少女で人生やり直し中_27_水柱の親友

「今日の任務は桃太郎と鬼退治らしいぜ」
「俺たち、運が良かったな」

集合場所にはだいぶ早めについたのだが、もうほとんど集まっていて、目の前で何人かの参加者がにこやかに話をしている。

桃太郎…と言うのは今回仕切る水柱の髪が桃のような色合いで、しかもなんだか非常に清廉潔白正々堂々といった主人公的な雰囲気を持った少年であることからつけられたあだ名であるらしい。

そのほかにも継子の二人を含めて任務中でもキツネの面をつけていることが多いため、きつねっこ達とも呼ばれている。

そんなチャラチャラしたところも不死川には気に食わない。

「ケッ。役者じゃねえんだ。
重要なのは見かけじゃなくて強さだろぉ」
と吐き出せば、にこやかに話していた隊士達が振り返った。

「あ~、またお前と一緒なんだな…不死川。
一昨日ぶりだな」
と、そのうちの一人は何度か任務が一緒になって、つい先日の任務でも一緒だった少年だ。

可もなく不可もなく、特に目立って強いわけでもないが足手まといになることもなく、特徴と言えば存在感のなさとサラサラの髪。
なんでも初恋の相手に髪を褒められてそれ以来ほかに金はかけなくとも髪だけは高級な椿油で手入れをしているのだと、そんなことを話していたのが印象に残っている。

それではすべてに事なかれかと言うとそういうわけではなく、任務で不死川が上と揉めているとさりげなく怒り狂う上の人間の気をそらせながら、飯を抜かれた時はこっそり差し入れを、殴られた時は手当てをしてくれたりと、なかなか気のいいやつだ。

年は1年年上で、隊士としても1年先輩。
それでもいまだに大きく出世をすることなく、しかし再起不能になることもなく、下から2番目の階級である壬にいるあたりが彼らしい。

下手をすれば剣術という意味では不死川よりも弱いのではないかと思うのだが、その人間性の善良さ素晴らしさは家族を亡くしたあたりですっかりひねくれてしまった不死川ですら秘かに認めているところである。

もし引率役の人間が彼のような人物だったなら、自分ももう少し素直に従ったんじゃないかと思っているほどだ。

その少年村田は不死川の零した毒のあるつぶやきを拾ったらしい。

「お前…本当に上の運が悪いのとお前自身が素直じゃないのでひどい目にあってるもんな」
と苦笑。

そしてその後、
「でも今回は大丈夫だよ」
と断言した。

「はぁ?別に気休めなんか要らねえぜぇ?
どうせずっと俺は飯抜かれて殴られて…でも最後は出世するからなァ」
と、村田の思いやりはありがたいと思いつつも、不死川はそんな風に毒づいてしまって内心後悔する。
だが村田は、違う違う、と、笑って首を横に振った。

そして、
「今回仕切る水柱は俺の親友なの。
すごく気のいい奴だからさ。
あいつが理不尽なことを言われたりされたりするのはすごく見てきたけど、絶対にやり返さないし、あいつが他人に理不尽なことをするところもみたことない」
などと驚くべきことを口にする。

ええええーーー?!!!!!
と叫んだのは不死川じゃなく、周りの隊士達だった。
もちろん不死川も驚いたわけなのだが…

「ちょ、おまっ、すげえっ!!
水柱様の親友ってマジかっ?!!」
「しがない壬がなんで水柱様とっ?!!!」
「きつねっこ姉妹とは?!!仲いいのかっ?!!」
と、その場にいたほとんどの隊士達が村田に詰め寄って質問攻めにする。

もうそうなると不死川が入っていく場所がない。
遠くから焦りながら説明する村田の話に耳を傾けた。

「えっとな、俺、あいつの同期なんだよ。
最終選別であいつに最初に助けられたのが俺

鬼殺隊の隊士の最高峰である柱と親友でもそれを自慢することもなく、その発言が出てくるあたりが村田だと不死川はさらに彼に好感を持った。

周りに
「そこは最初に助けたのはって言うとこじゃね?」
と笑われながら、気を悪くすることもなく
「いや、未来の柱をいきなり助けられるなら、俺、いまだに壬やってないってっ」
と、普通に笑う。

「でもさ、最初に助けられたから、あいつがその後に候補者全員を助けて回る時に一番最初に手伝ったのが俺。
それってすごくない?」
と言われれば、皆、なるほど、と納得した。


「そういえばさ、今の水柱様の時の最終選別、一人も欠けずに全員で突破したってホント?」
と飛ぶ質問に、
「ほんと、ほんと。
水柱の錆兎一人でも強いけど、姉弟子の真菰ちゃんもめちゃくちゃ強くてさ。
しかもちゃんと組織だって動いてたっていうか、食事や入浴、食料確保の狩りや薬草刈り、鬼に対する備えや見張りを立てて交代で取る睡眠、全部しっかり管理されてて、時間があれば鍛錬の相手までしてくれて、最終選別ってより指導者付きの合宿みたいだった」
などと答えている。

そんな話に自分の時の最終選別とのあまりの違いに、なんじゃそりゃあ?と不死川は思った。

村田が嘘をつくような人間だとは思わないが、いくらなんでもあの自分が逃げ回るだけで手一杯だった最終選別の中でそれは出来過ぎではないだろうか。

そもそもが、最終選別当時は仲良くしていたとしても、すごい速さで柱まで上り詰めたような人間が、壬の村田を今でも親友と思っているのかも怪しいものだと思う。

しかしそんな不死川の少し意地の悪い疑念は、ほんの少しあとに登場する若い水柱の言葉で払しょくされることになったのだった。




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