? なんでこんな荒んだ街なの?」 「親分それより最初の街で出会ったのが髭の変態の方が嫌やわぁ~。 せめてロマかイタちゃんやったら良かったのに…ほんま神様ひどいわ、ひどすぎやわぁ…」
自分で言いだした事なのだが、プロイセンは今とてつもないピンチを迎えていた… 最初の街を出て次の街を目指す間、たまたま向かう先が同じだという3人パーティと行動を共にすることにした。 これが失敗だった。