──考えを…変えさせるだぁ?
──あんなにしつこく付きまとおうとしてるのに?
不死川の義勇への執着を変えさせることは難しくはないという錆兎の言葉をきいて宇髄と真菰は揃って驚きに目を丸くした。
──さすが錆兎だっ!
と錆兎を全肯定するのもお約束である。
そんなカオスな状況の中、錆兎は淡々と言う。
──だって実弥は別に義勇が好きなわけじゃなくないか?
──はあぁ??
好きじゃなくてあの執着は何だというのかっ…と宇髄と真菰が暗にそんな視線を錆兎に送ると、錆兎は澄ましてずず~っとお茶をすすりつつ言った。
「真菰の話だと…巻き戻る前の義勇と今の義勇は全く性格が違うということだっただろ?
ということは義勇に執着するのは義勇だからじゃなく、状況なんじゃないか?」
「状況?」
「ああ、状況だ」
と、錆兎は頷く。
「飽くまで真菰に聞いた話を前提に考えるとということになるが…実弥はおそらく寂しがり屋なんだと思う」
そう続く錆兎の言葉に宇髄はプッと噴き出すが、真菰はその後頭部を軽くどついて、
「続けて?」
と先を促した。
「大家族で育って周りに弟妹が大勢いるのが当然という環境で育ってきたから、実弥は実は人といる状態が好きなんだと思う。
それがある日それをほぼ失くして…。
最後に残った、こいつだけは死なないようにと身を切るような思いで突き放したすぐ下の弟にも最後の最後に死なれてしまった。
それで完全にひとりぼっちになった上に、あの容貌とあの言動だから家族以外に親しくしてくれる相手もいない。
使用人達は仕事だから近くに居るが家事はしても心に寄り添ってくれたりはしないしな。
で、そこに自分と対等の立場で唯一生き残った、そして何か怒られているならそれをなんとかしなければいけないのだろうと邪険にしてもまとわりついていた義勇がいたわけだ。
その他で生き残った同じ立場の宇髄は嫁達が居て、彼女達が一番だからな。
ずっと一緒に居てくれる唯一の人間にはならない。
だから義勇の性格とか容姿とかじゃなく、前世での立場とか関係性で、実弥は唯一傍に居て離れて行かないのは義勇しかいないと思い込んでいるんだと思う」
「あ~、なるほどなぁ…。
それはあるかもしれねえな」
と、宇髄が納得したように膝を叩いた。
「でもそれなら匡近が居れば十分じゃない?」
と、そこでそう言う真菰に
「奴は長男だかから」
と苦笑する錆兎。
「その傍にいる誰かは目上以外、年上以外っていう条件があるんだと思う。
お前の話に出てくる義勇と共に居た俺達の弟弟子だったという炭治郎という少年も長子で長男気質だったんだろう?
義勇はその点弟育ちだから」
「あ、理解」
と、真菰は納得したというように軽く手をあげた。
「だからある意味、義勇が義勇であることで執着している月哉よりは扱いやすい。
あっちはまあ…どちらにしても消しておかねばならんが、実弥はさっきも指摘した通り万が一巻き戻ると厄介だし、物理で潰すより気持ちの方を消させた方が安全だし建設的だ」
まあ御説ごもっともといった発言をする錆兎に、宇髄がプッとまた噴き出した。
「…なんだ?」
と今度は錆兎が首をかしげると、宇髄はニヤニヤしながら
「記憶あんのは隠しておこうと思ってたんじゃねえのかよ、筆頭。
”月哉”じゃなくてそこは”無惨”て言わねえと」
と突っ込みを入れて、それで初めて失言に気づいたらしい錆兎が
「あ~っ!!」
と片手で顔を覆って天を仰ぐ。
「あたしにはもうポロリしてたよ、錆兎」
と、真菰はそのやりとりにクスクス笑って、
「なんだよ、俺だけハブだったのかよ」
と宇髄が不満げに口を尖らせた。
「そうじゃなくて…真菰はずっと姉だったから…。
宇髄や義勇は横並びだが、真菰は半分保護者なんだ。
だから真菰相手だと何かの拍子にポロっと気が抜ける」
と、そのあたりの宇髄の親しさへのこだわりはさすがに知っているので、錆兎はそう弁明をする。
──その代わり真菰は別働を頼むことが多くて一緒に走るのはたいていお前だろう?
とそれは事実である行動を口にすると、
──ああ、それはまあ…な
と宇髄は機嫌を直してまんざらではない顔をした。
しかしそこで最後の一人、義勇がぷくうぅっと頬を膨らませる。
──錆兎、俺は?!宇髄と真菰はわかったけど、俺は?!
確かに同い年のはずなのに、その表情は弟オーラ全開で可愛らしい。
錆兎は思わず
「お前は俺の全て。
真菰や宇髄が居なければ俺はとてつもなく落ち込むし、しんどいことはしんどいが、お前だけは俺の心の奥底に食い込み過ぎて、居なければ秒で死ぬと思う」
と、その愛しい相手を抱きしめた。
「もし3人と居て死ぬ確立のある事態が起きて助けるとしたら、真菰、宇髄、義勇の順で助けるから」
いきなりそう言う錆兎に3人全員が意味がわからず青ざめた。
「えっと…さい…ご?」
と言う義勇の声は震えている。
それに対して
──そう、最後だ。
と言う錆兎の声は何故かどこまでも甘い。
──お前を助けることで真菰と宇髄を死なせたら、お前は寝覚めが悪いだろう?
──そ…それは、そうだけど……
──真菰は女だから最初。次は宇髄。で、一番間に合わない可能性の高い最後には義勇。
と言う錆兎の言葉に義勇よりも真菰と宇髄が青ざめた。
…が、義勇の錆兎に対する信頼と言うのはどこまでも厚いらしい。
──何か意味があるんだよな?
と、それでもさすがに緊張した面持ちで言う義勇の頬を錆兎が撫でる。
そして笑みを浮かべた。
「俺は全員助けるまで動けないし、もし時間切れだったら一緒に死ぬのはお前とが良いからな。
俺が先に死んだらお前を守ってやれなくなるからお前を残して死にたくない」
「錆兎っ…(はぁと)」
ヒシっと抱き着く義勇に、宇髄がガシガシと頭を掻いて、はあ~~~~と大きくため息をつく。
「はいはい、そんなとこだろうと思ったぜ」
と言う宇髄の言葉で、真菰も詰めていた息を吐きだした。
──…で?結論としては?
と、そこで真菰が問えば、
──ああ、話が逸れたな
と、錆兎は苦笑。
そして
「まあせっかくだから無惨がある意味実弥に執着しているならそれを最大限利用させてもらって滅無惨を目指しながら、全てが終わる日がくれば実弥は別の幸せに誘導してやるということで」
と言う錆兎に他3人が
「「「了解」」」
と了承したことで、その日の話し合いは終了することになった。
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