白姫
ちょっとした事ですぐ真っ赤になるほど初心なのに、ふとした瞬間にいたずらな小悪魔に変身する。 確かに中身は可愛い部下と同じはずなのに、ドレスを着た瞬間、本当に少女の性質が溢れてくるのが、不思議だ。 今ギルベルトの前にいるのは確かにアルトではなく、 “あの”お姫さんな...
ふんわりと裾が広がったノースリーブの真っ白なワンピース。 胸元についているパットで出来るわずかな膨らみと、全体的の細く華奢な造りの身体が、どこか儚げで守ってやりたくなるような愛らしさを醸し出している。
「これ…課長補佐の……別荘なんですか……」 その日の夕方…とある北部の街の海辺の建物の敷地内に車が停まった瞬間…アーサーは思わず呼び方と言葉が会社仕様にもどってしまうくらいには驚いた。 だって、海辺も海辺。 裏側のバルコニーから直接砂浜に出られてしまうような位...
高速は流れが止まるほどではないがやや混んでいて、ギルベルトはたまに少し困ったように綺麗な形の銀の眉を寄せている。 そうして12時を少し回った頃に辿りついた大きめのサービスエリア。 大きな駐車場はほぼ満員で、その中で空きの表示のある列に進んで車を止めた。
そう言えばアーサーは学校で全員が行く類のモノ以外、旅行というものに行った事がない。 今更ながらそれに気づいたのは、ギルベルトが出発してまず立ち寄ったのが、少し離れたマーケットだったことだ。 「何故マーケットに?」 と、首をかしげるアーサー。 向こうで自炊を...
──いったい何日着させるつもりなんだ? 翌日…荷物をトランクに詰め込んだ車で別荘に出発。 その中にかなりの量の洋服が昨日買いこんだ時のまま積まれている。
「ギルベルトさん、今年のバカンスは彼女さんと過ごすのかしら?」 ざわりざわりと3人で何か話し合ったあと、1人が代表としてといった感じで一歩前へと足を踏み出してきた。 美人なのに…いや、美人だからこそか… 迫力があって怖い。
バカンスに出かけることを決めてから出かけるまで中 1 日空いたのは何故かと言うと、ギルベルトのたっての希望で、選択の幅の多い都会で女装用の洋服を買うためである。 ──だってな、これ逃したら早々にそんな機会ないだろうし、とびきりの格好をしたお姫さんとデートしてえじゃん!...
恋人がいるのに他の女にベタベタされたくない。 でもアーサーが自分が恋人だとばらされたくないということなら、そういう女避けにバカンスの間にしたい事がある。 そんな提案でちゃんと通じていると思った自分が馬鹿だった…。
納得したところでやることは一つだった。 そこで念のために確認を取る。 「なあ、アルト。 アルトがお姫さんだったってことはだ…俺様の勘違いじゃなければ、入社する数日前、街でミアと一緒のところを助けたあの美少女って、アルトだったってことだよな?」 と、...
恐ろしい…現在、ギルベルトは実に恐ろしい体験をしている。 ギルベルト in 某ホテルのデザートビュッフェ。
「なんだ。言ってくれよ~! どっちを優先しようか悩んで損したぜ!」 もう思い切りため息と本音しか出てこない。 まず安堵して、それから思いだした。
さて、約束はしたものの、これだけ特別なんだと説明してもなお、ギルベルトが自分を嫌うかもしれないとアーサーが思っている理由は気になる。 よほどすごい事なんだろうか……
さて…とりあえず籍を入れると言う話をして結婚が嫌だではなく離婚が嫌だという返答が返ってくるということは、どうやら自分といる事が嫌なわけではないという事は確定ということだ。
こうして無事邪魔者は追っ払ったところで、本番だ。 アーサーに関しては事情を聞きたいだけで、別に脅して拘束したいわけではないのだ。 まあ…手放してやれる気はしないので、事情が分かれば穏やかに優しく…しかし断固として説得するつもりではあるが……
可愛い可愛いアーサーが他の男と密室にいる… しかも相手は以前アーサーを菓子なんかで釣ろうとしやがった男だ。 エリザから住所を聞くと、ギルベルトは捕まって時間を取られたりしないよう理性を総動員して安全運転を心掛けながら、その場所へと急いだ。
どうしてよいのかわからない… ギルベルトは生まれて初めてそんな壁にぶち当たった。
悲報!!!…打ち合わせで30分ほど離席したら可愛い可愛い愛息子に先に帰られた…
こうしてとりあえず自分もソファに落ちついたところで問題解決の手掛かりをつかもうと、口を開く。
こうしてひやひやしながらバイルシュイット課長補佐邸からアーサーの私物を運び出すと、そのままタクシーに自宅へと向かってもらう。 バイルシュミット課長補佐の家は本当に立派な家だった。 こんな家をぽ~んとキャッシュで買ってしまうというのがすごいと茂部太郎は感心した。