──宇随、頼むっ!!ほんっとに今度こそバカやらねえからっ!!
小学生時代からの幼馴染二人。
どちらも宇随にとっては大切で、どちらも幸せになってほしいとは思っていた。
だからそのうちの一人、不死川に土下座されて、それだけの覚悟があるならと協力したのだが…これは……
自分で言うのもなんだが華やかなイケメンで仕事も当然できる出世株でもあった。
そんな人間だから男女問わず人気者だ。
だがどれだけ大勢の人間に囲まれていても彼はきっちりと線引きはしている。
友人と知人、そしてそれ以下。
もちろん前者から優遇する。
表面上では優遇された相手が周りに過剰に妬まれて嫌がらせを受けたりはしない程度ではあるが、心の中と裏ではそれはそれはきっちりと、彼の脳内の序列に従って超えられない壁があった。
その友人の中でも特に優先度が高い人間が3人ほど。
そのうち2人は小学校の同級生で片方の不死川実弥はもう一人の冨岡義勇にずっと片思いをしている。
まあそれはいいのだが、小学生男子といえば素直になれない代表格のようなもので、好きな相手だからこそ意地悪ばかりしていた。
ゆえに義勇からは避けられていて、宇随を通してかろうじてつながっている状態だ。
もちろん実弥だってこの状況を打開すべくあがいてはみた。
…が、言葉や態度の粗暴さはそうそう簡単に変えることはできず、そうなると避けられている状況を変えるのは難しい。
ということで悩んで悩んで悩みぬいた挙句に思い付いたのは、
【ザ・嘘から出たまこと作戦!!】
である。
宇随と3人でカードゲームをして一番負けた人間がOKをもらえるような告白をするという罰ゲームをする、というものだ。
宇随にはあらかじめ
『俺がゲームに負けることなんてねえから自分がするってことはないとして、OKもなかなか出さねえぞ』とでも言っておいてもらえば、義勇が負けた時には自分に告白をするだろう。
その時にはなし崩し的につきあってしまえばいいし、自分が負けた時には義勇に告白。
まあカードゲームで宇随が負けることはないだろうが、極力宇随が負けないようにこっそり協力をしつつ、万が一宇随が負けた時にはまた同じことをすればいつかは宇随以外が負けるだろう。
そうなったら告白をしてもされても本気だと押し切ってつきあってしまえばいい。
自分ではいいアイディアだと思ったのだが、それを宇随に言うと
『お前なぁ…普通に告白すりゃあいいだろ』
とあきれられた。
…が、真面目に話そうとしても逃げられてしまって告白どころか二人では話もきいてもらえない。
でもどうしても好きなのだ、つきあいたいのだ。
つきあってくれたなら絶対に大事にするつもりだと土下座をして頼んだら、もうかれこれ10年以上にわたる実弥の片思いを見続けてきた宇随は、気は進まないようだがなんとか了承はしてくれた。
…ということで、宇随の音頭で罰ゲーム付きカードゲーム大会…もとい【ザ・嘘から出たまこと作戦!!】が決行されることになったのである。
週末の仕事帰りの個室居酒屋で宇随主催の3人飲み会。
そこで適当に宇随の恋愛手腕の見事さを持ち上げて、
「やっぱり俺らとは一味違うんだよなぁ。
なぁ、宇随。
ちょっとOKもらえる告白のセリフとか言ってみてくれぇ」
とかいう方向から、宇随に
「あぁ?俺の聞くよりてめえが普段どうやって口説くのか言ってみろよ。
このモテ神様が採点してやるよ」
と持っていってもらい、それならカードで告白の言葉を言う人間を決めようと、実弥はあらかじめ忍ばせておいたトランプを出す。
「ってことで負けたやつは罰ゲームとして告白してOKもらうこと」
と強引に話を進めた。
義勇が異議を唱えようとするのを聞かずにカードを配り、手っ取り早くポーカー勝負に持ち込むと、
「まあまあ。3分の1の確率のお遊びだから、そう固く考えんな」
と、宇随がさらに流してくれる。
そして
「ま、俺は口説かれなれてるから簡単にはOKはしねえけど、実弥だったらどんなセリフでもありがたくOKすんじゃね?」
とふざけた様子で言いつつ手際よくカードを配る宇随。
そうして結果……義勇が負けた。
呆然としている義勇に気づかれないように目配せしてくるところを見ると、どうやら宇随は配る時に細工をしてくれたらしい。
「まあほら、言い出しっぺなんだから実弥も断ったりディスったりはなしな?
楽しく進めて楽しく飲むぞ」
と暗に後押しをしてくれるのもありがたい。
「あ~…まあそれは、な。
俺だって慣れてるわけじゃねえし?
冨岡が宇随みてえな本当にOKもらえるようなすげえ告白してくることは期待してねえよ」
と、実弥もそれを受けて促す。
これでどんな拙い言葉だったとしても義勇から好きだ、つきあってくれというたぐいの言葉が出たなら、
「おう!俺も好きだし、つきあおうぜぇ」
と素直に答えてハッピーエンドだ。
ということで、わくわくとした目を義勇に向けてその言葉を待った実弥だが、義勇はなぜか
「…わかった…」
というなり財布を出して自分の分の金を出すとおもむろに立ち上がった。
…え??
想定の範囲外のその行動に実弥だけじゃなく、宇随も唖然とする。
そして二人して固まっている間に義勇はそのまま部屋を出て行った。
え?え?
「…と、トイレ…かァ?」
義勇が消えた扉を呆然と眺めていた実弥が宇随にそう問いかけると、宇随は、ハッとしたようにしまったっ!と自分も立ち上がる。
「な、なんだァ?」
「たぶん…たぶんだが、冨岡は罰ゲームを俺かお前に告白するということじゃなく、”誰かに告白してOKをもらってくること”ってとらえたんじゃねえか?!」
「まじかっ!!!」
そういえば…『負けたやつは罰ゲームとして告白してOKもらうこと』といった気がする。
自分達のどちらかに告白してとは言ってない。
やばいっ!!
と一瞬焦ったが、実弥はふと冷静になった。。
「…あいつ…どんくせえから告白なんてできそうなにねえし、相手もいねえし、いたとしてもOKもらえるようなセリフ吐けるんならあんな風に孤立してねえだろうから、大丈夫だろ。
そのうち『ダメだった』って泣きついてくるだろうから、そうしたら『じゃあ俺に言ってみろ』でいいんじゃね?
少し回り道になるかもしれねえけど、それで問題ねえだろォ。
ってことで、恋愛成就の前祝いってことで、飲みなおそうぜぇ」
そう言ってグラスに手酌でビールを注ぐ実弥に宇随はなぜか複雑な視線を送っている。
「…なんだぁ?」
と聞くが、宇随は小さく首を横に振ると、
「いや、お前が放置って決めたんだからな?自己責任だぜ?」
と自分も手酌でビールを注いで、それを実弥の掲げるグラスにチン!と軽く押し当てた。
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