そうして12時を少し回った頃に辿りついた大きめのサービスエリア。
大きな駐車場はほぼ満員で、その中で空きの表示のある列に進んで車を止めた。
ガラスを多く取り入れた壁から中の照明がキラキラしているのが見えて、それだけでアーサーは浮かれてしまった。
こんな風に車で遠出をしたことがないので、サービスエリアなんて入った事がない。
「バカンス旅行の最初の食事だから、時間があれば高速を一度降りてちゃんとしたレストランで飯にしてやりたかったんだけど、ちょい時間が押してるからこんなところで飯になって悪いな」
かりかりと頭を掻きながらギルベルトは口を開いたが、
「ここで食事なのかっ?!」
と、眼を輝かせて振り返るアーサーの言葉に、小さく吹きだす。
「そっか。アルト、車で個人旅行初めてだって言ってたもんな。
これも楽しくも珍しい経験か」
と、そこに気づくとホッとしたように
「じゃ、行こうぜ!
どうせならショップも見たいだろ?」
と、ポンポンとアーサーの肩を叩いてそううながした。
「すごいなっ!色々あるっ!!」
駐車位置から一番近い入口から入ればそこはフードコートだった。
ギルベルトとしては一応恋人とのデートみたいなものなのだから少しでもちゃんとしたところで…と、こちらから見ると奥にあるレストランで食事をするつもりだったのだが、アーサーがあまりに嬉しそうに飲食スペースの向こうに立ち並ぶ店に釘づけになっているので、その提案を飲み込んで、
「とりあえずな、座席を確保してから買いに行こうな」
と、人でにぎわうスペースをざっと見渡して、たまたま空いていた窓際の座席をキープした。
そうして先にアーサーに食事を買いに行かせつつ、楽しげに店を回って悩むアーサーを眺めて楽しむ。
そう言えば家族で出かける機会がないような状況だと、こういう場所も来る機会がなかったんだろうな…と、今更ながら気づいて、本当に道路が混んでいてたまたまだが、サービスエリアで食事を取ることになって良かったなとしみじみ思った。
自分自身に関して言うなら、食事なんてよほど不味かったり不衛生だったりしない限りはどこでも良い。
恋人が喜ぶ場所なら、そこが最高のレストランだ。
こうして食事を終えたあとも、少し売店を見て回る。
アーサーは何もかもが珍しいといった風におおきなグリーンアイをキラキラさせて、楽しそうに笑みを浮かべていて、恋人様がそんな風に幸せそうなので、ギルベルトも幸せな気分になった。
本当は肩に手を回したり抱きしめたりしたいところなのだが、今それをしたら絶対に機嫌を損ねるだろうから、そうやってイチャイチャとするのは、現地についてから。
“お姫さん”になってからだ…と、ギルベルトは今は我慢する事にする。
こうしてしばらく色々見て回って、最後にアイスを買ってやって、それを手に車に戻ると、ごきげんで苺のアイスを頬張る恋人様の可愛さを少しだけ堪能した後、ギルベルトは再度、別荘へ向けて車を走らせた。
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