kmt 少女で人生やり直し中
すっかり忘れていた…と言えばしのぶが激怒しそうだが、色々が目まぐるしく過ぎていく中、義勇は”胡蝶カナエが上弦の弐に遭遇して死ぬ”ということを失念していた。 そして前世では経験したそれが、今回は隊士としては引退を余儀なくされるほどの負傷ではあったものの命は助かるという形になって、義...
…姉さん…姉さん、死なないで… カナエを抱えて走る不死川の横をそう言って泣きながら走るしのぶ。
カナエっ!!! 3人が現場に着いたのは、まさに、冷たい氷の蔓のようなものが倒れている胡蝶カナエとそれをかばうように寄り添うしのぶに向かって伸びてきた時だった。
花屋敷には親を鬼に殺されたり、あるいは親に虐待されたりと、家族の元で暮らせなくなった少女たちが多数暮らしている。 それこそ不死川の妹たちくらいの幼い少女がほとんどで、そんな少女たちの面倒をみてやっていると妹たちを思い出して温かい気持ちになる。 だから不死川はこの屋敷の手伝いが好き...
それは最初の柱合会議が終わった夜のことだった。 情緒が多少不安定だったとしても柱ともなれば任務に就かないわけにはいかない。 そういうことで不死川はその日も軽めの任務に就いて、深夜を回る頃には新たにお館様から拝領した風柱屋敷に戻っていた。
水柱屋敷はいつも賑やかで温かい。 水柱である少年が姉妹弟子を継子として3人一緒に住んでいるからというのもあるが、館の主である少年柱の人柄の良さに惹かれて多くの人間が出入りするからというのもあると思う。
不死川が下弦を倒したと聞いたのは、煉獄が柱になった2か月後。 錆兎と義勇、それに真菰が3人揃って休暇を取って、狭霧山に戻っていた時だった。
その日は久々に錆兎との合同任務だった。 初めて一緒の任務に就いた時にはあちらは柱でこちらは隊士になりたての癸で、立場も任務を見守るベテランと見守られる新人だったわけだが、今は違う。
どこか気が重くても足はしっかりと前に進んでいて、すぐにたどり着く炎柱屋敷。 ──ごめん下さい。 と、門をくぐると、もう一度、 ──お邪魔します… と声をかけて、錆兎は鍵のかかっていない玄関から家の中に入った。
その日の水柱屋敷はかなりにぎやかだった。 煉獄が炎柱に就いた祝いの席を設けるということがさりげなく広まったらしい。 日中なので遠くの任務に就いている場合以外は夜までは時間がある。 まず主賓の煉獄とその弟の千寿郎はもちろんのこと、他の柱達も祝いを手に続々と顔を出しに来た。
先日…煉獄がコツコツと地道に50体の鬼を斬って炎柱になった。 彼が隊士になりたての頃に任務見守りに付いて早2年強。
自分の勝手な行動で死ぬのは自分だけではない。 他も危険に巻き込むし、下手をすれば隊を全滅させることだってある。 それは今回の任務で不死川が実際に体験して思い知ったことだ。 だから任務が終わったあと、まず錆兎に謝罪して、お館様宛に謝罪をしたためたいが自分は字が書けないので誰か代筆者...
──…ということで、一件落着だなっ!俺は真菰を手伝ってくるからこっちは宇髄頼むっ! 下弦の首が落ちて砂となって消えるのを確認すると、錆兎はまた白い羽織を翻しながらあっという間に走り去っていった。 それを呆然と見送る義勇班。 本当に呆然…だ。
──水の呼吸 拾壱の型…凪 義勇の構えた刀の間合いに入った鬼の攻撃がことごとく消えていく。 錆兎の事は強いと認識していた村田だったが、義勇がここまですごいとは思っていなかった。
そういうことで進むしかないということは決まったわけなのだが、前方からは何かとても嫌な圧がある。 特に気配に敏いというわけでもない村田ですらどこか身震いしてしまうような恐ろしい空気が……
──炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり!!! 煉獄を中心に渦巻く炎が彼を囲む鬼を一掃する。
──館内は広いし敵も多いから班に分かれて行動しようと思う。 全員が揃ったところで水柱はそう言った。
「確かに。 今日は任務で来たんだし、開始時間前とは言え無駄口は控えるべきだな。 すまなかったな、不死川」 ひょいっと顔に付けた面を上にずらす少年。 すると口元から右頬にかけて大きな傷跡があるが、それでも端正な顔がのぞく。 そんな風に面を取るとその容姿の見栄えの良さ品の良さからよけ...
──村田っ、久しいなっ! 急にふわりと圧を感じた。 別にそれは殺気とかそういう類のものではなく、単に強烈な存在感というものだったが、不死川は一瞬あわてて刀に伸ばしかけ、しかし寸でで堪えて、そんな自分の過剰な反応を内心恥じる。
「今日の任務は桃太郎と鬼退治らしいぜ」 「俺たち、運が良かったな」 集合場所にはだいぶ早めについたのだが、もうほとんど集まっていて、目の前で何人かの参加者がにこやかに話をしている。