kmt 政略
こうして錆兎も炭治郎も継がないと宣言した会社の方はと言うと、なんと最終的に義勇が継ぐことになった。 …と言っても…いまだ完全には落ち着かない状態の宇髄の会社をその会社の役員になって手伝っている錆兎が継げないため、その配偶者の義勇に名義だけ…と誰もが思っている。
「とりあえず…報告だな」 と、最初に義母と義勇、そして桜が隣の部屋に着替えに行ったタイミングで慎一が口を開いた。
そうしてリビングに落ち着いて歓談中。 それでも”おじたん”から離れずに彼の膝の上に当たり前に座る幼女に義母がぷくりと頬を膨らませて 「慎一…ずるいっ! 慎一より私の方がず~っとず~っとずぅぅ~っと桜ちゃんが来るのを楽しみにしてたのにっ!」 と長男に恨み言を投げつける。
初めての女の子の親族に賑わう義勇の兄達に案内されて初めて足を踏み入れた冨岡家は、実は義勇も初めて入ることになる。 そう、とどのつまりは彼らの親夫婦は正式に離婚。 母親は息子3人と共に新居に引っ越していたのだった。 新しい家は義勇の記憶にある生まれ育った実家よりは、その後に保護して...
──おじたん、おっきいねぇ! 義勇の長兄慎一に向かって、ん!と当たり前に手を伸ばす幼女。
「えっ?!そこは引き取ろうよっ!炭治郎!!」 結論から言うと副社長は自分が社長になりたかったわけではなく、純粋に伯父として妹の子である甥の炭治郎の身を心配し過ぎて会社に執着していたらしい。 なので炭治郎がこのままパン屋として身を立てていく当てがあるのなら、別に会社を継がなくてもい...
「お前、このタイミングでそれ着てきたのかぁっ」 今日は炭治郎とその兄の錆兎が会社に執着があるならいっそのこと執着のある本人が継げばいいんじゃないかと黒幕である副社長と話に行ったということで、善逸は朝から落ち着かなかった。
「「どうだった?!!」」 錆兎と炭治郎が車で戻ると母屋の玄関先で互いのパートナーが待っていて、それぞれに心配そうに走り寄ってきた。
職業選択の自由がほぼなかった炭治郎なので、恋人に引きずられて目新しいものに惹かれているだけかもしれない…と、そんな判断で副社長は3年間、炭治郎にパン屋を手伝うことを提案した。 パン屋自体は今は宇髄コーポレーションの所有のホテル内で営業をしている人気のパン屋ということで、経済的には...
──炭治郎、お前は私のことを誤解している… 善は急げとばかりに錆兎にも同行してもらって炭治郎は翌日伯父に時間を取ってもらって話をしてみた。
正直…自分だったらこんな方法は思いつかなかったと思う。 飽くまで自分の側は思いやりのある常識人という立場を崩さずにとことん報復…。 これが企業の中枢で揉まれてきた人間と言うことか…。
──もうそろそろ制裁第二段だな。 淡々と言う錆兎。
2ヶ月後…公正証書を交わして子どもを引き取って離婚。 炭治郎は現在子どもと一緒に鱗滝家の善逸が住んでいる離れに転がり込んでいた。
それからわずか2日間で兄は計画を建て、必要なものを全てそろえてくれたようである。 離婚とは別に炭治郎はこれからまだ副社長である伯父と対峙していかなければならないし、それが終わって善逸と暮らすようになれば、当然善逸に負担をかけないようにしたい。
冷静な兄にしてはそれとわかるほど硬い声。 炭治郎はそれにも驚いたのだが、伝えられた事実にはもっと驚いた。 なんと嫁が善逸と連絡を取っていたらしい。
炭治郎がそれに気づいたのは結婚して1年半ほど過ぎた頃。 最初に──あ~…これは…決定だなぁ……と思った理由は大学の長期休みの間だけでもと会社に引っ張り出されて色々教わっていた夏休み。 支社に研修に行った時に帰宅が予定より2日ほど早まって帰宅したら、嫁が家にいなかった。 ダイニング...
──兄さん、突然なんだが、俺、離婚するよ といきなりかかってきた電話。
錆兎と義勇の娘は2歳の可愛い盛りになったが、鱗滝家はその他にも二人の赤ん坊がいてとても賑やかである。 正確には錆兎達の第二子の息子と宇髄の第一子の息子だ。
この世に天使というものが本当に存在するとしたら、それは今目の前にいる愛娘に違いない…と、錆兎は思う。
え?なに?ここはお城?? 一体どのくらい走っただろうか。 車は少し郊外にあるとてつもなく立派な石門の前にたどり着く。