影は常にお前と共に_27

最後の甘みの食器は翌朝片付けに来ると言っていたからそのままにして、義勇の手をとって隣の部屋のふすまを開けた。 行灯だけの薄暗い部屋に敷かれた2組の布団。 余裕なく荷物を漁って真菰に持たされた小瓶を取り出す。

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錆兎が待っていても、義勇は飽くまでちまちまと美味しそうに甘みを頬張っている。 それでもいずれはなくなるもので、最後の一切れをごくんと飲み込んで、食後の煎茶を飲み干すと、義勇は改めて隣の錆兎の方を向き直った。

影は常にお前と共に_25

料理は色々な意味で素晴らしかった。 まず最初に思ったのは …素晴らしく綺麗で…素晴らしく美味く…そして素晴らしく少ない。

影は常にお前と共に_24

町中はそうやって2人並んでゆっくり歩いたが、なにぶん取れる休みには限りがある。 だから人の目のない街道などでは、錆兎は義勇を抱えて走った。

影は常にお前と共に_23

出発はその3日後であった。 何故それだけ時間を置いたかと言えば…女性用の着物の着付けの仕方、化粧法、髪の結い方などを錆兎が蝶屋敷に通ってマスターしていたからにほかならない。

影は常にお前と共に_22

こうしてお館様の午前を辞すると、拝謁するまでは貼り付けたようだった胡蝶の笑顔が、実に楽しそうなそれに変わった。

影は常にお前と共に_17

柱合会議後の産屋敷邸の一室。 そこには【柱】全員が悠々囲めるくらいの、大きな円卓がある。 普段、時間に寄ってはそこで食事が出たりするのだが、今日は午後からということで、目の前に並ぶのは菓子とお茶。

影は常にお前と共に_16

言葉が足りなくて誤解されやすいのが冨岡義勇だとしたら、言葉選びで誤解されるのが不死川実弥だ。

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宇髄が言った通り、部屋を出るまで2分。 石庭についてきちんと並ぶまで3分。 5分前には全員膝をついてお館様をお待ちしている。 さすが【柱】。 見事なまでの切り替えの速さだ。 こうして全員が揃って5分後に、左右に瓜二つの娘たちを従えて、お館様こと産屋敷耀哉が奥から姿を現した。

影は常にお前と共に_14

あまりに幸せな当たり前の日常に、まるで夢の中にいるように心がふわふわする。 柱合会議を行う産屋敷の館の門を通り過ぎてもなお、全く現実感が湧いてこない。 しかし、そんな義勇の幸せにはすぐ影がさすことになる。

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朝…そろそろ町に人がちらほらと姿を現す頃…錆兎は義勇の手をしっかり握って町外れの屋敷を目指していた。 【影柱】となった5年前。 館を用意してもらえると聞いて、多少不便でも良い。特に立派でなくても良い。 ただ、大勢人が住める大きな屋敷が欲しいと希望して用意してもらった家だ。 理由は...