──おじたん、おっきいねぇ!
義勇の長兄慎一に向かって、ん!と当たり前に手を伸ばす幼女。
その日は色々身辺が落ち着いたからと一家総出で初めての里帰りとあいなったわけなのだが、生後半年で平均を超えて9キロになる息子は母である義勇に抱かせるのは少しばかり心もとないので錆兎が抱いていて、いつもの自分の定位置を取られて義勇と手を繋いで歩いていることにお嬢様は少しばかり不満だったようだ。
父に負けず劣らぬ上背の伯父を見て、当たり前に抱っこをせがむ。
強面で女性や子どもには怖がられることの多い自分を前に全く物怖じすることなく寄ってくる幼女に慎一は少し驚いた顔をしたが、子どもが嫌いなわけでは決してない根っからの長男な彼はすぐ笑って手を伸ばすと、そのまま抱き上げた姪っ子を肩車してやった。
きゃああぁぁ!!
と期待以上の高さになった喜びに頭の後ろからあがる高い歓声。
その満面の笑みは肩車をしている”おじたん“には残念ながら見えないし、表情に出ないようでいて珍しく微妙に口元が緩んでいる”おじたん“のわかりにくいが喜んでいるらしい顔も姪っ子には見えないのが残念だが、自分の横で娘がとりあえず実家の門番ともいえる頭領の長兄になんとか気に入ってもらえたような様子にホッとしている嫁を見て、錆兎もホッとする。
兄が自宅内の駐車場から館に末っ子家族を連れて戻ってくると、他の兄達がわらわらと寄って来て、”おじたん“の肩車にご機嫌の愛らしい姪っ子に
「うおぉぉ~!!姪だっ!女の子だっ!
このムサイ一族にようやく可愛い女の子か~!!」
「ほら、抱っこしてあげるからおいでっ!!」
と歓声をあげて手を伸ばすが、娘…桜はあろうことか”おじたん“の髪を容赦なくぎゅっと握り締めて
「やぁ~っ!おじたんがいいのっ!おじたんがしゅきっ!!」
と、ぷくぅと頬を膨らませる。
「桜っ!こらっ!!髪を掴んだらダメだぞっ!!
”おじたん“も痛いからっ!!
髪抜けるからっ!!」
と、それに焦る錆兎だが、慎一はそれに
「ああ、桜の力でつかむくらい大丈夫だから気にするな」
と穏やかな様子で言ったあと、弟たちには
──…だそうだ。
と、ふふんと鼻で笑って見せた。
それに
──…じゃそうじゃ…
と、何故か桜も得意げにそれを真似して見せて、弟二人は、なんでこんな怖そうなおっさん~?と兄弟一いかつい長兄にべったりな姪っ子を不思議に思いながらも悔しがる。
そして二人はおじたんLoveの長女を諦めて錆兎の腕に抱っこされているもう一人を覗き込み
──…こっちは…
──すまんな。男だ。
──…だよなぁ…
と、桜とは逆に色合いは義勇だが容姿はしっかり男顔の赤ん坊を見てがっくりと肩を落とした。
こうして邸内に入ってリビングへ。
こちらにももちろん女児熱望の家族が待っていた。
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