とある白姫の誕生秘話──お姫さんと俺様5

「ギルベルトさん、今年のバカンスは彼女さんと過ごすのかしら?」

ざわりざわりと3人で何か話し合ったあと、1人が代表としてといった感じで一歩前へと足を踏み出してきた。

美人なのに…いや、美人だからこそか…
迫力があって怖い。

これはギルベルトと恋人になったと公けにしないで正解だったとアーサーは内心ため息をついた。

そして心のうちの焦りは押し隠し、アーサーはいかにも何もわかってませんといった感じで
「そうみたいです」
と、他人事のように答える。


その言葉にあとの2人も身を乗り出して来た。

「ありえないわよねっ!!
ギルベルトさんに愛息子を放置で自分と一緒にいるように言う女なんてっ!!
あたしだったら絶対にアーサー君もって誘うのにっ!!!」

「…いえ、課長補佐がそう呼んでいるだけで、俺だって小さい子どもじゃないので…」
と、アーサーは苦笑するが、女性陣は引かない。


「えーー!!だってアーサー君だってギルベルトさんと一緒にバカンス過ごしたいでしょっ?!」

「…カップルの間に入るとか、さすがにいたたまれなさ過ぎて遠慮したいです。
それに…俺は俺で夏は親戚の家で従兄弟達と過ごす予定なので…」

と、アーサーはあらかじめギルベルトと打ち合わせしていたように、自分も自分で予定をいれていることを伝えると、

「みなさんみたいに素敵なレディは、やっぱりオシャレな場所で優雅にバカンスを過ごされるんですか?
俺は従兄弟達もみんな男で女性に縁遠いので、そういうのあまりわからないんですが…」

と、暗に相手の予定を聞く事で、話題を変えに走る。


「え、ええ、まあ。
今年は毎年女子会をしてる海辺のホテルがリニューアルオープンしたのもあって、3人でゆっくりしようと思ってるんだけど…」
と、答えが返ってきたのを幸いに、

「それは素晴らしい。
こんなに素敵なレディ達が寛いでいる空間を共有できる他の宿泊客が羨ましいです。
楽しんで来て下さいね」
と、無邪気さを前面に押し出した笑みでリップサービス。

次いで、
「じゃあ、今日はレジャーの時の洋服を選ぶためのショッピング中ですか?」
と、どんどん話を反らしていけば、完全にこちら側のバカンスから話題が移って、ホッとした。


こうしてしばらく女性陣の服のセンスをほめちぎりながらも、バカンス中にどんな服装のチョイスをするのかなどを聞いている間に、やっとギルベルトの買い物が終わったらしい。

大量の服を手にした店員とキャッシャーに向かうギルベルトの姿に、アーサーは

「じゃ、そろそろ買い物終わってご飯に行けるみたいなんで、失礼しますっ!
良いバカンスをっ!!」
と、半ば強引に話を切りあげて、キャッシャーの方へと走り寄って行った。


女性陣もほめちぎられたためか機嫌良くそれを送り出しつつ

「良ければ来年はアーサー君も一緒に行きましょうっ!」
という自分達の言葉に

「お誘いとっても嬉しいですっ!
ぜひ課長補佐を説得して下さいっ!」
と、楽しげな子犬のような表情で大きく手を振るアーサーの無邪気な様子に、にこやかに自身達の買い物へと戻って行った。


もちろん…それは本当に誘われたら、もうあとはギルベルトにお任せだと言う前提でのアーサーの言葉だと言う事はいうまでもない。



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