諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_68_謝罪と礼

水柱屋敷で真菰に原稿を渡しながら錆兎に面会を申し込むと、真菰に
──え~。錆兎疲れてるから、何かあるならあたしが聞くけど?
と言われてしまう。

だが、そこに丁度母屋に用があったらしい錆兎が顔を出して、
──あ~、実弥。その後どうだ?
などと声をかけてくれたので、なし崩し的に面会が叶ってしまった。

まあ真菰は複雑な顔をしていたが、錆兎本人が良いと言うのだから何も言えないようである。

しかしそれでも錆兎の格好がいつもピシッと着ている隊服ではなく、ゆったりとした着流し姿で、おそらく休息中だったのだろうとさすがに気づいて実弥も
──なんか…時間をとらせてかえってすまねえなァ
と申し訳なくなってきて頭を下げた。

だがそれに対しても錆兎は
──いや?ちょうどひと眠りして目が覚めたところだったから
とそう返したあと、
──実弥は相手に持つ厚意の度合いと気遣いが比例するからわかりやすくていいなっ
と、はっはっと笑った。

確かに…あまり他人を気遣わないと言われる実弥だが、元々は長子で弟妹の面倒をよく見ていたので、実は気遣えないわけではない。
相手が特別に大切だと思えば自然に気を遣う。

今回もまず実は甘い物が好きな錆兎に美味い和菓子を手土産に持参し、それを取り次いでもらうために真菰には彼女が好きな洋菓子を持参した。
もちろん、錆兎の和菓子に関しては彼が一緒に食べたいであろう義勇の分も用意することは忘れない。

そうして重ねて気遣ううち、真菰もとりあえず今の実弥が少なくとも錆兎の意志は最大限尊重する気があるということは認めてくれたらしく、少しだけ態度が緩和してきた。

錆兎の許可が出たということで真菰もいま実弥を錆兎の客として認めて錆兎の分と一緒に茶を煎れてくれて、自分は家事があるからと席を外す。

錆兎はそんな真菰に礼を言って見送ると、ずず~っと茶を一口すすって、
──で?今日はどうしたんだ?
と、実弥に視線を向けて来た。

そこで実弥は順調である近況の報告をすると共に錆兎の諸々の尽力に対して心から礼を言う。

それに
──弟が平和に暮らせて良かったな
と目を細める錆兎に実弥は大きく頷いた。

先に書いたように実弥にも寄り添い気遣う相手は居るが、それは万人ではなく出会った人間の中でもごくごく一部だ。

錆兎は…違うのだろうか?
と、そんな風に玄弥の健やかな生活を我が事のように喜んでくれる錆兎を見て不思議に思う。

錆兎は親しい順から気遣いをしていくと言っていたが、気遣う範囲は実弥からするとありえないくらい広大で、しかし実弥はその中でもかなり面倒迷惑をかけ、それでも気遣ってもらっている気がするのだが、何故なんだろうか…。

そんな考えがぐるぐるしてしまいには首を傾げ始める実弥に錆兎が声をかけてきたので、考えていたことをそのまま口にしてみた。

──あ~…それは、だな…
と、そこで錆兎は答えてくれる。

──俺と同じく一度自分自身より大切な者を亡くしたことのある人間だから…かもな

その言葉で思い出した。
そうだ、錆兎は一度義勇を亡くしていると宇髄も錆兎本人も言っていた。

──なあ…
──ん?
──宇髄の嫁の本とかにはあったんだけどよ、錆兎本人の目から見るとどうだったんだ?
──俺と義勇の諸々…か?
──ああ。

実弥が頷くと錆兎は
──お前までそんなことに興味を持つようになったのか?
と苦笑する。
それで少し気恥しくなった。

そこで、実弥はふと思い立って
──今色々無惨について書いてるからよォ、情報欲しいんだよ
と言い訳してみるが、口をついて出た言葉はよくよく考えれば全く持ってもっともな理由のように思えて来た。

錆兎も同様に思ったらしく、
──長くなるかもしれんが…聞くか?
と聞いてくるので、実弥は無言でしかし大きく頷いた。








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