ショタペド戦士は童顔魔術師がお好き【第二章】1

「はあ?あほちゃう?」
それが出動命令を伝えに来たギルベルトへのアントーニョの第一声だった。

「そんな遠い所まで病み上がりのアーティ連れて行け言うん?
ギルちゃんが行ったらええやん」
「いや…俺様達はお前らが出動出来ない間ずっと出動組だったから、いい加減休暇取れって言われてるからこれなんだけど…」

そう、サンサークルの都に着いた早々、アーサーが体調を崩して1週間もの安静を言い渡されたため、軍の事務方も同条件で都入りをしたキクまで体調を崩さないように休ませようと思ったらしい。

しかし当然ながらコンペイ党の方はそんな聖騎士事情を察してくれることもなく、その間も当たり前に出没する。

なので、当然その間プラス半月ほど、魔人にはずっとギルベルトとフランシスのペアだけで対応していたのである。

そんな日々が続くうち、フランシスがキレた。

そして、いい加減休みを寄越さないなら、もう聖騎士なんてやめてやるっ!とストライキをするに至って、ようやく上層部も妙に線の細い後衛二人の新入りと比べると、どう扱っても大丈夫なくらい頑丈そうに見える二人の疲労に気付いた。

まあ…これがギルベルトのような人間二人なら、文句ひとつ言わずに黙々と出動していたところだが…。


ともあれ、フランシスのストライキでさすがに上層部もそろそろ新人達も動かそうと考えた。

今回は北方にすでに魔人出現の報があり、エリザとキクが向かっていて、そこに珍しく同時に2件目の魔人出現の報が東方より届いたのだ。
これは当然アントーニョとアーサーにふりわけられるのが正しい。

…が、上司も嫌な予感がしたのだろう。
アーサーが城に来てから1カ月弱の時がたつが、もうすでにアントーニョのアーサーに対する溺愛っぷりを知らない者は城に一人もいないと言っても過言ではない。

拗ねてストライキを叫ぶフランシスとショタペド全開モードに入ったアントーニョ…。

どちらがまだ扱いやすいかという議論に入った時、誰もが前者に押し付ける方がたやすいと考えた。


――ただ一人、当のアントーニョの祖父であり、自らも伝説の武器の使い手であり、他の聖騎士を率いている最高司令官でもあるローマを除いて……――


たった一人、されど一人…。
最高司令官殿の決定だ。
鶴の一声というやつで、その任務はアントーニョ達に振り分けられる事に決定した。


まあ本来ならあるべき姿でめでたしめでたし。
社畜ならぬ国畜のごとく1カ月近く休みなく重労働に従事し続けたギルベルトもこれでようやく楽しい休暇へ突入………なはずだった。

しかし何故かその通達はギルベルトへ…。

いわく…

『私達のように一般の人間だと聖騎士様の怒りの矛先を向けられた日には死んじゃいますし…ここは同じ聖騎士で同僚のギルベルト様からお願いします』

ということで、ギルベルトはえらい聖騎士様のはずなのに、断り切れずに何故か使いっぱをさせられていたのであった。

なるべくならサボりたいフランシス、暴走気質のアントーニョ、他に比べたら比較的好対応ではあるが若干変わった趣味に走りがちなエリザと、個性豊かな聖騎士達。

それでも世界の平和を守ってくれているのだから、ありがたい。
ありがたいのだが、直接関わりたくはない…。

そんな風に、割合と真面目一辺倒でお役所勤めだからと職についた国防部隊の事務方達は、一見厨2っぽくふざけているように見えるが、本質的に真面目なギルベルトを、自分達事務方と聖騎士達の橋渡し役とでも認定しているようだ。

なので、ああ…俺様だって、ショタペド全開になったトーニョの相手なんかしたくはねえよ…と言うギルベルトの切実な心の叫びは誰にも顧みられることはないのである。

もう休みなんかいらねえから、出動するから、理屈の通じねえショタペドの相手は勘弁してくれ…と言えたらどんなに良いだろう。
ショタペド戦士への説得よりはコンペイ党の魔人の相手のほうがまだ楽だと思う。

しかし聖騎士とはいえ、しがないサラリーマン。

所詮上司(ローマ最高司令官)の命令には逆らえないのである。


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