政略結婚で始まる愛の話_82_幸せな家庭

「「どうだった?!!」」

錆兎と炭治郎が車で戻ると母屋の玄関先で互いのパートナーが待っていて、それぞれに心配そうに走り寄ってきた。

錆兎の方は良い報告をしてやれる。
だが炭治郎の方はまだ色々難しいし、相談し考えなければならないこともある。

なので錆兎はまず
「実家の方から危険な行動をとられることはとりあえずなくなったが、皆で相談した方がいいこともある。
だから悪いが二人とも全員リビングに呼んでお茶の用意もしてくれないか?」
と二人に頼んで二人がわかった!と走っていくと、隣の炭治郎に

「まずは楽な格好に着替えて全員で情報を共有して話し合うぞ」
と、色々言い出さない前にそう指示をした。


今日は色々あるであろうと宇髄もその嫁3人も善逸も仕事を休みにして家にいる。
なのでリビングの隣の部屋で嫁のうち宇髄の秘書役も兼ねている雛鶴以外の二人、まきをと須磨が錆兎達の二人の子どもと自身の子、そして炭治郎の子をすでに見ていてくれていた。

そうして錆兎が着替えのため自室に戻ると義勇がいそいそと着替えを出している。
何故かキツネが2匹舞い踊っているトレーナー…。
ネットで義勇が見つけて気に入ってブルーとピンクの色違いで購入した逸品だ。

なんというか…義勇はたまに個性的なチョイスに走るので悩んでしまう。
まあ…外に着ていけとまでは言われないし、自宅で着るだけなので良いと言えば良いのだが、以前に夕食時にそれを着ていた時には宇髄に爆笑されて、宇髄の嫁二人と善逸には生暖かい目で微笑まれた。

唯一須磨だけが
──うわぁ!可愛いですねっ!義勇ちゃんキツネ好きですもんねっ!私も天元様とおそろいの服着てみたいですぅ!
と、心の底から好意的な反応をくれたのは記憶に新しい。


…これを着るのか?
と一瞬思うが、嫁がにこにこと嬉しそうに差し出すものを拒否するのは難しい。
おそらく義勇は彼の独特な感性でではあるが、今回の話し合いの席にまとうのはこの服がベストだと色々熟考した上で選んでくれたのだ。

錆兎は内心ついているため息を表では飲み込んで、
「ありがとうな、義勇」
と笑顔でそれを受け取ると、嫁はやはり笑顔で錆兎の後ろに回って背広の上着を脱がせて丁寧にハンガーにかけてくれる。


夫婦生活の円満の秘訣は相手の善意や思いやりの気持ちは全て受け取った上で、耐えられないレベルではない自分のちょっとした不満は極力脳内だけで。
それでもやめて欲しいことはやめて欲しいという言い方ではなく、こうして欲しいとプラス方向の希望として伝える。

そして…なにより重要なことは、相手を不快にさせないために自分が配慮することが全くストレスにならないレベルで愛せる相手と結婚することだ。


ピンク色のキツネのトレーナーと色違いのものをまとった義勇は、着替え終わった錆兎が振り向くと、キツネの踊りの真似をしているのだろう。
猫の手のように手をあげながらくるりとその場で回って
「錆兎が帰ってきて嬉しい…コンっ」
と言って笑う。

ああ、自分の緊張を察してくれてこの服のチョイスなのか…と思うと、その思いやりがひたすら嬉しい。
義勇は世間知らずなせいか少しずれているところも多々あるが、いつでも錆兎のことを思いやろうとして行動してくれる世界一の伴侶だと錆兎は再認識した。

家族というものに縁が薄かった自分に家庭の温かさを教えてくれたのは間違いなく義勇で、そのおかげで錆兎は日々幸せである。

家族というものは本当に素晴らしい。
自分の娘も息子もきっとそう感じつつ育っていくのだろう。

いったんは自分のテリトリーから遠ざけた方がいいと思っていた炭治郎の息子だが、そうなると彼はどんな人生を歩むことになるのだろうか…。

自分が家庭に幸せを感じれば感じるほど、そのあたりを悩んでしまう錆兎であった。


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2 件のコメント :

  1. 🦊の真似をして踊る義勇ちゃん(二児の母)←Σ(゚Д゚)が只管可愛い💖

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    1. この義ちゃんは特に箱入りさんでさらに若いので無邪気なのです😊

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