影は常にお前と共に_32

確認するまでもなく宍色の髪の赤子が男で、黒髪が女。

──鱗滝さんの左近次にちなんで、男なら右近と名付けたいと思っていたのだが、どうだ?

と、心の底から嬉しそうな笑みを浮かべて言う錆兎に、義勇が異論などあるはずもない。
それが尊敬すべき師匠にちなんだ名なのだから、なおさらだ。

女の方は二人して悩んでいたら姉弟子の真菰が

──夜桜が綺麗に舞う夜に生まれたしね、桜とかどう?可愛くない?
と言う。

そんなわけで、”影”という仕事についた時点で自身の子どもを持つことは諦めたからと、嬉しそうに赤ん坊の世話をしてくれる彼女の勧めにしたがって、女の赤子は桜と名付けられた。

義勇の体調が少し戻ったら赤子を鱗滝さんに見せに行こう…などと、そんな事を話している自分たちは、まるで普通の夫婦のようだ…と、思う。

右近は容姿だけではなく性格まで錆兎似なのだろうか…
とにかく泣かない。

腹を空かしてぴえぇ…とか細く泣く妹が先に満足するまで乳を吸うのを、じっと辛抱強く待っている。


一度しか孕まない…という話の通りに、子宮の方は子を生んだらどうしてか消えたらしく、後産とよばれる出産後の痛みもなく、そちらは全くの元通りになったが、子を育てるためだろうか…膨らみもしない胸からはちゃんと母乳が出るのが不思議と言えば不思議である。

ともあれ、食えずに落ちた体力と母乳以外は本当に元に戻ったので、鬼舞辻の企み自体が無くなったわけではなく、女の柱が居る以上まだまだ心配は尽きないが、義勇に関してはこれ以上何かはなさそうで、錆兎も安堵した。


子が産まれた事は同門の弟子ということで真菰に教えられたのだろう。

生んで3日ばかりして、炭治郎が見舞いに来た。

「赤子の世話なら慣れているので、俺に任せて下さい!
お二人が任務の時には通います!
俺は長男ですからっ!!」
と、張り切る図は、まるで年の離れた兄弟ができた子どものようで微笑ましい。

「そうだね。あたしもいるけど双子だから…時間がある時は世話してあげて。
うちの兄さん達はまだまだ慣れないから」
と、真菰もニコニコと言う。

炭治郎も今は煉獄さんのところの継子だけど、それ以前に鱗滝さんの弟子で家族だからね!と、そんな言葉がどこか温かい。

授乳を終えて体力が落ちきっている義勇を真菰が横たわらせている横で、錆兎と炭治郎が並んで双子のおむつを替えている図は、本当に新しい命を向かえた家族の図そのものだ。

「お館様や柱の皆さんに顔見せする時には俺も同行しましょうか?」
と、すっかり身内の顔で言う炭治郎に、
「ん~、その時はあたしが片方抱いていくから大丈夫だよ」
と言う真菰。

その答えに
「そうですか…」
と、しょんと肩を落とす炭治郎だが、それに錆兎が

「いや、行ってくれるなら、もう片方を抱いていってやってくれ」
と言う。

「え?錆兎は良いのか?」

「ああ。一応産まれた状況も状況だし立場的に顔見せはあまり先送りできないが、義勇がひどく身体が弱っているからな。
俺は義勇に何かあった時に支えてやらねばならん。
赤子と両方は双方危ないだろう」
と言う錆兎の答えに炭治郎も納得。

「本当に、2人は心から好きあっているんだな」
としみじみと言って微笑んだ。


──完──










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