キク…は、アントーニョの同僚のエリザという女性とコンビを組むことになったらしい。
時折、連絡用の水晶球で連絡をくれる。
このエリザという女性は前衛系の聖騎士同士ということもあり、アントーニョとも親しいらしく、時折アーサー達の部屋を訪ねてきていたので、すでに知り合いだ。
この二人と上手く交流が持てれば、おそらく大丈夫。
しかしそれでなくても初っ端から体調崩すとかして、おそらく自分達が出られない分、その二人が多く戦闘を受け持っているのだろうから、下手をすれば印象は悪くなっているかもしれない。
頑張らなければ……でももし…相手から悪意をぶつけられたら?
自宅にほぼ閉じ込められていたので、あまり知らない相手と話した事もない上、自宅内で話す相手には良い印象を持たれていなかったため、上手に他人と付き合えるというイメージがわかなくて、ひどく緊張して、体の震えが止まらなくなってきた。
怖い…怖い…怖い……
「アーティ、体調悪いん?今日はやっぱり休んどくか?」
頭がガンガンして目の前が真っ暗になりかけたところで、温かい手が肩を支えてくれる。
「…あ……」
「顔色悪いで?ベッドで寝とき」
と、端正な顔に心配そうな表情を浮かべてアントーニョがアーサーの膝に手をのばそうとするのに、アーサーは慌てて首を振った。
「ちがっ…えと…緊張しすぎて…体調は悪くない」
ここでまた顔を合わせるのが遅れては大変と、必死に身を引くと、
「ほんまに?無理せんでもええで?」
と、一応はアントーニョはアーサーを抱え上げようとしていた身を起こして、アーサーの顔を覗きこんだ。
「あの…俺……あまり外出たことなくて、他人と話した事も上手く話せた事もないから……」
と、緊張と羞恥と悲しさと諸々で顔が熱くなり眼の奥がツンとする。
するといきなりぎゅうっと抱きしめられた。
「アーティ、もうなんなん、自分っ!!可愛すぎて親分おかしくなりそうやわっ。
ええよ、別に他の奴となんて話さへんでもっ。
ず~っと親分の隣で親分とだけおったらええわっ。
ギルちゃんもフランも近づいてきたらどついたるから、怖がらんでもええんやで?」
何故かひどくテンション高くそんな事を言われて、ぎゅうぎゅう温かい腕で抱きしめられて、アーサーはひどく混乱した。
なに?なにを言われてる??
「このままやと可愛すぎてちょっかい出されたらあかんから、これはこうやって下ろしとこうな。」
と、にこにこと上機嫌のアントーニョが、民族衣装のヴェールを降ろさせる。
「広間では危ないから親分の側離れたらあかんよ?」
と、そうしておいてにっこりと綺麗な顔で微笑むと、自身もきっちり礼服を着こなしたアントーニョはアーサーの肩にてをかけて、
「ほな、行こか~」
と、部屋の外へとうながした。
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