少女で人生やり直し中_36_炎柱、煉獄杏寿郎誕生

先日…煉獄がコツコツと地道に50体の鬼を斬って炎柱になった。
彼が隊士になりたての頃に任務見守りに付いて早2年強。

甲以上の隊士が見守りに付くのは隊士になって半年なので、その後は水柱として重めの任務に就く錆兎と同じ任務に就くことはほぼなかったが、休みが重なった時などに折々訪ねてきて共に鍛錬をしたりしていたので、全く疎遠になったというわけでもない。

そんな新米の頃から近くで見守ってきた親しい後輩が柱になるというのは、感慨深くも喜ばしいものだ。

継子と言う名の同居人である姉妹弟子の真菰と義勇も煉獄の成長は錆兎と共に見てきたので、錆兎がそう思っているのと同様に彼のことは弟のように感じているのだろう。

「盛大にお祝いしなくちゃねっ!
鯛の塩焼きと赤飯…より、杏寿郎だったらサツマイモご飯の方が喜ぶかな?
どう思う?」
と、うきうきと祝いの膳を彩る料理を考える真菰。

義勇は
「料理…折詰にしてお土産に持って帰れるようにするか、弟も呼んでやったらどうかな?
家族と祝いたいだろうけど、父は祝ってくれなさそうだから…
弟は寂しいだろうし、杏寿郎もうちでお祝いすることは喜んでくれるだろうけど、弟想いだから弟のことも気になると思う」
と、浮かれる真菰とは対照的に少し考え込むように言う。

ああ、義勇は本当に優しいな…と錆兎が思ったことを口にする前に、真菰が
「あ~、もうっ!うちの末娘は優しいね。
そうだね。
じゃあ杏寿郎には弟君も一緒にって伝えて、父上には折詰にしてお土産に持たせたら?
ついでにさ…錆兎、ちょっと槇寿郎さんと話してみたら?
少しでもさ…杏寿郎が生きやすいように…」
と、義勇に抱き着きながらそう言って錆兎を振り返った。


その件については錆兎のみならず、お館様を始めとして柱一同みな、気には止めていたが、家庭内の問題ということもあり、なかなか介入するのもためらわれている。

錆兎自身も自分がそこで口を出すのもどうかと思わなくはないのだが、おそらくこれが煉獄家に立ち入れる最後の機会になるかもしれない。

父である槇寿郎も全く知らない仲ではないし、折詰を持って杏寿郎が柱になった祝いを言いにいくついでに、少し話でもしようか…と、

「そうだな。
じゃあ真菰、当日までに少しいい酒とつまみになるようなものを用意しておいてくれ」
と、真菰に返す。

「はいなっ。
じゃ、あれだね、お祝いに鯛の入った船盛でも用意しようか」
と、真菰はさらさらと当日用意するものとして紙に筆を走らせた。


こうして一応、杏寿郎の祝いを述べがてら槇寿郎と話をしてみようかと思う旨をお館様と宇髄には相談がてら報告をする。

「…うん、いいことだと思うよ。
杏寿郎も後顧の憂いがない方が任務にまい進できるだろうしね。
少しの気の迷いや集中不足が命に係わる仕事だし…。
本当は私が足を運べればいいんだけどこの通りだから、錆兎、くれぐれも頼むね」
と、本当は自身がそうしたいのだろう、お館様は恐れ多くも頭を下げられた。

宇髄の方はと言うと
「…お前、ほんと~~~にマメと言うか苦労性というか…
自分で面倒ごと背負いこむよなっ」
と苦笑しつつも、
「ま、あの人もまだまだ現役いける年だしなぁ。
上手く気を変えてくれればもうけもんだ。
頑張ってこい」
と、エールを送ってくれる。

二人の反応で少なくとも悪い試みではないのだろうということはわかったし、はっきり言ってしまえばうまくいかなかったとしても、これ以上悪くなることはない。

まあ…自分が少しばかり気まずいだけだと思えば、やってみるという選択肢しかなくなった。

さて…ではまず、どう話を切り出して、どう進めていくか……
実家での地位や現在柱となった立場上、その手のことを避けては通れないわけだが、その手のことは苦手なんだが…と、ため息をつきながら、錆兎は今日もせわしなく任務に赴く。


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