そんなこんなで鴉で連絡をいれたあと、産屋敷邸を訪れた4人。
だが、通されたいつもの待合室には、何故か先客がいる。
と、ふわりと走り寄ってくる様は相変わらず可憐な胡蝶しのぶ。
だが、不死川は面倒くせえと視線をそらし、錆兎はさすがにこの状況でこんな要件でというのはいかがなものだろう…と、空気を読んで
「胡蝶こそ、1人でどうしたんだ?悲鳴嶼さんは一緒じゃないのか?」
と、まずそこを聞いてみる。
一応昼間なので大事はないとは思うものの、万が一というものがあるだろう。
今、女である胡蝶が1人で出歩くのはよろしくない。
と、心配をしているのは自分達の諸々とは別に事実だ。
小柄で華奢で目が大きくて広い額。
そして本人は隠しているようだがやや勝ち気な性格はどことなく妹っぽくて、異性としてではないものの、亡くなったとは言え妹のいる兄だった錆兎はどうしても胡蝶のことは気になってしまう。
そんな錆兎の気持ちを末っ子特有の頭の回転と察しの良さで感じているのだろうか、胡蝶も他よりもずいぶんと打ち解けた様子で、
「錆兎さんは心配症ですね。
そんな風に過保護にするから、冨岡さんがこんな天然ドジっ子になってしまうんですよっ」
と、ぴょん、と、一歩近寄ってきて、笑顔で見上げてきた。
「義勇についてのコメントは控えるが…胡蝶に関しては過保護じゃないだろ。
昼間とは言え何があるかわからん。
それこそ鬼ではない優秀な人間をなんらかの方法で使っている可能性もあるのだから、お前は今は1人で出歩かない方が良い」
と、錆兎がそれに眉を寄せると、
「誰かにそんな風に心配されるの、久々です」
と、楽しそうに笑う。
「そんな、心配性なお兄様には安心していただかないとですね。
大丈夫。実はさきほど悲鳴嶼さんについてきていただいて薬に必要なものを買いに出ていたんですが、次の任務のことで本部から悲鳴嶼さんに直接注意があるとかで…お話が終わるまでここで待っているんです」
「そうか、それなら良かった」
ホッと安堵の息をつく錆兎。
しかしそこで話ははじめに戻る。
「それで?皆さんは4人揃ってどうなさったんです?」
こくんと可愛らしく小首をかしげながら聞いてくる胡蝶に、錆兎も不死川同様、きまずげに視線をそらしたが、そこは空気を全く読む気がない義勇が
「…錆兎と旅行に行くんだ」
と、色々を思い切りはしょって告げて、胡蝶のおおいに混乱させた。
「はあ???
何をおっしゃっているのか、よくわからないのですけど……」
と、笑顔で固まる胡蝶に、今度は、空気を読む気のない男パート2の煉獄が、今回の諸々を話して聞かせる。
…あ…言っちまった……
と、青くなる不死川と錆兎。
混乱させるだけさせて、非常に嫌なタイミングでお館様に呼ばれて事情を話しに部屋を後にしてしまう煉獄。
残される気苦労長男組と義勇。
「…あ、あのな?」
と、固まる胡蝶の顔の前で手を振りながら、フォローを入れようとする錆兎が口を開く前に、胡蝶は笑顔のままピキピキとこめかみの血管を浮き立たさせた。
「何故私達が今出動を控えさせられているか、天然ドジっ子の冨岡さんは全く聞いていらっしゃらなかったようで……」
私もお館様のところに行って進言します!と、断固として言う胡蝶。
そんな胡蝶の様子に錆兎は助けを求めるように不死川に視線を送るが、──俺を巻き込むな!と返す不死川の視線が言っている。
こうしてたら~りと錆兎の額に冷や汗が流れた時、神の救いか、全員午前に来るようにと、お館様からの呼び出しがあって、残り4人揃って待合室を出た。
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