諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_57_見えぬ強敵

──では…無惨が義勇に接触しようとするなら耀哉様が対処して下さるということで静観します。

あまり気は進まないようだが錆兎は折れた。
ため息交じりにそう言うと立ち上がろうとする。

それに耀哉が読めぬ笑顔で
──いいのかい?
と声をかけると、またため息。

──俺は大将ではあっても御上ではないので…
と明言を避けながらもそう意思表示をして、今度こそ一礼をして部屋を出た。

──天元、頼むね。
と、それは止めはせず見送って、耀哉はその代わりに宇髄にそう声をかける。

──御意。
と、それだけで己のすべきことを察して宇髄はすでに廊下を歩く錆兎を追った。



──大丈夫だ。気にしないでいい。不満なら真菰と義勇を残してきたりはしないから

宇髄の足跡だけで追ってきた理由を判断したのだろう。
錆兎はぴたと足を止めて宇髄を振りむくと苦笑する。
それに宇髄は安堵のため息をついた。

それを見て錆兎は笑う。
そしてその笑みを見て、それが本心であることを宇髄は悟った。

──お前、本当に本心見えねえからなァ…
──そうか?
──そうだろ?不死川の事とか…。普通、自分の恋人にちょっかいかけられるだけでキレっだろ。

そう、今回の不死川の一件では錆兎は一貫して義勇が嫌がらなければという条件付きではあるが、義勇にちょっかいをかけたがる不死川を許容しているように見える。

そこが宇髄には理解できないし、これまでの900年ほどの付き合いの中での錆兎の義勇への愛情を見ていると、本音がわからない。

そして…本音がわからない以上、何が地雷になるのか予測がつかなくてさすがの宇髄も不安になった。

しかしそんな宇髄の心の内も長い付き合いだけあって察しているのだろう。
錆兎はポン!と宇髄の肩を軽く叩いて言う。

──俺は譲れないところは絶対に譲らない男だ。宇髄は知っているだろう?

暗に飽くまで主張すること以外は気にしなくて良いと言っているのだという事は理解できるのだが…と、それでも落ち着かない宇髄がどう答えようか迷っていると、錆兎は笑う。
邪気のない様子で笑った。

「えっとな…正直今生ではすでに義勇の行動は全て俺の管理下だし、なんならどこに行くのも連れて歩くから、不死川に関しては義勇の意に沿わない事は出来ないし、奴が何を言ってもしようとしても大丈夫だと思う。
で、義勇の意に沿わなくない事で俺と距離ができる可能性はと言うと、それもまずないと思うしな。
俺ほど義勇の事を理解している人間は他に居ないと自負しているし、900年の知識と経験を持って俺は常に全力で義勇の気を惹こうと努力し続けているわけだから、さすがにそれに勝てる奴はいないだろう?」
「あ~…そういうことな」
と、そこで宇髄は理解した。

言われてみればそうだ。
錆兎は義勇が好きなものも嫌いなものも知り尽くしている。
そのうえで容姿が大変宜しくて様々な事に対する能力が高くて…そして何より全力で義勇に尽くして義勇の望むことを叶えてやるのが趣味と言うくらいの男なのだ。
義勇の気持ちを掴むことにかけてはこの男に敵う奴などいるはずがない。

「なるほどな。絶対に取られたりする可能性がないなら相手があがくのを生温かい目で見ていられるよな」

この900年と少し、錆兎も義勇一筋ならそれに負けず劣らず義勇も錆兎一筋で、微塵も揺らいだことがないのだから、相手を守る力があるならもう何も心配することはないのだろう。

宇髄はそう思ったのだが、錆兎はさらに
「まあ万が一義勇の気持ちが動くことがあったとしても俺は動かないのだから、その時はまた全力で努力を重ねて義勇の気持ちを奪い返すだけだしな」
と、にやりと笑って宣言した。

はたから見ると義勇の方が錆兎に強く執着しているように見えるが、気持ちをそのまんま駄々漏らしている義勇よりも、絶対に譲る気のない執着を表にはほぼ出さない錆兎の方が敵対すれば恐ろしい気がする。

まあ宇髄は元々そんな気は微塵もないわけなのだが、うっかり義勇に気持ちを持ってしまった不死川はご愁傷様というところだと、宇髄は錆兎と義勇を鉄板とする女性隊士達やこれから参戦するかもしれない無惨など実は可愛いものだと気づいてはいない彼にさすがに多少の同情を覚えたのであった。









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