kmt 少女で人生やり直し中

少女で人生やり直し中_31_暴走

──炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり！！！

煉獄を中心に渦巻く炎が彼を囲む鬼を一掃する。

その技の見事さはさすが炎の呼吸の名家、代々炎柱を出している煉獄家の跡取りだ、と、村田も不死川も感心しきって言ったのだが、彼から返ってきた言葉は

「うむ、ありがとう！

だが、このあたりを教わる前に父が鬼殺隊も俺の指南もやめてしまったので、家に伝わる書物3冊で学んだものだから、正しく出来ているのかは微妙にわからん！」

「へ？！！

書物でって…座学じゃあるまいし、師範にもつかずにできるようになるものなのっ？！！」

驚く一同を代表して村田がそのあたりを聞くと、煉獄はやはり笑顔。

「俺は煉獄家の跡取りで弟の導き手だからなっ！

それに、無理でもなんでも鬼を斬り、鬼殺隊で精進を続けて最高位まで上り詰めれば、あるいは父も元の父に戻ってくれるかもしれないしなっ！

心の炎を燃やし続けろ！…と、幼い頃から父に言われたことを実践し続けている」

その話に実は情に厚い不死川が目を潤ませているのを村田はそっと見ないふりをした。

そう、せっかく見ないふりをしたのに、あくまで空気を読まない義勇が

──不死川も父親が恋しくでもなったのか？

と、空気を読まない発言をして、

──ねえよっ！！うちの親父はクソ野郎だったからなァ！！！

と、キレられる。

女に暴力を振るうのはなしだ…と、そこは義勇が男だった前世と違って鉄拳が飛んでくることはないが、女になってもさすが義勇というところか…。

不死川が多少なりとも優しくしようと思っても、ピンポイントで怒りのスイッチを連打するようだ。

しかも

──男だと殴るが、女だと怒鳴るだけなんだな…

──だ～か～ら～、殴ってねえだろうがァ！！！

と、本人的には率直な感想なのだろうが、さらに怒りスイッチを高速で押し続ける。

もちろんそんな会話をしつつも班行動で進む一行。

義勇以外はそのことを知らないが、まだ体も技も成長途中ではあるが前世では柱になる人間が3人居るので、普通の鬼ならそれなりに問題なく倒せる。

倒した鬼の数を指折り数えながら、担当の場所の鬼を一掃して待ち合わせ場所の階段前へ。

──俺らが一番乗りだなァ！！

と上機嫌の不死川に義勇がぼそりと

──たぶん…一番楽な場所を担当させてもらってるし。私が末娘だから…

と、それにも言わないで良い一言を口にする。

これで本人は全く悪気がないのが怖い…と村田はため息。

それでも勢いのある煉獄がこちらもあまりよく考えずに建設的な方向へと誘導してくれるのが救いだ。

しかし今回はその煉獄が介入する間もなく、むっとした不死川が

「ああ？？！！！

じゃあ、待って楽してねえで、先行くぞ、先っ！！！」

と、いきなり階段を駆け上って行ってしまう。

「不死川、それはだめだよっ！！！」

と言う村田の制止も聞かず、

「ぐずぐずしやがったら置いてくぞォ！！」

と上から声が返ってきて、村田はこの状況の判断を義勇に委ねていいものか大いに悩むが、当の義勇は綺麗な形の眉をしかめて

「不死川が一人で死ぬのは勝手だけど…錆兎が死人を出したがってないから仕方ない。

私たちも行く」

と、珍しく厳しい発言をしつつも決断をした。

「うむ…一人ではやはり危険だからな。

では俺の鎹烏で水柱に２階に向かっている旨を連絡をしておこう」

と、何も考えていないようで、しかししっかりそのあたりの教育は叩き込まれているのだろう。

煉獄が最初の錆兎の指示通りイレギュラーに対しての報告を行ったうえで、３人揃って不死川を追った。

２階に上っても階段近くを離れないように鬼を狩っていれば、いずれ錆兎達が追い付いてくれるはず…村田はそう思っていたのだが、甘かった。

そもそもが全階に同じような鬼がいるわけではない。

一応２階までの階段を登り切ったところで他を待っていた不死川が

「じゃ、そういうことで行こうぜェ！！」

とブンブンと刀を振り回しながら入った最初の部屋。

そこには鬼が一匹いるきりで、

「こいつぁ俺が仕留めるから手ェだすなよォ！！」

と、はりきって言う不死川の目の前で、手にした鼓をポン！と打つ。

すると部屋にいる全員の視界がぐるりと回った。

何か滑り落ちていくような感覚。

視界がものすごい勢いで切り替わり、気づけば目の前にいたはずの鬼はいない。

どこか先ほどとは違う知らない部屋に居る。

後方にあったはずの出口はなく、扉は奥に続くものだけ。

これ…まずいんじゃ？と青ざめる村田。

さすがにそれは不死川も思ったようで、無言になった。

義勇も厳しい顔になっている。

唯一煉獄だけが表情を変えず

「前に進むしかないようだな。

しかし何が出るかわからないし、義勇は女性だから後ろに下がってもらって、村田がその護衛。

俺と不死川が前を歩こう！」

と、とりあえずの指示を出し、さすがにそこは矜持がなんだとは言わず、不死川も黙ってそれに頷いた。

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