水夫たちは船の修理の仕上げや食材と水の積み込みなど、出航の準備に忙しい。
そんな中でムラタは錆兎を船長室に呼び出した。
「おはよう、ムラタ!話ってなんだ?
あとは昨日見つけて煮沸消毒をしておいた水の樽を積み込めば出航だから、出来れば手短になっ」
相変わらず忙しく立ち働いていたらしい。
着物の袖をたすき掛けにして錆兎が部屋へと駆け込んできた。
強く誠実で働き者で、語学も堪能、仕切りも上手い。
こんな部下がいたならば、どんな提督だって喜ぶだろう。
だが、それは部下で居させなければならないものではない。
部下であればその恩恵は提督だけのものだが、上に立たせれば恩恵は船のみんなのものだ。
「錆兎、お前に聞きたいと思っていたんだ。
お前と義勇はどこか目的地があるの?」
まずはそこだ。
どこかに行くための旅ならば引き留めるのは無理だろう。
錆兎は他人を非常に気遣ってはくれるが、意志は固そうだ。
しかし錆兎はきょとんとした顔で
「ないぞ。なんでだ?」
と、首をかしげる。
何故いまそれを?というところなのだろう。
なのでムラタはまず
「これと言って目的地もないなら、このままこの船に乗らないかと思ってさ。
お前の言う通りなら2,3日でマニラついてそこで下船になってしまうからな」
と、まずは船に引きとめにかかろうと打診すると、錆兎はにぱっと笑って
「ムラタが置いてくれるならもちろん嬉しいが。
なんでも一所懸命働かせてもらう!
ただ義勇には俺並みの仕事を求めないでやってくれ。
やらせるにしても出来れば肉体労働系じゃなく、机上で出来るようなものだとありがたい。
あいつも俺と同じだけの言語を理解するし、字も綺麗だし、なんなら数字にも強いぞ。
ただ体力的に俺と比べるとやや不安で、口下手で人見知りだからコミュニケーションがとりにくい」
と、残る前提で義勇の方ができることをあげていく。
「その仕事のことなんだけど…」
と、思ったよりも良い錆兎の反応に、ムラタは先を切り出した。
「おまえにこの船をやるから、お前が船長をやらない?」
「はあぁ??」
小舟で大海の漂流、嵐で無人島漂着など、さんざん大変な目にあった時でも全く動じた様子を見せなかった錆兎が、ここで初めて驚いた様子を見せる。
豪胆な彼にそんな顔をさせられたのは、少し気分が良かった。
「あのさ、俺、お前を見て確信しちゃってさ。
俺の本分っていうか、才能っていうか、そういうのはさ、頂点に立って仕切るとかそういうのとは別のところにある気がするんだ。
適材適所。それを無視すると俺も辛いし皆も辛い。
でも、お前は本当に上に立つ人間なんだよ。
だからこの船を何に使ってもいいからさ。
どこかを目指すのも良いし、このあたりで一旗揚げるんでも良いから。
「これと言って目的地もないなら、このままこの船に乗らないかと思ってさ。
お前の言う通りなら2,3日でマニラついてそこで下船になってしまうからな」
と、まずは船に引きとめにかかろうと打診すると、錆兎はにぱっと笑って
「ムラタが置いてくれるならもちろん嬉しいが。
なんでも一所懸命働かせてもらう!
ただ義勇には俺並みの仕事を求めないでやってくれ。
やらせるにしても出来れば肉体労働系じゃなく、机上で出来るようなものだとありがたい。
あいつも俺と同じだけの言語を理解するし、字も綺麗だし、なんなら数字にも強いぞ。
ただ体力的に俺と比べるとやや不安で、口下手で人見知りだからコミュニケーションがとりにくい」
と、残る前提で義勇の方ができることをあげていく。
「その仕事のことなんだけど…」
と、思ったよりも良い錆兎の反応に、ムラタは先を切り出した。
「おまえにこの船をやるから、お前が船長をやらない?」
「はあぁ??」
小舟で大海の漂流、嵐で無人島漂着など、さんざん大変な目にあった時でも全く動じた様子を見せなかった錆兎が、ここで初めて驚いた様子を見せる。
豪胆な彼にそんな顔をさせられたのは、少し気分が良かった。
「あのさ、俺、お前を見て確信しちゃってさ。
俺の本分っていうか、才能っていうか、そういうのはさ、頂点に立って仕切るとかそういうのとは別のところにある気がするんだ。
適材適所。それを無視すると俺も辛いし皆も辛い。
でも、お前は本当に上に立つ人間なんだよ。
だからこの船を何に使ってもいいからさ。
どこかを目指すのも良いし、このあたりで一旗揚げるんでも良いから。
俺、たぶん嵐で死んだと思われてるし、このまま戻っても詰め腹切らされるだけだけど、じゃあここで何すれば良いとかぜんっぜんわかんないしね。
それならお前の仕切りで別の新しい人生を歩んでみたいかなぁって。
分からない部分があれば俺が補佐するしさ、船のみんなもお前のことを認めてるしさ。
やってみない?」
ぽか~ん、ぽか~ん、ぽかあああ~~ん
それならお前の仕切りで別の新しい人生を歩んでみたいかなぁって。
分からない部分があれば俺が補佐するしさ、船のみんなもお前のことを認めてるしさ。
やってみない?」
ぽか~ん、ぽか~ん、ぽかあああ~~ん
そんな擬音が聞こえてきそうな様子で目の前で呆けている錆兎。
そりゃあそうだ。
小舟で海を漂流していて拾われて、まだ2日だ。
「…すまん、義勇に相談してもいいか?」
と、ゆうに1分ほど固まったあと、錆兎がそう言うので水夫に義勇を呼びに行かせた。
そうして義勇がやってきて、ムラタが同じ説明をすると、こちらは全く驚くことなく
──ムラタは人を見る目だけはあるな。英断だ
と、なんだか失礼な気のする発言をしながらウンウンと頷く。
それには錆兎が、──こら、失礼すぎる言い方だぞ──と、コツンと軽くだが義勇の頭に拳骨を落として諫めていたが…
それでも義勇が当たり前に受け入れたことで、錆兎は即決断したようだった。
「本当にいいんだな?」
「うん、いいよ」
のそれぞれ一言の確認で、次の瞬間、船長がチェンジした。
新たな商会の立ち上げの瞬間である。
そりゃあそうだ。
小舟で海を漂流していて拾われて、まだ2日だ。
「…すまん、義勇に相談してもいいか?」
と、ゆうに1分ほど固まったあと、錆兎がそう言うので水夫に義勇を呼びに行かせた。
そうして義勇がやってきて、ムラタが同じ説明をすると、こちらは全く驚くことなく
──ムラタは人を見る目だけはあるな。英断だ
と、なんだか失礼な気のする発言をしながらウンウンと頷く。
それには錆兎が、──こら、失礼すぎる言い方だぞ──と、コツンと軽くだが義勇の頭に拳骨を落として諫めていたが…
それでも義勇が当たり前に受け入れたことで、錆兎は即決断したようだった。
「本当にいいんだな?」
「うん、いいよ」
のそれぞれ一言の確認で、次の瞬間、船長がチェンジした。
新たな商会の立ち上げの瞬間である。
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