今回の主な客は頼光四天王の家系の人間達だ。
英雄の血族たちと親しくすることによって現在宮中で起こっている権力争いを少しでも有利にするという、梅を愛でると言いつつ実はとても政治的な色合いの強い集まりでもある。
なので天元も主の嫡男である耀哉様の従者としてそれに協力しなければならない。
もちろん不満はない。
自分は天に立つことはなかったとしても、地に生きる人間の頂点なのだ。
天上におわす耀哉様の尊さを際立たせるためならなんだってやってやる。
ということで、天元は自分の役割は完全に怒らせたりしない程度に相手を落とすことだと決めた。
無礼な部下の行動に耀哉様は尊い人であるにも関わらず相手に謝罪をして相手を気遣われる。
普通なら相手は英雄視される家系だとしてもしょせんは武士。
帝の縁者である耀哉様が頭を下げられる必要などない。
しかし耀哉様の性格上、絶対に相手を尊重し気遣われることを天元は知っていた。
案の定、耀哉様は天元が無礼な言葉を吐くたびに場を壊さないようにそれをやんわりと注意をしながら、言われた相手に謝罪する。
その尊い身分の方の謙虚な態度に、元々は力で地位を得た武家の面々の好感度があがっていくのが手に取るようにわかった。
以前産屋敷の分家で怯えて泣いていた卜部の童も天元の言葉にまた泣きそうになったが、その後に耀哉様にかけられた優しい言葉に、ほわわ~と心の音が聞こえてきそうなくらい、心服したようである。
本当に尊い方なのに、相手に敬意は寄せられても威圧感は与えない。
耀哉様は本当に特別な方だと誇らしく思うとともに、そんな方の一番の側近という座にいられることはとても幸運なことだと天元は思う。
その後も四天王の子孫が続々と到着。
宇髄は碓井の傍流で親戚でもあるし、当然天元のことも知っているので親しく声をかけてくる。
自分は天に立つことはなかったとしても、地に生きる人間の頂点なのだ。
天上におわす耀哉様の尊さを際立たせるためならなんだってやってやる。
ということで、天元は自分の役割は完全に怒らせたりしない程度に相手を落とすことだと決めた。
無礼な部下の行動に耀哉様は尊い人であるにも関わらず相手に謝罪をして相手を気遣われる。
普通なら相手は英雄視される家系だとしてもしょせんは武士。
帝の縁者である耀哉様が頭を下げられる必要などない。
しかし耀哉様の性格上、絶対に相手を尊重し気遣われることを天元は知っていた。
案の定、耀哉様は天元が無礼な言葉を吐くたびに場を壊さないようにそれをやんわりと注意をしながら、言われた相手に謝罪する。
その尊い身分の方の謙虚な態度に、元々は力で地位を得た武家の面々の好感度があがっていくのが手に取るようにわかった。
以前産屋敷の分家で怯えて泣いていた卜部の童も天元の言葉にまた泣きそうになったが、その後に耀哉様にかけられた優しい言葉に、ほわわ~と心の音が聞こえてきそうなくらい、心服したようである。
本当に尊い方なのに、相手に敬意は寄せられても威圧感は与えない。
耀哉様は本当に特別な方だと誇らしく思うとともに、そんな方の一番の側近という座にいられることはとても幸運なことだと天元は思う。
その後も四天王の子孫が続々と到着。
宇髄は碓井の傍流で親戚でもあるし、当然天元のことも知っているので親しく声をかけてくる。
まあ、四天王と言っても耀哉様の前には本当に目立ったところもない普通の人間たちだ。
天元がそんな風に思っているのは周りもいい加減わかっていて普段は特にそれに触れはしないのだが、今日はどうも勝手が違う。
天元がそんな風に思っているのは周りもいい加減わかっていて普段は特にそれに触れはしないのだが、今日はどうも勝手が違う。
天元と親しい親族ということもあって碓井の若いあたりが、
──今日は筆頭が来るぞ
と、意味ありげに天元に耳打ちした。
筆頭?と、天元は首をかしげる。
──渡辺の当主は今瀬戸内じゃないか?
筆頭と言うのは四天王4家をまとめる役割を担う渡辺家を指している。
しかしその渡辺家の当主は現在、四天王の中でもあちこちの戦いに首を突っ込みたがるのはいいがやや暴走気質な上に腕っぷしが強すぎて誰も止められないという坂田の人間を唯一抑え込めるお目付け役として、京を離れて海賊退治に付き合っているはずだ。
傍流とはいえ、そのあたりの四天王家の当主事情は宇髄家にも入ってきている。
だからさすがにこの宴のためにはるばる瀬戸内から戻ってくることはないだろうと思っていると、碓井の若者は
──あ~現当主はな。でもたぶん次の当主になる若君が今日ここに招かれてくる。
──…若君?当主の子はまだ赤子じゃなかったかぁ?
