これは真菰だけ…いや、あるいは不死川は気づいただろうか……
鬼の動きが巻き戻り前と微妙に変化している。
上弦の弐…童磨は、万世極楽教という宗教団体の教祖をしている。
それは前世で霊体だった時に知っていた。
他の鬼と違って”食事”もほぼ教団の信者の女性ですませていたらしく、本当に関わる事がない。
ところが最近、彼は信者の小説家に不死川を悪役にした小説を書かせてばらまいているらしい。
当たり前だがそれは彼の上司である無惨の指示だろう。
おそらくそれが今の彼の最優先事項のようだ。
鬼殺隊や彼女の周りの人間には幸いなことに、童磨は次々と出される無惨の要望を聞いてその要望を入れた小説を書かせるべく小説家達とやりとりをするのに忙しいらしく表に出てこないため、前世でカナエが殺された時期を過ぎてもカナエと遭遇していない。
これ…どうなってるの??
と不思議に思った真菰は仲間が書き写してくれた万世極楽教の信者の書いた小説を持って錆兎の部屋へと駆け込んだ。
そこにはすでに、童磨の事は知らなくとも、最近不思議なことに真菰の仲間の女性隊士達以外の一般人が書いている錆兎と義勇の小説を手に尋ねて来た宇髄が居る。
そして何故か
──不死川の事なんかどうでもいいからもっと俺と錆兎の事を書いてくれればいいのに…
と、どうやら不死川の悪事部分が小説の中心であることに不満げに膨れる義勇の姿もあった。
──あ~、真菰。そろそろ来る頃だと思った。これ、どう思う?
と錆兎が宇髄が持ってきた冊子を1冊手に取ってひらひらさせる。
──何故やつがこんな事やってるのか全く意味がわからん。
と言う錆兎の言葉に真菰が答える前に、義勇がぎゅっと両手の拳を握り締めながら、
「無惨もやっと錆兎の素晴らしさがわかって、錆兎に迷惑をかけてばかりの実弥を怒りたくなったんだっ!そうに違いないっ!!」
と、超解釈を披露して、錆兎に深いため息をつかせた。
横では宇髄が爆笑。
それに不満げな顔をする義勇に、真菰は
「うん、そうだね。それもあるかもね。
実弥は本当に錆兎に対して恩をあだで返しまくりだからね」
と同意してやって、とりあえず宥めて静まらせる。
そうして義勇が満足げにうんうんと頷いたのを確認。
その後、本題に入っていった。
「たぶん…無惨は自分が手に入れられないでいるものを自分が認めてない人間が嘘でも手に入れる話とかされるのが腹立つんだろうね。
気位高そうだし。
今生で手に入れるのは諦めてるなら余計にじゃない?
てことで…八つ当たり的な何かもあってイライラを実弥にぶつけてるって可能性に一票かな?」
「あ~やっぱりそう思うかぁ…。
俺もお花姉ちゃんの考えに一票だわ」
と、宇髄が軽く手を挙げて同意する。
それに錆兎はホッと息を吐きだした。
「…ならいい。…というか、どういう形であれ、奴の関心が義勇から逸れるのは良い事だ。
実弥は少しばかり災難ではあるが、曲がりなりにも義勇の事が好きだと公言するなら、義勇を守れて本望なはずだ」
そう言ったあとに、──それが嫌だと言うなら義勇を本当に好きとか俺は認めん!俺なら義勇に害が行かなくなるなら喜んで受ける──と、もう900年来の義勇強火担に相応しい言葉を吐く。
それに義勇が──錆兎っ(はぁと)──と言った風な目を錆兎に向けるのもお約束だ。
そして…横で他人事のように爆笑しているが宇髄も実は錆兎やお館様のためだったら同じようにするのだろうと真菰は思っているので、他人事ではないだろうと突っ込んでやりたいがとりあえず空気を読んでその言葉を飲み込む。
そう、かくいう真菰だって鱗滝さんや弟弟子達のためなら同じなのだから。
まあでもとりあえず、邪魔な二人が互いにけん制し合ってくれるなら、それに越したことはない。
無惨の側の小説は錆兎と義勇の恋愛よりも、他にも色々迷惑をかけている実弥に焦点を当てて書かれていて、なかにはそのあまりの悪逆非道ぶりに自らは身を慎んで愛する義勇を見守っている優しい鬼の頭領が陰からこっそりフォローしている…というような小説すらある。
この優しい鬼の頭領というのはもちろん無惨のことだ。
──…目くそ鼻くそを笑うってやつだな…
と、しかしそれはプロが書いているだけあって不死川のものより数段読みやすい冊子を読みながら言う宇髄に、錆兎はため息で返しながらも
──…外ではそれ言うなよ?一応無惨に関しては現状無害なんだから
と言う。
そして最後に
──せっかくだからな…状況変化を加味しつつ出来るだけ皆が平和で楽しい未来になるよう考えてみよう。
と自身も万世極楽教発の小説を読みながら、錆兎はそう言って考え込んだ。
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