続恋人様は駆け込み寺【白雪姫の継母は毒林檎を差し出し赤の女王は首を刎ねろと叫ぶ】12

「お?どうしたんだ?戻ってきたのか?」 ギルベルトが向かって行くとエンリケは即身を翻して再度雨の中へと消えていったため、王への用心のためにも深追いはせず、床にへたり込んで震えている水木を回収して二階へと戻りかけたギルベルト達は、逆に上から下りてきたアントーニョ達と鉢合わ...

続恋人様は駆け込み寺【白雪姫の継母は毒林檎を差し出し赤の女王は首を刎ねろと叫ぶ】19完

そして…… 「何故あそこで出てきてしまったんですか。あれだけ綿密に計画を立てて、もう少しで計画完了でしたのに…エンリケ様、聞いてますか?」 こちらはギルベルト達と分かれてヘリで帰宅のエンリケと王。

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「…ほんま…親父に無理無理放り込まれた演奏会のはずが、すごい体験でしたわぁ…。 これはもう旅仲間達に自慢したらな」 こうして再度船上の人となった 9 人。 船には無線がついていて、操縦も連絡もマシューがしている間に一息ついたところで、黒井が相変わらずな様子で...

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「この人が黒幕ですかぁ。どないしはるん?」 怯えた水木に背中にしがみつかれた状態にも構わず、ズルズルとそのしがみついた水木を引きずりながらもダイニングに駆けつけた黒井は、まあ…帰れるなら俺はなんでもええんですけどね…と、他の考えをうかがうようにぐるりとまわりを見回した。...

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バキバキィィ~~!!!! 木で出来ていたらしい壁が、アントーニョの渾身の蹴りで木っ端みじんに砕け散った。 これが不運なギルベルトあたりなら、壁がコンクリで出来ていて骨にひびが入るとかいうオチになっていたのだろうが、そのあたりはさすが強運の男である。 そし...

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こうして恋人の手を引いて場所を変えたダイニング。 リビングにつながるドアはしっかりしめて、アントーニョはあたりを見回した。 カーテン…持ってきたったら良かったやんな。

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そんな、構われ倒されているアーサーの側にしてみれば、本気でわけがわからず、意味もなく、感情のままに行動しているような恋人に、不安な気持ちが霧散していくが、日常的な感覚が戻ってくると、今度は別の困惑と焦燥にアーサーの大きな澄んだ眼が揺れた。

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「んで、この際だから聞いちゃうけど…半年前のエンリケの件で俺にメールくれたのって水木さんって事でいいんすよね?」 ずずっとカップの中のコーヒーをすすりながら、ギルベルトは即本題に入る。 水木はそれに小さく頷いた。 まあ、ここまでくれば確定だろうが…。

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一方で 2 階の生首部屋…。 「アーサーさん、見ない方がっ!!」 と、テーブルの上に気付いて慌てて言うマシューを制して、アントーニョは真っ青な顔のまま硬直するアーサーの肩をポンポンと軽く叩いてのんびりとした口調で言った。 「よお出来とるわ。アーティ、よく...

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「なるほど…そういう事だったのか…」 水木から遅れて水木を追って 2 階から降りてきたギルベルトは少し離れた場所でエンリケと水木のやりとりを観察している。 そのさらに後方にはギルベルトに付いてきたフランと王。

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ああ、あの得体のしれない目…。 あの目から逃れたくて自分より強い意志を持った後輩に秘かにすがったのに…。 ああ…恐ろしい… あの男はまったくもって恐ろしい…。

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「それにしても… 1 階は白雪姫だったけど、 2 階はなんだか不思議の国のアリスなんだな。」 そんな中でしっかりとアントーニョに肩を抱え込まれながらもゆっくりとあたりを見回していたアーサーが言う。

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リビングを出て玄関の方へと戻るとエントランスのようになっていて、そこに凝った装飾の手すりのついた螺旋階段がある。

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相変わらずの雷雨。 さきほどから雷が光り、雨が窓ガラスを割ろうとでもしているかのような勢いで叩きつけられている音と混じって、なかなか煩い。

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「で?他に気づいた事は?」 窓の向こうはもう外の景色など見えないくらいの土砂降りで、それでも何か考えこむようにぼ~っと外に視線を向けながら聞くマシュー。 「今回の黒幕の企みは一応失敗した…ということになるんでしょうけど、今後どうなると思います?」

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「とりあえず…今回の目的な、俺様に対する嫌がらせだと思う…。」 何から話そうか…とギルベルトは一瞬悩んだが、結局順を追って話すことにした。 「まずはこれ見てくれ」 と、マシューに差し出したのは自分の携帯のメールである。 そう、つい先頃届いたあれだ。

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「あんただけわからねえんだ。何故あんたは今回ここに来たんだ?」 他から話が聞こえない程度には離れた窓際にマシューを誘導したあと、ギルベルトは若干声のトーンを落として聞いた。

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「そういえばこの部屋…」 英一の状態はどうやら落ち着いたらしくフランシスが付き添っていて、英二は何故かその隣でひどくうなだれている。

続恋人様は駆け込み寺【白雪姫の継母は毒林檎を差し出し赤の女王は首を刎ねろと叫ぶ】1

――失敗した…… と、男は内心舌打ちした。 うまくいくはずだった…。 裏切り者に恐怖心を与えながらも、憎き敵に全ての罪を着せ、できれば皆に断罪をさせる予定だった。 全ては予定通りに……なのに、たった 1 つのミスが計画を狂わせてしまった。