諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_69_昔々1

──今から900年ほど前のことだ…
と言う言葉で錆兎の話は始まった。

無骨者だから…と言う言葉が口癖の彼だが、そこらへんは実弥のような無骨に加えて無教養な者とは違う。
耳障りの良い朗々とした声で語られる錆兎の昔話は、正直宇髄のソレよりもよほど面白かった。

──俺は渡辺綱の次男の一人息子として生まれたんだが、当時はなんというか…
──なんというか?
──調子に乗った子どもだったと思う。

色々を思い出しながらそう語る錆兎に実弥は噴き出す。

──調子に乗った錆兎ってのが想像つかねえわァ
と言えば、錆兎は苦笑。

「英雄の孫として生まれて、長男家の子を差し置いて優秀だから家を継げと言われたからな。
なんでも許されると勘違いしていたし、実際にたいていのことは許されていた。
確かに渡辺の家は当時、年功序列じゃなくて能力の有無で跡を継がせるという家だったんだが、それを言われたのは俺が確か5歳くらいの頃だったと思うから、何が他と違ってるかなんてその年でわかるとは思えんのだが…とにかくそう言われて、宗家の跡取りとして育てられたんだ」

錆兎は今でも本当にわからんと首をかしげているが、実弥にはわかる気がする。
世界の主役として生まれ落ちる人間と言うのは確かに存在していて、錆兎は幼くともそんな者だけが持つ絶対的な輝きを有していたのだろう。

それを口にしたところで本人には自分が醸し出す空気と言うのは生まれながらに持っていて当たり前のものなのだろうし言ってもわからないだろうからと、実弥はそこには触れないでおくことにした。

実弥がそんなことを考えている間にも錆兎の話は続く。

「渡辺は四天王のまとめ役、筆頭家だったから、親戚はもちろん、他家の大人相手でも普通に話していたしな。
英雄だった爺さんたちは隠居して滅多に公の席には出てこないし、もうやりたい放題だ」

わははっと笑う錆兎はなんだかいつもの人格者ではなく、少年のような顔をしていた。
転生が始まる最初の人生の話らしいから、おそらく当時は本当に能力はすごいが精神は少し賢いだけの普通の少年だったのだろう。
それが何度も生まれ変わるうちに色々と削れて来てしまったのかと思うと、少し気の毒な気もする。

「義勇に出会った日は10歳の時。
当時有力貴族…娘が東宮の正室なくらい高貴な家だったお館様のご実家の梅を愛でる宴でな。
ぶっちゃけると宮中での権力争いのために英雄の名を借りたいという下心の産屋敷家に招かれて、四天王家の主な人間達が集まっていた。
まあ…四天王家で何か集まる事があれば顔を出さされていた俺にとっては主催のお館様以外はほぼ親戚のオヤジ達の集まりみたいな感じだったがな。
渡辺の面々は主である源と他の四天王3家との調整役を担っているから良くも悪くも落ち着いていて、碓井はそれに意味があるのかわからんが自分達が渡辺に次ぐ次席だという自負を持っていて少々気位は高い連中だが卒がなく整った顔の人間が多い。
坂田は金太郎の名で有名な男の子孫達だからかやや単純で荒っぽいが逞しく頼りになる男達だった。
そして最後、卜部。
弓の名手で後ろに下がることの多い四天王の卜部の爺さんは、その立ち位置に似合った繊細で用心深く…しかし冷静で強い男だったが、息子達はやや騒々しくてその血をあまり濃くは継いでいないように見えた。
まあ当時の四天王家はそんな感じ。
で、お館様と宇髄に関しては初対面だが、他に関してはほぼかつて知ったる顔ばかりなはずだった。
酒宴で大人の集まりだが俺は次期当主として出席しろと言われて出ることになっていたというのもあって、子どもは俺だけかと思っていたら、卜部の当主の隣にちょこんと愛らしい童が居てな。
どこか透明感があって繊細な感じで…少し潤みかけた大きな青い目で不安げにその場のあちこちに視線を向けていた。
その童が義勇だ」








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