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「そろそろやんな」 サンサークルの都を出てから数日…。 いつもよりは随分とゆっくり着いたのは東の中規模の街、イーストウッドの都。 城砦都市として有名なこの街は、魔人からの攻撃から数日。 なんとぎりぎり持ちこたえていたらしい。 『もうダメだ。東門が破ら...
「大丈夫?疲れてへん?」 宿の部屋に落ち着くと、アーサーを椅子に座らせて、アントーニョは人前では脱がないように…と念押しして着させたマントのフードをそっとおろさせた。 そのうえで、いつものようにコツンと額と額をくっつけて、 「ん、熱は出てへんな」 と、確...
夜…ギルベルトと組んでた頃は当たり前に睡眠は馬の上だったが、今回は大事な可愛いお宝ちゃんを連れているので、最寄りの村に寄り、きちんと宿を取る。 ギルベルトはポカン…とした顔をしていたが、文句は言わせない。 病み上がりのこの子に無理をさせるくらいなら、魔人退治など断固...
ギルベルトとの長距離移動…… それはアントーニョにとって珍しい事ではなかった。 なにしろアーサーとキクが来るまではギルベルトとペアを組んでいたのだ。 魔人が出現した地域が遠ければ当然移動も長距離になる。
こんなやりとりをするたび、やっぱりアントーニョは名称だけじゃなく、心根が本当に聖騎士なのだなぁとアーサーは思う。 面倒でも迷惑でも、相手が守るべき対象、弱い人間であるなら、こんなに心の底から守ろうとしてくれるのだ。
こうして哀れな社畜…もとい国畜が帰ったあと、ついたての奥にいるようにとの指示を守ってじ~っと息を潜めていたアントーニョの愛し子は、ひょこっと可愛らしい小花模様のついたての陰から顔をのぞかせた。
「まだ病み上がりのあの子をもうこき使おうなんて、鬼やな。可哀想に…。 コンペイ党以下の鬼畜の所業やで」 こうして本来の自分の仕事でもなく、さらに言うなら休暇中のはずなのに使い走りをしているギルベルトに返ってきたのは、同僚の冷ややかな視線と言葉。
「はあ?あほちゃう?」 それが出動命令を伝えに来たギルベルトへのアントーニョの第一声だった。 「そんな遠い所まで病み上がりのアーティ連れて行け言うん? ギルちゃんが行ったらええやん」 「いや…俺様達はお前らが出動出来ない間ずっと出動組だったから、いい加減休暇...
ズルズルとベッドの横まで椅子を引きずっていき、小さく浅い呼吸を繰り返す少年を見守りつつも、ああ…可哀想な事をした…と、思う。 聞いたところによると 15 歳らしいが、どう見ても 12,3 歳にしか見えない。 下手をするとさらに 1,2 歳は幼く見えるだろうか…。 ...
そして…その翌日…… 姐さん: 皆、久しぶりっ!ちょっとこのところ忙しかったから報告が遅れたわね。 実は初日、天使君熱出しちゃったのよ。 で、私達もその分戦闘に駆り出されることが多くてね。 一人旅が思いのほか疲れちゃったのかしらね。
「お前な~皆して新人怯えさせんなよ」 と、いつのまにやらそこにいて、身を乗り出したエリザの腕をつかむ銀髪の男の方にふと視線をやった瞬間… 「なになに?そんな可愛いの?トーニョもしかしてもう食べちゃった?お兄さんも味見~」 と、ヌッと後ろから伸びてきた手がアーサー...
そういえば…ずっと体調を崩して部屋にこもっていたため、部屋の外へ出るのも10日ぶりだ。 あの時はキクと二人、案内役の使用人に付き従われてここまで来たわけだが、今隣にいるのはあれほど憧れたアントーニョだ。 しかもきっちりと礼装をした…。
キク…は、アントーニョの同僚のエリザという女性とコンビを組むことになったらしい。 時折、連絡用の水晶球で連絡をくれる。 このエリザという女性は前衛系の聖騎士同士ということもあり、アントーニョとも親しいらしく、時折アーサー達の部屋を訪ねてきていたので、すでに知り合いだ...
「トーニョ、これ……」 今日は伝説の武器の使い手…通称聖騎士達の顔合わせがてらアーサー達の歓迎会が開かれるらしい。 それは知っていたのだが、実はアーサーは家出同然…というか、家出そのもので実家を飛び出てきたため、持ち出せたのは最低限の実用品のみで、礼装など持ってきて...
こんな感じで顔を合わせると過程しただけでもこの騒ぎである。 当然実際に顔を合わせる当日は大変だ。 一応…アントーニョには釘をさして置いたものの、万が一があってフランシスが欠ければ楽しく趣味に費やす休日が減ってしまう…もとい、仲間の命は大事にしなければということで、エ...
こうして医者が安静と言った期間が終わると、今更ながら新メンバーとの交流を図ったほうがよかろうということで、ローマ主催で歓迎会が開かれる事が決まって大騒ぎだ。
――アーサーが熱を出した。 最初…いきなり赤い顔で倒れた時には動揺した。 医者を呼んでオロオロ部屋の中を歩きまわって…もしあの子に何かあったら腹いせにフランとギルを八つ裂きにして、自分も死のうと思うくらいには…。
寒い…喉が痛い…なんだか関節も痛い気がする…。 それでも痛みの方はなんとか耐えられたが、寒さだけはどうしようもなく、アーサーはベッドの中でブランケットをかき集めて縮こまった。
爺: 皆様お待たせしました。誘導成功です。 たった今…爺は天使君がアントーニョさんの部屋へ入っていくのを確認。 今のところまだアントーニョさんは部屋に戻ってないもようですが…戻った時に何が起こるのか楽しみです ((o( ´∀` )o)) ワクワク
そんな相手に無理をさせて優しくさせているのも申し訳なくて下を向くと、さらに落ち込んだと思われたのだろうか、そのたくましい腕でぎゅっと抱きしめられる。 お日様と…ムスクか何か香水の匂いがする。 厚い胸板。 アーサーより高い体温。 そこにはなんと信じられない事に8年前に渡...