よほどすごい事なんだろうか……
ギルベルトは気合いと根性でポーカーフェイスを貫きながら、次のアーサーの言葉を待った。
目の前でぎゅっと白くなるほど強く握り締めて震えているアーサーの手を取ると、
「良いから話せ。
緊張する必要なんざねえよ。
俺様はたぶん…アルトの身に危険が及ぶような事以外は、アルトが何をしてようとアルトのことは許せる自信があるぜ?」
と、その冷たくなった手を開いて握ってやる。
すると、
──…騙してた……
と、小さな小さな声が漏れた。
「俺様を?」
と、その言葉に聞き返すと、こくりと頷くアーサー。
ぽろりぽろりと零れる涙をハンカチで拭ってやりながら、ギルベルトは苦笑する。
「でも本当にそうだとしても全然平気そうじゃないから…責めようって気も起こらねえよ。
むしろ隠してる事でアルトがストレスで潰れそうで心配だぜ。
なに隠してたって怒らねえから、言って楽になっちまえよ」
と、その肩を抱き寄せて細い背をぽんぽんと宥めるように軽くたたいてやる。
嘘じゃない。
何を騙していたのかはわからないが、アーサーが胃を壊していた原因がそのストレスだとしたら、取り除いてやりたいと思いこそすれ、腹なんかたつ気がしない。
どんなことでも許そう…そんな覚悟でいるギルベルト。
しかしその後アーサーの口から出て来た言葉はそんなギルベルトの想定の範囲を遥かに超えていた。
いや、もう許す許さないという問題ではない。
──おれっ…アリアなんだ……
「はあ???」
おそらくその時のギルベルトは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたに違いない。
(…アリアって?旋律的な独唱曲?)
と、まず思い、それどういう意味だよ!と自分の脳内で自己突っ込みをする。
訳がわからない。意味がわからない。
意味を取りかねているギルベルトの前で、アーサーが泣きながら
「さいしょはっ…ぐうぜんでっ…あのぎるがっ…かちょうほさのぎるだって、わかんなくてっ…
でもっ…でも、わかったときには言えなくてっ…そのままやめればいいのかなって…っ…
まさか…きにして待っててくれるとかって…おもわなくって……」
と続けられた言葉で、意味はわかったものの、さらに驚いた。
「アルトがお姫さんだったのかぁ?!!!!」
思わず大きくなった声に、身をすくめるアーサー。
それにハッとして、ギルベルトは反射的にその黄色い頭を撫でた。
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