諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_60_寛大さではない

──みんな平和で幸せって…相変わらず甘えよな、お殿様は。

とりあえず状況を大方把握し終わって平和的解決をとする錆兎に、宇髄は呆れ顔で言う。

まあ真菰も感情的にはそう思う。
しかし錆兎は鬼殺隊のというだけではなく、鱗滝組の隊士の御旗のようなものだ。
尊敬され慕われる隊士であって欲しいし、それにはある程度の寛容さも必要である。
そんな色々な想いの入り混じった複雑な気持ちがため息となって漏れだすと、錆兎は苦笑した。

「いや…寛大とか許容範囲とかそういう問題じゃないからな?念のため。
真菰も宇髄も俺の良心を信じすぎだ」

錆兎がそう言うと、義勇は錆兎自身ですら錆兎の善性を否定することは許すつもりがないらしく、
「そんなことはない!錆兎はこの世の光で真理で存在自体が正義そのものだっ!」
と断固として主張する。

そしてこちらも義勇至上主義の錆兎はたとえ自分の事と言えど義勇のいう事を全否定したくなかったらしい。

「う~ん…まあ…正義と言うのは人、場所、状況によって変わるからな…。
義勇にとっての正義はたまたま俺の行動と合致するんだろう」
と、彼にしては珍しく歯切れが悪い微妙な言動でそれを流した。
当然…横では宇髄が爆笑している。

その全てをスルーして、真菰は問う。
「で?善意や寛容じゃなかったら何?」
と。

それに対して錆兎は顎に手を当てて少し考え込んだ。

「…真菰向けには俺の評価が先生の評価につながるから…と言うのが正しいと思うし、実際にそれもあるんだが…」

「あるんだけど?」
と真菰は小首をかしげて最後の言葉を繰り返し、そしてハッと気づく。
しかしそのことを真菰が口にする前に、同じく気づいたらしい宇髄が先に口を開いた。

「なるほど!そうか…そうだよなぁ…。
2度ある事は3度あるっていうもんなぁ…」
「そうだよねぇ…」

2人でわかりあっていて、さらに宇髄と真菰が自分の言わんことを正確に読み取っていることを悟った錆兎は己が相手を斬り捨てられないその事情に少し困った顔を見せる。

そこで唯一全く話の流れの見えない義勇が
「ちゃんと話してくれないとわからない」
とぷくりと頬を膨らませて言うのに、真菰はちらりと視線で錆兎に指示を仰いで、錆兎が頷くと自分が説明役を買って出た。

「えっとね、今、実弥をある程度制御出来ているのは奴が錆兎を信頼してるからなのね。
義勇の事がなければ実弥は錆兎のことを上司や保護者として尊敬してるみたいだし、義勇の事があっても頼りにしてるところはあるのよ。
で、今の錆兎は実弥を完全に潰すことは簡単なんだけど、もしもよ?もしもそうやって実弥が錆兎は自分に敵対して潰す人間だと言う記憶を持ってもう一度巻き戻ったとしたら、こちら側は実弥が敵対心を持っていると知らない状態で最悪実弥に陥れられる可能性だってでてくるの。
そう考えると元々敵対心を持ったりしていない限り、また巻き戻ったとしても実弥は錆兎に心を許すからある程度本音も話すだろうしこちらも対処しやすい。
…ってことでね、いつだれが巻き戻るかわからない状態だと極力敵対する人間を作らないのが正解なんだけど……」
と、真菰はここで困ったように眉を寄せた。

そして
「ずっと今みたいな状態でちょっかいかけられ続けるのもそれはそれで困るよね」
と続ける。

しかし錆兎はそれに対してはさして困った様子も見せずに
──それに関しては思うところがあるんだが…
と淡々とした口調で言った。

──思うところ?
揃って首をかしげる真菰と宇髄。

それに錆兎はなんと
──実弥に義勇を諦めさせるんじゃなくて考えを変えさせるのは案外難しくはないと思うんだが…
と、驚くべきことを言いだした。








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