「…なんでこの格好なんだ?……」
濃い紺色の地に白の花の模様が散った総柄小紋。
それに体型を隠すためにやや大きめの薄紫の羽織をはおって、目をぱちくりする冨岡義勇。
実は自分の格好には頓着がないらしい。
…表情筋…すっかり普通の人並みかそれ以上に仕事するようになったのですね…と、そんな義勇を見て感心する胡蝶しのぶ。
今までならもう少しむすりと愛想のよくない表情で、今回のような時でも、ああ不愉快なんだなと認識されていたことだろう。
「目立たないためですよ?当たり前じゃないですか。
大丈夫、お似合いですよ、冨岡さん」
義勇の言葉に答えてやりながらもそんなことを思うしのぶだが、当の義勇は答えてやったしのぶではなく、その隣できづかわしげに自分を見ていた錆兎に
「…お似合い…か?」
と視線を向けて聞いた。
何故?ときいてきたくせに、それに対するしのぶの返答には反応する気がないらしい。
それに呆れ混じりの…しかし諦めのため息をつきながら、しのぶは
「そういうことで。女性ものの着物の着付けは錆兎さんに教えておきますね。
冨岡さん、どうせ出来ないでしょうから。天然ドジっ子の不器用さんですし」
と、とにかくこれで全て終了とばかりに、床に散乱した数々の着物を片付け始めた。
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