──なんだか壮絶に面白いことになってきてるね
とある日、呼び出された産屋敷邸の一室で、錆兎と宇髄、そして真菰を前に、お館様こと産屋敷耀哉様がにこやかにのたまわれた。
真菰と義勇はきょとんとしている。
そして最後の一人、錆兎は
──これがでてくるのが嫌で穏便な形で早急に片をつけたかったのに…
と、大きく深いため息をつきながらうんざりしたように言った。
その落胆ぶりに、お館様はにこにこと
「いや、これを読む限りはそう悪い状況でもなさそうだよ?
月哉…無惨にしては状況をよくわかってる」
と、自分宛と錆兎宛に届けられた二通の手紙を錆兎に差し出した。
錆兎がそれに目を通している間、お館様は今一つ状況のわかっていない…つまり月哉としての無惨の記憶がない真菰と義勇に説明をして下さる。
「天元からある程度は聞いているかもしれないけど…無惨はね、元々は人間で平安時代には私の親族だったんだ。
それで人間だった頃にね、義勇をたいそう気に入ってね。
言い寄ってはみたんだけど義勇には錆兎が居たからね、全く相手にされず。
鬼になってから一度義勇を誘拐するのに成功したことはあったんだけど、その時は義勇に自害されて、まあなんというか…強引に出ても無理だと悟るとともに、その頃に私が鬼殺隊を作って妥当無惨を掲げ始めたこともあって、義勇にちょっかいかける余裕がなくなっていつかはと思いながらもとりあえずは先送りにして今に至るという感じなんだ。
錆兎、そろそろ読み終わったかい?」
と、さらっとそこまで説明をしたあと、耀哉様は錆兎にそう声をかけた。
それに錆兎はまずまたなが~~いため息で応える。
「要は…無冠のどこの馬の骨ともわからない奴に義勇の所有権を主張させるな。
お前が責任を持って否定しろ…って…お前が言うな、お前が!って言う内容ですね」
錆兎の言葉に耀哉様が笑顔で頷き、宇髄が爆笑する。
「そうそう。私のには管理責任という文字を心の辞書に大きく書き込めと書いてある。
まあでも…少し突けば意外に無惨の方から何か動きがあるかもしれないし、面白いから少しだけ放置してみようかと思うんだけど、どうかな?」
──放置…ですか……
以前、油断が元で一度義勇を失くしているのでそれが怖い…。
が、お館様はどこか自信ありげで何か考えがあるようだ。
──天元にね、真菰から聞いた話を私も聞かせてもらったんだ。
ちらりとそこで宇髄に目をやるお館様。
そして視線を真菰…そして義勇に向ける。
「彼女が巻き戻る前に見て来た世界では確かに無惨は倒せたけど犠牲も大きかったと聞く。
私はね…まあいいんだ。
死んでもどうせまた転生するんだろうし、君も義勇も天元も…記憶がなかったとしても真菰もね。
でも他の子達はこれきりの人生だ。
私は短い間だとしても私の子ども達全員に幸せに天寿を全うして欲しいんだよ。
無惨が感情的になって判断を誤ってくれれば付け込む隙ができるかもしれないだろう?」
そう言うお館様の声音は確かに慈愛に満ちている。
だがそれに続く
「無惨がキレれば皆の生存率が上がって皆が幸せ。さらに私が楽しい。
最高だと思わないかい?」
と言う言葉で全てが台無しだ。
そこで耀哉様に対してはまたため息。
錆兎はちらりと意見を問うように真菰に視線を向ける。
それに気づいた真菰は2本の指を鼻と顎に当てるいつものポーズで少し考え込むと難しい顔のまま
「確かに巻き戻る前の世界では義勇と実弥以外の柱全員が亡くなってて、その二人も寿命が短くなる痣の影響で24で亡くなってるからね。
今生では私が上弦の情報をかなり持ってるから準備はできるんだけど、無惨をおびき寄せるのはやっぱり難しいから…。
そのあたり実弥をおとりに出来ると思えば悪くはないんじゃないかな?」
と言う。
なるほど。
確かにそれはそうだ。
実弥をエサにおびき寄せれば万が一失敗したところでお館様を標的とした時と違って代わりがきく。
義勇に関しては少なくとも無惨は今生で手中にするのは諦めているようだし、そうでなくとも実弥を排除するということでひと手間おけるだろう。
どう転んでも悪くはならないのか…と、そんな風に納得していると、そこで真菰もトドメににっこり
「勝利に近づく手段が一つ増えて、あの馬鹿に苛つかされたあたしも少しだけすっきりできる。
最高じゃない?」
と、こちらも私怨満々で言うのに、錆兎はまた深くため息をつくことになった。
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