翌日…荷物をトランクに詰め込んだ車で別荘に出発。
その中にかなりの量の洋服が昨日買いこんだ時のまま積まれている。
ちらりと後ろに呆れた目を向けながら、隣で運転しているギルベルトにそう声をかけると、
「ん~?ほぼ毎日?」
と、楽しそうなトーンで返事が返ってくる。
毎日…つまり、1カ月近くか?
と、それ自体はあれからもミアことフェリシアーノと何回か女装で出かけたりもしているので不本意ながら抵抗はなくなっているのだが、気になることはある…
「…女性が良いなら……」
ギルはモテるのだから男の自分より寄ってくる綺麗な女性を選んだほうが?と続けようとした言葉は、その一言で察せられていたようだ。
す~っと静かに道の端に寄せられて停まる車。
そしてこちらに向けられる綺麗な紅い目。
それは怒った色も焦ったような色も浮かべて居ない。
ただ静かに愛情を持ってアーサーに向けられている。
「俺様言っただろ?
俺様の人生の中で2大惚れこんだ相手がアルトとお姫さんだって。
どちらかを選ばなきゃって時にめちゃ悩んで落ち込んだんだって。
その片方、アルトは地元に居る時も堪能できるけどな、お姫さんは地元で居る時はNGなんだろ?
だったら、地元に居ない時はお姫さんの方を堪能してえじゃん。
女が良いわけじゃない。
お姫さんだから意味があるわけだし?
アルトもお姫さんも両方こよなく愛してるぜ?」
顔が近づいて来て、ちゅっと軽く唇にキスが落とされる。
そして、ギルベルトはまた正面を向いて、車を発進させた。
(……ったく!この人はぁ~~~!!!!!)
そうして1人真っ赤な顔で動揺するアーサー。
本当に…彼女いない歴=年齢なんて絶対に嘘だ。
そういうのは自分のような人間のことを言うのだ。
彼女いない歴=年齢の人間と言うのは、こんな恥ずかしい事を当たり前の顔をしてさらりと口に出来る人間では絶対にないはずだ。
そう思ってちらりと横目で見ると、上機嫌で鼻歌交じりで運転するギルベルト。
優れたコミュ力は彼女いない歴など超えてしまうのだろうか……
そんなアーサーの疑問や戸惑いも一緒に乗せて、車は一路北部のリゾート地へと向かうのであった。
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