とある白姫の誕生秘話──お姫さんと俺様4

バカンスに出かけることを決めてから出かけるまで中1日空いたのは何故かと言うと、ギルベルトのたっての希望で、選択の幅の多い都会で女装用の洋服を買うためである。


──だってな、これ逃したら早々にそんな機会ないだろうし、とびきりの格好をしたお姫さんとデートしてえじゃん!

と言われて、普通なら即却下したいところではあったのだが、デキる男が子どものようにはしゃいでいるのを見ると、なんだか可愛らしく思えてしまって、拒否できなかった。


もちろん、こちらで買うと言う事は知人に目撃される可能性もあるので試着は却下。

飽くまで“彼女にプレゼントをする服を選ぶ課長補佐”につきあうというスタンスで同行するということで、ぎりぎり手を打った。



こうして翌日、上機嫌のギルベルトに連れられてブティックに。

アーサーなんかだと1人でレディースのブティックに入るなんて事はとてもとても出来ないわけなのだが、ギルベルトは全く臆することなく店に入って行く。

店内の女性陣がざわりとざわめく。

なにしろギルベルトはカッコいい。

スーツ姿もカッコ良いが、ワインレッドのインナーにグレーのサマージャケット、そして細身の黒のパンツ姿という私服で、店内でかけていた薄く色のついたサングラスを外して胸ポケットに入れれば、店中の女性の視線を独り占めだ。

「ちょっと悪い。
相談に乗ってもらって良いか?」
と、当のギルベルトが店員の1人に視線を向けて放った言葉で、完全に固まっていた空気が動き出した。
声をかけられた店員はやはりぼ~っと見惚れていた1人だが、言われて慌てて駆け寄って来る。



そうして楽しげに服を選ぶのは良いが。

「なあ、アルト。
これとか可愛いと思わねえ?」
と、アーサーに声をかけてくるのはやめてほしい。

当たり前だが一応普通に男の格好をしてきているので、店員も店の客もよもやアーサーの服を選んでいるとは思わないだろうが、万が一にもバレたら羞恥で死ねる。

だから
「彼女いない歴=年齢の俺に聞かないで下さい」
と、ことさらに不機嫌にそう返した。


それに対してギルが
「アルトの交友関係は俺様が変な奴じゃないか確認してやるから、ちゃんと紹介しろよ?」
などと笑って言うから、店員が

「弟さんですか?」
などと微笑ましそうな笑顔でいう。
周りの女性陣の視線も同様な雰囲気だ。

ギルはそれにも
「ああ、そんなもんだ」
と、笑って答えると、服選びに戻って行った。



こうして何回着替えするんだ?と思うくらい大量の服を選ぶギルを所在なげに遠目に見ていると、

──あら、アーサー君、こんなところでどうしたの?

と、いきなり声がかかって、アーサーは思わず飛び上がった。


気づけばすぐそばに会社の美女トリオがいる。
どうやらショッピングの最中にレディースのブティックにいるアーサーが目に入って、中に入ってきたらしい。

冷やり…と、内心焦るが、そこはポーカーフェイスも慣れたもので、

「こんにちは、レディの皆さん。
御覧の通りです。
今日は課長補佐と外で食事なんですけど、その前に課長補佐が恋人の女性に贈られる服を買うと言うので、待ってるんです」
と、笑顔で答える。

そう、アーサーは笑顔。
だが、その言葉に女性陣の顔からは笑みが消えて、ざわりとざわめきが起こった。

そしてアーサーの視線の先を追って、その視線はギルベルトへ。

そして次に彼女達の視線がアーサーに戻った時には、その顔には口元は弧を描いているのに目は笑っていないという、どこか恐ろしげな笑顔が張り付いていた。



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