諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_55_怒れる無惨

──錆兎はさ、性善説で生き過ぎなんだよね~。
──だなっ。つかここはブチキレて相手殴りに行くとこだろっ。
──殴らないまでもさ、とりあえず回収したなら戻さずに全部燃やすべきっしょ!
──公平さを愛するお殿様だからな、やつは。権力使った方法は宜しくないとか、もう馬鹿かとっ!力なんて使ってなんぼだろっ!

街のど真ん中の甘味屋で、あんみつと団子を前に美少女と美青年が喧々囂々と話しているのは嫌でも人目を引く。

どちらも同じ黒の…しかし微妙に形が違う隊服を着た男女。

キラキラとした額当てに派手な化粧をした大柄な青年は筋肉粒々。
一方でその正面に座る相手は頭に狐の面を乗せていて羽織も可愛らしい桃色の地に花柄と、その華奢な体格もあってどこか少女じみた感じがする。

世を忍ぶつもりは全くなく、隊士達がよく利用するこの店で堂々と同僚と上司の愚痴ともなんとも言えない不満を口にするのは、言うまでもなく宇髄と真菰の二人だ。

まず二人して顔立ちがよくて目立ち、体格さで目立ち…元々隊士の中では有名人なのでさらに目立つ。

そんな二人が声を潜めることもなく話している話題がこれまた有名人の水柱の錆兎の事なので、周りがその会話に注目するのは当然と言えば当然のことだ。

錆兎の対応の甘さに対する文句を言いつつも、宇髄は甘い物からしょっぱい物まで様々な味の団子を、真菰はあんみつや汁粉など甘い物をモリモリと食べる。

それを遠目に見ながら同じく甘味を突く女性達。
それには何故か隊士のみならず、一般の町娘たちも混じっていた。

そう、鬼殺隊のおひざ元のこの街では鬼殺隊士も認知されていて、なかでも困ったことがあればいつもにこやかに相談を受けてくれる水柱を含む数人の柱はかなりの人気者だ。

そんなみんな大好き素敵な水柱様に迷惑をかけている不届き者が居るとなれば、隊士よりも数も多くまた、時間もある町娘たちも黙っちゃいない。

そして噂が噂を呼んで、その噂が実にとんでもない所からとんでもない所へと流れていく。
もう真菰や宇髄ですら思ってもみなかったあたりへ……

そう…例えば……某宗教を信じている娘たちからその教祖…そしてその教祖からその上司あたりへ…?



──これは一体なんなんだっ?!!

スポ~ン!と偉いはずの教祖の頭半分を吹き飛ばしたのは、その教祖の上司に当たる鬼の頭領だった。

吹き飛ばされた頭を即復元した教祖…もとい童磨は鬼の最上位とされる12鬼月の中でもさらに頂点に近い上弦の次席である。
そしてその彼は相も変わらず感情のこもらない笑みを浮かべて頭を掻く。

──いやあ、うちの信者が見つけてきまして…
とへらへら言う彼の頭を無惨はまた怒りのあまり吹き飛ばした。

童磨は鬼だけにそれも堪えることなくまた復元すると
──いま、うちの信者…特に女性の信者の間で大炎上案件なんですが…
と言い終わる前にまた吹き飛ぶ頭。

──ええいっ!忌々しいっ!義勇は私のものだが…一時だけでも預けてやるならせめて有名貴族か英雄だっ!こんなチンピラに所有権を主張させるなど、耀哉は何をやっているっ!!

地団太を踏む無惨。
そう、彼もまた平安の頃から義勇を追いかけまわしていた一人ではあるが、昨今は生き延びるのに忙しく、それどころではなかった。

だがだからと言って諦めたわけではない。
いつか、いつの日かっ…と思い続けてはいて、その日まではもう平安の最初の出会いからずっとその手元に置いてあったものなのだからと、当時卜部の孫だった義勇が所属していた頼光四天王の家系の中でも筆頭家系の嫡男であった錆兎に預けておくしかないと妥協していた。

少なくとも奴は自分ほど尊い身分ではなくとも平安の貴族の流れを汲む英雄の血筋で、自分が一時的に預けてやっていると思えば我慢は出来た。

それがなんだ?これはなんなのだ?
どこの馬の骨ともわからないチンピラに勝手に所有権を主張されるなど、あっていいことではない。

──紙と筆を持てっ!!!
と、童磨を完全に無視して無惨は傍に控えていた鳴女に申し付ける。

そうして彼は書いたのである。
自分の宿敵である鬼殺隊の頭領の産屋敷耀哉と、自分の恋敵である渡辺錆兎、それぞれに対して怒りに満ちた苦情の手紙を…








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