kmt 人生やり直しバトル
──破門だっ 錆兎の怒りをなんとか緩和させようと尽力してくれた真菰に何度も何度もお礼を言って水柱屋敷を辞した匡近は、風柱屋敷に帰ると今回の処遇に納得していないようでムスッとしている実弥にそう告げた。
──世の中には謝罪しても許されない事はある。これはその類のものだ いきなり呼び出された水柱屋敷の道場で、匡近は例によって土下座をしていた。 例によっていつものことだが…という枕詞を使うには、今回は状況がいまだかつてないほどに深刻である。 なにしろ普段ならやらかしたら真っ先に怒鳴る...
…ぎゆうから…は…さね…み…の…たのもしさ…に…… あれからずっと実弥は風柱屋敷にいた。 しかし柱とはいえ新人柱で、しかも真菰のように雑務を全て引き受けてくれる有能な姉弟子が居るわけでもない匡近はかなり忙しい。
…また来てしまった…… 朝方…任務明けに自宅に帰宅する前に風柱粂野匡近は菓子を片手に水柱屋敷に寄る姿がよく見かけられて話題になっていた。 それを屋敷に迎え入れるのは屋敷の主である水柱の姉弟子であり継子でもある真菰である。
──ん~…おすすめはこれかな? 思い立ったが吉日、善は急げとばかりに、さっそく真菰に時間をとってもらった匡近は、真菰に錆兎と義勇の薄い本のおススメを読ませてもらえないかと申し出た。
物語には物語で対抗をっ!! と、短気だった弟弟子は短気は損気という事を学んだ結果、そういう方向で行動することにしたらしい。
──悪いことは言わない。義勇君の事はすっぱり諦めろっ。 実弥が風柱屋敷に身を寄せて数日後、柱合会議から帰ってきた匡近が、いきなり開口一番そう言った。
色々と悶着はあったものの、自身の風柱屋敷に弟弟子を保護して数日。 風柱を拝命した粂野匡近は初めての柱合会議に出席。
さてこの頑なな認識をどう正せばいいんだと実弥が悩んでいると、義勇はさらにとんでもない話をし始める。
結局もう匡近の継子となるしか鬼殺隊に残る道はない。 今回の任務で自分がやらかしたことが周りにどう映るか、周りに何を懸念されるかを説明されて、さすがの実弥も納得せざるを得なかった。
──兄弟子相手に最低だよね… 久々に見る絶対零度の真菰。 ──どっちかってえと、粂野よりお前が土下座するとこじゃね? と、宇髄の視線も冷ややかだ、 そして前回は手を差し伸べてくれた水柱はと言えば…… ──匡近、とりあえず土下座はやめろ。話をするなら目を見てと真菰が言ってただろう?...
不死川実弥は2度目の除隊勧告を受けるか否かの危機に瀕していた。 連れて来られた水柱屋敷の庭で、目の前には水柱と音柱。 そして例によって隣ですでに匡近が土下座をしている。
──元忍、ジャンケンねっ ──おうっ
──ね~、なんで元忍も来てるの?柱なのに暇なの? と、とある村の木の枝に座りながら、弟弟子に命じられたきつねっこ長女…もとい真菰が自分と同じく気配を消して隣にしゃがんで下を窺う元忍に言う。
水柱屋敷は母屋と離れに分かれている。 母屋はほぼ出入り自由で、真菰の友人や錆兎が面倒をみている…あるいはみていた一部の隊士が宿代わりにしていたりする一方で、離れは水柱である錆兎や継子二人が住む他者が入れない場所である。
上手くいかない…… 何が上手くいかないのかはわからないが、どこか上手くいかない。 そのことに実弥は焦っていた。
元忍宇髄の創作力と協力、そしてそれを実際に広めていく乙女達の人海戦術で噂合戦はかなり有利になってきた。 が、まだ完全を期するにはまだ足りない、と、真菰は思う。 今は押し合いのようなもので、こちらが有利だとしてもあちらの話を完全に粉砕するには足りない。
「あ~嫁がいつも世話になってて、ありがとな。 このネタはたぶんそのうち嫁も書くだろうから、読んでやってくれ」 と、まず嫁の趣味の後押しをするあたりが愛妻家な宇髄である。
真菰が言うまでもなく、不死川が流したデマはすでにかなりの乙女の耳に入りその怒りを買っていたが、なかには知らない人間も居るだろうと、真菰は最初から説明を始めた。
──すまないが俺は寝かせてくれ。連勤が長いから集中が途切れそうだ。 藤の家で食事を終えたあと、柱合会議やら真菰や義勇を伴わない任務やらで多忙を極めていた錆兎はそう言ってあくびをしながら離れに戻っていった。