ショタペド戦士は童顔魔術師がお好き【第二章】4

こんなやりとりをするたび、やっぱりアントーニョは名称だけじゃなく、心根が本当に聖騎士なのだなぁとアーサーは思う。

面倒でも迷惑でも、相手が守るべき対象、弱い人間であるなら、こんなに心の底から守ろうとしてくれるのだ。


だからこそ…と思う。
せめて戦闘になったら精一杯頑張ろう。
何かあったら自分の身にかえてもアントーニョを守るのだ。

世の中のため、こんな素晴らしい聖騎士を万が一にでも失わせてはならない。
どう考えたって優秀な戦士である上に聖騎士にふさわしい人格者であるアントーニョの方が自分よりもこの世界にとって大切だ。

…そんな事をアーサーが考えていると万が一にでもアントーニョが知ったなら、悲鳴をあげて止めること間違いなしだが、アーサーは当然そんなことは知らない。

ショタペドを取ったら何も残らない男…そう呼ばれているこの聖騎士にとって、童顔魔術師の身の安全その他よりも優先すべき事項など、何もないのである。

なので日課のアーサーの体調確認で少しでも具合が悪そうな様子があったなら、ギルベルトが胃をキリキリと痛めながらも交渉に来て了承した出動ですら覆そうと思っていた。

しかし幸いにして特に具合も悪そうではないので、まずは朝はゆっくりたっぷり食事を摂りたい派であるアーサーのために美味しい朝食を用意し、キッチンのすぐ横のダイニングスペースのテーブルにそれを並べると、いつものようにそれを本当に可愛らしい顔で美味しそうに頬張るアーサーの顔を堪能しながら、アントーニョは話を始める。

「ほんまはもう少しこうしてゆっくりさせてやれたらええんやけどな、フランのアホが仕事サボりたいってストライキ始めてん。
あいつほんまに聖騎士の自覚あらへんねん。
せやから病み上がりで可哀想なんやけど、俺らが出動するしかのうなってしもうてな。
親分的には体調万全になるまで休ませてやりたいねんけど、それ伝えにきたギルちゃんがあんま申し訳なさそうにするさかい、断り切れんくなって、堪忍な。
その代わりギルちゃんはちゃんとサポートに付くっていうとるから、アーティが危なくないように護衛してもらうさかい、なんも怖い事ないし、安心したってな。
まあ戦闘自体は親分だけで十分やし」

とうとう出動かっ!!
緊張はするものの、ようやく役にたてるとホッとするアーサー。

しかしアントーニョはさすがに優しい。
相方がサボってしまって困っている同僚を助けてあげるなんて…

それに比べてあの髭…フランシスは困ったものだ。
確かに顔合わせの日にもアーサーにちょっかいをかけてからかってきたりと、軽そうな男だった。

そんなことを思いながら、アーサーはキラキラした目をアントーニョに向ける。

自分が少しでもこの素晴らしい聖騎士の手助けにでもなれれば幸せだ。

あの8年前の祭りの日…いつもいつも暗かったアーサーの人生に突然降り注いできた光、それがアントーニョだ。

それからのアーサーの生きる意味なんてアントーニョのためだけにあったようなものだ。
あのキラキラした聖騎士様のために生きて…そして死にたい。
それがようやく叶うのだ。

「道々体調悪くなったりしたら絶対に言うんやで?
あと戦闘になったら危ないからギルちゃんの後ろから絶対に出んといてな?」

と、いつものように過保護全開に言うアントーニョの言葉もこればかりはきけやしないのだが、そう言ったら絶対に置いていかれる。

だから
「わかってる。ちゃんと言う事守るから。これまでだって守ってきただろ?」
と、神妙な顔でアーサーは嘘をつくのだった。




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