でもアーサーが自分が恋人だとばらされたくないということなら、そういう女避けにバカンスの間にしたい事がある。
そんな提案でちゃんと通じていると思った自分が馬鹿だった…。
という言葉に喜んだのもつかのま、続く
「ギルが相手なら、一日だけ仮の関係でも女性は喜んで付いてくるだろうし…」
で、真意が伝わってなさ過ぎて頭を抱えた。
「お~い…俺様の話聞いてたか?アルト。
俺様な、恋人がいるのに他の女にベタベタされるのがいやだって言わなかったか?」
そう言うと、アーサーは、あ、そう言えば!と、言った感じに、きょとんと眼を見開いた。
そこをなんとか思いだしてもらえたらしいと認識して、ギルベルトは続ける。
「ようはな、バカンスの間にアルトとわからないようにアルトとデートをしている写真とかを撮りたいわけだ。
で、こんなに可愛い恋人がいるからって言えれば、女避けになるだろ?」
な?と、わけがわからないとばかりにきょとんとしている顔を覗き込むと、
「えっと…どういうことだ?」
と、案の定な言葉が返ってくる。
心細げに揺れるグリーンアイ。
光色の長い睫毛がいつもよりもせわしなく上下する。
勉学や仕事に関しては実に優秀なだけでなく忍耐強くこなしていくのに、感情的な事に関しては本当に疎い。
プライベートになると途端に頼りなげな雰囲気になる大切な恋人の小さな頭を引き寄せると、ギルベルトはコツンと額を軽く彼の額にぶつけて言った。
「で、最初の話に戻るってわけだ」
「最初の?」
と、アーサーの方は少し眉を寄せて考え込む。
だが答えは出てこないようだ。
「なんだったっけ?」
と、降参とばかりに見あげてくる視線に、ギルベルトはにこりと微笑む。
「俺様が助けた美少女なお姫さんがアルトだったって話」
「…それが???」
「だ~か~ら、旅先で“お姫さん”な格好をしたアルトとのデート写真を撮ろうぜってことっ」
「えええええーーーー!!!!!」
別にアーサーのままの容姿も好きだし、もっと言えば、好きなのは容姿だけではないのだが、あの“お姫さん”は可愛すぎた。
本当に今思い出しても好みのど真ん中だ。
「無理っ!!無理だっ!!女装姿なんてバレたら、会社に居られなくなるっ!!!」
ぶんぶんと涙目で首を横に振るアーサーに、ギルベルトはこちらもこちらで必死に
「大丈夫っ!!俺様、お姫さんに会った2日後にアルトが入社してきても、同一人物だなんてぜんっぜんわかんなかったからっ!!!
なんでも奢るっ!!
絶対にありえねえけど、万が一会社の面々にバレたら責任取って養うから、専業主夫になってくれても良いし、別の仕事さがしても良いっ!!
つか…まあそうじゃなくても、家で俺様の帰り待つ生活してくれても俺様的には全然良いんだけどな」
と、最後は若干、自分の夢を盛り込んでみたりする。
そして、
──ミアだけ可愛い格好のお姫さんと出かけてるって、ちょっと嫉妬すんだけど……
と、最後は拗ねて見せたら、アーサーはため息をついた。
「あれは…一緒にデザートビュッフェに行っただけで……」
「俺様もお姫さんと行きたい。
別荘の近くにリゾートホテルいっぱいあるしな。
ビュッフェ巡りしても良いと思うぜ?」
と言いながら、あと一押しとばかりにギルベルトは大急ぎでスマホで検索。
趣向を凝らしたリゾート地のデザートビュッフェの情報をちらつかせる。
「…向こうに居る間だけだぞ?」
案の定、甘い物に目がない食いしん坊のアーサーは折れた。
「どうせならビュッフェ制覇しようなっ」
と、その答えは微妙にお茶を濁しながら、ギルベルトは勝利の笑みを浮かべる。
こうしてそれから2日後には車に着替えその他を積み込んで、ギルベルトは出来たての恋人と楽しい楽しいバカンスへと出かけることになったのであった。
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