──そっちじゃない。ほら、渡辺は必ずしも長子の子が跡を継ぐわけではないからな
──…次男の一子か?
──そうそう。今年10になる。
──渡辺はもう次の跡を決めたのか?
──いや?でもあれをおいて跡を継げる者はいない。
それは…どうなんだ?と天元は疑念を抱いた。
渡辺家は英雄の家系と言われる4家の中でもそれを束ねる筆頭の家だ。
4天王の中でも特別な家なのである。
だからその当主ともなれば当然ながら他3家以上の優れた資質が求められるため、必ずしも長子の嫡男ではなく、兄弟姉妹の子の中で特に優れた男子がその座につくことも珍しくない家なのだ。
それをまだ元服前の童の中に見出せるものなのか…と思いはするが、残りの3家の中で正義と戦いにしか興味を示さないいわゆる脳筋な坂田と、他より一歩下がった戦いをするためか他のことについてもやや控えめな卜部と違い、常に自分達は次席の座にはあると自負している碓井の人間が認めるということは、かなりの資質の持ち主であることは確かだろう。
それでも天元は耀哉様以外に特別に優れた人間がいるとは思ってはいなかったので、まあ普通より利発な子どもなのだろうと、脳内で決定づけた。
そうして続々と到着する客人。
見知った顔も見知らぬ顔も入り混じって、しかし全員一度は耀哉様に挨拶に来るので、知らないあたりは脳内に叩き込む。
天元もそのあたりはたいがいなのだが、途切れぬ客人たちの挨拶にずっと笑顔で居続ける耀哉様はすごいと思う。
産屋敷本家の若様という地位ではあっても元服前の少年なのだ。
それが常に感情を揺らすことなく、にこやかに冷静な対応を続けるというのはたいした精神力だ。
さきほど挨拶に来た卜部の童を何故か気に入ったらしい分家の息子月哉など、耀哉様より1つ2つ年上のくせにいつも癇癪を起こして怒鳴り散らしている。
長子の直系と長子以外の子でこれほどまでに差が出るのは元々の資質もさるものながら、上に立つ者として生まれ落ちた瞬間から教育を受けているというのが大きいだろう。
そういう意味では生まれ落ちた環境が長子の家でも次子の家でも関係なく、もちろんそれゆえに教育を受けたからという後天的なものでもなく、ただただ本人の資質のみで上に立つ者を選ぶという渡辺の家のやり方は、かなり特殊で厳しいと天元は今までも知っていたことではあるが今更ながらにそう思った。
そうして来客の挨拶を受ける耀哉様の隣に鎮座していると、入り口のほうからざわめきが聞こえた。
どこかはしゃいだような楽し気な皆の声。
と、意味ありげに天元に耳打ちした。
筆頭?と、天元は首をかしげる。
──渡辺の当主は今瀬戸内じゃないか?
筆頭と言うのは四天王4家をまとめる役割を担う渡辺家を指している。
しかしその渡辺家の当主は現在、四天王の中でもあちこちの戦いに首を突っ込みたがるのはいいがやや暴走気質な上に腕っぷしが強すぎて誰も止められないという坂田の人間を唯一抑え込めるお目付け役として、京を離れて海賊退治に付き合っているはずだ。
傍流とはいえ、そのあたりの四天王家の当主事情は宇髄家にも入ってきている。
だからさすがにこの宴のためにはるばる瀬戸内から戻ってくることはないだろうと思っていると、碓井の若者は
──あ~現当主はな。でもたぶん次の当主になる若君が今日ここに招かれてくる。
──…若君?当主の子はまだ赤子じゃなかったかぁ?
──そっちじゃない。ほら、渡辺は必ずしも長子の子が跡を継ぐわけではないからな
──…次男の一子か?
──そうそう。今年10になる。
──渡辺はもう次の跡を決めたのか?
