kmt 前世からずっと
──私が預けた異母妹ということにしましょう と、使用人に運ばせた服を楽し気に広げるマリア。 それはどれも上等な絹で出来ていて申し分ないものだった。 ただ一つ…女性用であることを除いては。
本当に本当に、錆兎が言った通りに動いていると疑う間もなく資金が増えていく。 交易先のマカオの一口の寄付金が高すぎて最初は一気に増やすのは無理だったが、マカオにある造船所で船の積み荷倉庫を3倉から5倉に増やしてしばらくマニラ-マカオ間を行き来すると、万単位で金が貯まり、それをマカオ...
「マニラはまだ大商人の手が入っていないから、シェアを確保するのが楽でいいな」 とりあえず自分達の身の上や状況をムラタに説明した後、書き終わった書類を手に錆兎が向かったのは、マニラの総督府だ。
──島から離れ過ぎないように、北西に舵を取れぇっ! 食料や水を積み込んで出発する直前に、ムラタが水夫を集めて船長が錆兎に変更になることを発表した。
こうして少年二人には一晩休んでもらうことにしたのだが、事態が急転換したのはその晩のことだった。 いきなり嵐に襲われて、5隻の船団の中で残ったのは旗艦一隻のみ。 積み荷も流され、命からがら無人島へ。
翌日は快晴だった。 水夫たちは船の修理の仕上げや食材と水の積み込みなど、出航の準備に忙しい。 そんな中でムラタは錆兎を船長室に呼び出した。
kmt 前世からずっと 目次
番外3_1_漂流少年 日本人の祖父を持ちマラッカで生まれ育ったムラタはポルトガルの商館で働いていたが、船団を任せられて初めての航海で海を小舟で漂っていた不思議な少年たちを拾ったあと、嵐に遭い無人島に漂着する。 番外3_2_無人島にて 漂着した無人島で、自発的に船の修繕などの仕切り...
晴れ渡る空、真っ青な海。 嵐が去ったあとの風は涼やかで心地いいが、ムラタの心はどんよりと曇っている。
こうして二度目の転生、3度目の人生が訪れる。 もうあまりに繰り返しすぎて、ぎゆうに近づこうとして錆兎に刀で追い払われる月哉という図は半ば様式美のようなものと天元は生温かい目で見ていたが、月哉の方はこれを様式美にする気はなかったらしい。 正攻法では鬼が鬼退治の英雄に勝つのは不可能だ...
大江山の中腹には元々朽ち果てた砦があった。 もとは昔、頼光四天王に退治された鬼の砦。 籠るとすればそこだろうと見当をつけて行ってみれば、ずいぶんと綺麗に整備されている。 怒れる英雄の気配は離れていても鬼に届いていたのだろう。 いかつい門には大勢の鬼。 しかし鬼斬りの刀を手にした綱...
そんなこんなでモヤモヤとしたものを抱えつつも、3度目の人生も早19年。 2歳年下に生まれた錆兎とぎゆうとの付き合いも10年を超えた。
番外_大江山を見たかった_1 4度目の転生時の宇髄視点 番外_大江山を見たかった_2 宇髄と四天王の筆頭の嫡男である錆兎との初めての出会い。 番外_大江山を見たかった_3 宇髄から見た錆兎とぎゆうの出会い。 番外_大江山を見たかった_4 四天王家の人間に対するのと同じように錆兎か...
こうして都で1位2位を争う人気者の二人。 もちろん錆兎が語ることも嘘ではなく本当のことなのだが、実は女性を妻にするつもりはなくとも人生の中で恋情を持たず恋人を作らないというわけではないことを天元は知っている。
清く正しく光の下に生きている感がすごいのに、壁を感じさせずに他人を惹きつける。 やんごとない耀哉様相手にも委縮することなくはきはきと…それでいて礼儀正しく挨拶をして自らのために用意された席に着くと、彼を元々見知っていた者もそうでなかった者も、待ってましたとばかりに声をかけ、そんな...
──ぎゆう、杉寿郎さん、尭光さん… 宍色の少年が名で呼ぶ中に天元は入っていない。 彼は天元のことは ”宇髄” と名字で呼んでいる。 ”天元” という名ではなく、 ”宇髄” 少年とかなり親しくなったとて、彼が気安く名を呼ぶのは共に大江山で鬼退治をしたという先祖の仲間の3人の直系のみ...
その日も常にそうであるように耀哉様の隣に寄り添う天元。 今回の主な客は頼光四天王の家系の人間達だ。 英雄の血族たちと親しくすることによって現在宮中で起こっている権力争いを少しでも有利にするという、梅を愛でると言いつつ実はとても政治的な色合いの強い集まりでもある。 なので天元も主の...
1_恨み 嵐の夜…復讐者無惨が敵対する相手を待ち構えている。 2_チケット 有名バイオリニストと交流を持てる船上パーティのチケットを宇随が手に入れ、錆兎と義勇、そして実弥と4人で行くことになった。 3_船上パーティ 船上パーティで甲斐甲斐しく義勇の世話を焼く錆兎を目に、宇随は色々...
番外_春の夜に1 平安時代…ぎゆうは頼光四天王の卜部季武の唯一の男児の孫として生まれたが、武術も争いごとも、外遊びすら好まぬために、英雄の孫のくせになさけないと言われ続けていた。 そんな彼に転機が訪れたのは、東宮の正妻の実家、産屋敷家の宴に呼ばれた時だった。 番外_春の夜に2 父...
1_とある貴族の息子の話 時を遡って平安時代、まだ人間の少年だった頃の無惨がぎゆうに初めて会った時の話 2_綱の孫息子 平安時代、耀哉主催の宴で無惨は初めて錆兎に出会う。 3_神に寵愛される者とされぬ者 全てを持つ相手に何も持たぬ自分が唯一望んだ少年をも奪われたと知って、無惨は狂...
1_告白と拒絶 冨岡義勇、高校1年生は前世の記憶がある。 そして今生では1学年上に転生した前世での弟弟子に交際を申し込まれ続けて、とても困っていた。 2_再会…そして逃亡 迫ってくる炭治郎から逃げるように、日直の仕事で日誌を提出するからと駆け込んだ職員室。 たまたま居合わせた錆兎...