kmt 短編
翌日…貞子が登校すると、同級生たちの半数くらいはすでに教室にいた。 その中には亜優もいる。 が、どことなく元気がないようで、貞子とは元々あまり交流のなかったあたりの子と何か込み入ったような話をしているようなので、待つ事にした。
──おはよう、貞ちゃん ──不死川、おはよ~! ──不死川さん、おはよう
──本当はね、少し心配だったの…不死川の妹さんがあんま鱗滝君に接触したら嫌だなって… 有無を言わさず現場を離れて向かったスタバでお目当てのフラペチーノを飲みながら義勇がそう切り出すと、鱗滝君は少し困ったように笑った。
波乱の幕開けは突然だった。 水曜日の放課後のこと。 付き合うようになって毎週そうであるように、その日は鱗滝君の部活がないため、一緒に帰って途中で甘い物を食べたり飲んだりして帰る、そんな楽しい放課後になる予定だった。
あの不死川の妹との話し合い以来、鱗滝君は学校側や小等部の後輩たちに働きかけて、どうやら不死川の弟妹達への周りの待遇もほぼ元に戻ったらしい。
──ありえんなっ!被害者に加害者の窮状を救うように頼むなんて宇髄も頭がわいている。 翌日…学校で昼休みに不死川の妹に会ったこと、そして今鱗滝君と宇髄君がお互いに色々約束事をして動いていることを話したら、伊黒君が激怒した。
そしていつものマック。 義勇が鱗滝君と一緒に店に入ると、宇髄君はすでに来ていた。
鱗滝君が家に来てくれてからも、さらに彼との関係は良好でより距離が近くなって、そちらはとても順調だった。 …が、不死川の方は相変わらずだ。
「まずな、大前提として、義勇は小等部入学以来ずっと不死川と同じクラスだったんだが、不死川はいつも義勇に暴言を吐いたり軽い暴力を振るったりして来たんだ。 まあ所謂いじめっ子といじめられっ子の関係な?
そうして、宇髄先輩に『さあ、話そうぜ!』と言われた瞬間、貞子の頭の中は真っ白になった。 何を話せばいいのかとか、考えてなくはなかったが、何をどう切り出したらいいんだろう…
──今日は同席を許可してくれてありがとう。鱗滝錆兎だ。よろしくな。 放課後…某駅のマックでにこやかにそう言う先輩は正直言ってカッコよかった。 凛々しい感じがするのに、浮かべる笑みがすごく温かくてホッとする。
そんなある日のことである。 ──姉ちゃん、これ…… と不死川家の3男にあたる弟就也が出して来たのは折れたシャーペン。
──貞ちゃん、ごめんね。でも…… と申し訳なさそうに言う亜優は貞子にとって最後の友達だった。
当日、実際に会った彼も素晴らしかった。 なまじずっと女子校育ちで周りに父親以外の男性がいなかったため、理想が高くなりすぎてしまった感のある蔦子でも、文句がつけようがない。
それからも義勇と鱗滝君の距離は順調に縮まって、それと同時に彼は不死川から義勇を守ってくれるようになった。
蔦子の自慢の妹義勇は大変成績がよろしかった。 あれだけイジメられて登校するのも辛かっただろうに、なんと学年1位だったのである。 なので新入生代表の挨拶をすることになった。
その他は義勇の小学校についてはあまり良い思い出はない。 それどころか小学校5年生のとある日、とうとう義勇が泣きながら学校に行きたくないと言い出したのだ。
冨岡蔦子は妹が大好きだ。 妹は本当に本当に本当に可愛い。
…ということで、その週の日曜日。 鱗滝君が義勇の家に来てくれることになった。 嬉しいと言えば嬉しいが、心配と言えば心配だ。
まあどちらにしても、不死川が絡んできても鱗滝君はもちろん、伊黒君や甘露寺さん、煉獄君に村田君と班員みんなに囲まれていたら、今までと違って不安はない。