──いや?でもあれをおいて跡を継げる者はいない。
それは…どうなんだ?と天元は疑念を抱いた。
渡辺家は英雄の家系と言われる4家の中でもそれを束ねる筆頭の家だ。
4天王の中でも特別な家なのである。
だからその当主ともなれば当然ながら他3家以上の優れた資質が求められるため、必ずしも長子の嫡男ではなく、兄弟姉妹の子の中で特に優れた男子がその座につくことも珍しくない家なのだ。
それをまだ元服前の童の中に見出せるものなのか…と思いはするが、残りの3家の中で正義と戦いにしか興味を示さないいわゆる脳筋な坂田と、他より一歩下がった戦いをするためか他のことについてもやや控えめな卜部と違い、常に自分達は次席の座にはあると自負している碓井の人間が認めるということは、かなりの資質の持ち主であることは確かだろう。
それでも天元は耀哉様以外に特別に優れた人間がいるとは思ってはいなかったので、まあ普通より利発な子どもなのだろうと、脳内で決定づけた。
そうして続々と到着する客人。
見知った顔も見知らぬ顔も入り混じって、しかし全員一度は耀哉様に挨拶に来るので、知らないあたりは脳内に叩き込む。
天元もそのあたりはたいがいなのだが、途切れぬ客人たちの挨拶にずっと笑顔で居続ける耀哉様はすごいと思う。
産屋敷本家の若様という地位ではあっても元服前の少年なのだ。
それが常に感情を揺らすことなく、にこやかに冷静な対応を続けるというのはたいした精神力だ。
さきほど挨拶に来た卜部の童を何故か気に入ったらしい分家の息子月哉など、耀哉様より1つ2つ年上のくせにいつも癇癪を起こして怒鳴り散らしている。
長子の直系と長子以外の子でこれほどまでに差が出るのは元々の資質もさるものながら、上に立つ者として生まれ落ちた瞬間から教育を受けているというのが大きいだろう。
そういう意味では生まれ落ちた環境が長子の家でも次子の家でも関係なく、もちろんそれゆえに教育を受けたからという後天的なものでもなく、ただただ本人の資質のみで上に立つ者を選ぶという渡辺の家のやり方は、かなり特殊で厳しいと天元は今までも知っていたことではあるが今更ながらにそう思った。
そうして来客の挨拶を受ける耀哉様の隣に鎮座していると、入り口のほうからざわめきが聞こえた。
どこかはしゃいだような楽し気な皆の声。
──久しいなっ!達者だったか?
──ずいぶんと大きくなったな。もう刀は大人用になったか?
──うちのもお前を見習ってもう少し多様な武芸を身に着けてくれると良いんだが…
などの親し気な声が聞こえてくる。
ああ、来たかぁ…と、宇髄はにぎわう方向に視線を向けて、驚きに目を丸くした。
大人たちに交じった子どもが一人。
その髪は遠目にもすぐわかる鮮やかな宍色だ。
よもや染めているのか?とも思ったが、笑顔で瞼の下に隠れていた目は一瞬開いた時に見るとこちらも珍しい藤色なのでおそらく髪も地毛なのだろう。
色合いが派手なので普通ならそちらに気を取られそうなものなのだが、なんというかそれも気にならないくらいに少年にはどこか輝かしいオーラがあった。
例えるなら…おとぎ話の主人公のような?
当然ながら顔立ちも少年らしいあどけなさを残しつつも男らしく整っていて、肌は健康的な色合い。
幼いながらもほどよく筋肉がついた体躯で、背筋はピン!と伸びている。
理解した。
壮絶に理解した。
これは普通の童ではなく、この世の中心となるべく生まれた童なのだろう。
耀哉様がおとぎ話で天上で皆を照らす神様ならば、あの童は刀を振るい巨悪を斬り捨て、地上に平和をもたらす勇者、主人公である。
遠目に見てもわかるカリスマというものを、耀哉様以外に見たのは初めてだった。
プライドの高い天元ですら競う気にもならない。
あれは特別に神に愛されて生まれてきた選ばれし子だ。
──ずいぶんと大きくなったな。もう刀は大人用になったか?
──うちのもお前を見習ってもう少し多様な武芸を身に着けてくれると良いんだが…
などの親し気な声が聞こえてくる。
ああ、来たかぁ…と、宇髄はにぎわう方向に視線を向けて、驚きに目を丸くした。
大人たちに交じった子どもが一人。
その髪は遠目にもすぐわかる鮮やかな宍色だ。
よもや染めているのか?とも思ったが、笑顔で瞼の下に隠れていた目は一瞬開いた時に見るとこちらも珍しい藤色なのでおそらく髪も地毛なのだろう。
色合いが派手なので普通ならそちらに気を取られそうなものなのだが、なんというかそれも気にならないくらいに少年にはどこか輝かしいオーラがあった。
例えるなら…おとぎ話の主人公のような?
当然ながら顔立ちも少年らしいあどけなさを残しつつも男らしく整っていて、肌は健康的な色合い。
幼いながらもほどよく筋肉がついた体躯で、背筋はピン!と伸びている。
理解した。
壮絶に理解した。
これは普通の童ではなく、この世の中心となるべく生まれた童なのだろう。
耀哉様がおとぎ話で天上で皆を照らす神様ならば、あの童は刀を振るい巨悪を斬り捨て、地上に平和をもたらす勇者、主人公である。
遠目に見てもわかるカリスマというものを、耀哉様以外に見たのは初めてだった。
プライドの高い天元ですら競う気にもならない。
あれは特別に神に愛されて生まれてきた選ばれし子だ。
1からNEXTを押すと2に飛びません( ;∀;)あと些末な部分ですが「求められるのため」←「求められるため」の誤表記かと…ご確認ください。
返信削除ご報告ありがとうございます。
削除色々大急ぎで修正していたのでなんだかおかしなことに😅
誤字の方も修正しました。
また何かありましたらよろしくお願いします。