続恋人様は駆け込み寺【白雪姫の継母は毒林檎を差し出し赤の女王は首を刎ねろと叫ぶ】15

こうして恋人の手を引いて場所を変えたダイニング。
リビングにつながるドアはしっかりしめて、アントーニョはあたりを見回した。

カーテン…持ってきたったら良かったやんな。

これが適当な相手なら適当な場所で適当な体勢でやるところだが、あいにくアーサー相手にそれはない。
アントーニョの気持ち的なもの…というのもないとは言わないが、それよりもアーサーが無理だ。

どれだけおぼっちゃまなのかと思わないでもないところではあるが、アーサーの自慰を手伝う――というより代りにやってやると言った方が正しいか…――時は、いつもベッドの上なのは当たり前として、その後は優しく丁寧に、まるで女性との行為の前のペッティングのように愛撫して高めてやって出すのだ。

――こんなんやないと能動的に出せへんから自分でできひんのやんな…。

そう思いつつも、その最中の恋人は当然非常に可愛らしいし、その行為も楽しいので続けている。

そう、可愛いは正義だ。
…が、今はそうも言ってられない。

ベッド…は館内を探せばどこかにはあるかもしれないが、この状況ではさすがに出来ない。
かといって椅子に座って…というのでは無理そうだ。

う~ん…と唸るアントーニョ。
横たわれるとしたら床か10人分はあるであろう大きなダイニングテーブルだが…

「あ、そか。これにしよ。」

アントーニョはその上にかかっていたこれまた大きなテーブルクロスをひっぺがし、丁寧に折りたたんで人が一人横たわれるくらいの大きさにしてテーブルに置く。

そこにうながすと、アーサーは若干身を固くして

「…まさか…ここで?」
とアントーニョをみあげた。

「俺らしかおれへんし。床よりええやろ?」

と、当たり前にきっぱりそういう恋人に、アーサーは一瞬躊躇するものの、そこでさらりとまた肩にまわされていた手が立ったままの状態で意味ありげに動き始めたことでわきあがってきた若い熱に耐えられずに、そこに横たわる。

こうして汚さないように下だけは脱がせて、

「多少なら大丈夫やけど、あんまり大きな声は出さんといてな~」
と、声をかけ、いつものように始められる愛撫。
そのあたりにあったナプキンを必死に噛むアーサーに、アントーニョはクスリと笑った。

童顔の恋人が羞恥のあまり涙目になり、何かをこらえるように声を殺すその様子は、何かいとけない子にイケナイ事を強要しているようで、背徳感を感じるとともに興奮する。

そのせいだろうか…何か熱い視線を感じる気がした。

…?

が、振り向いてもドアはしっかりしまっていて、あたりを見回しても当然人の陰など何もない。
気のせい…か?

――…っ…トーニョ…?
手が止まっていたのだろう。

熱い息を吐きながら涙があふれる大きな丸い目でうながす恋人に、アントーニョは注意をそちらへと戻す。

「堪忍。ちょっとボ~っとしとった。ええよ。出し?」
と、安心するように微笑んで愛撫の手を速めてやると、恋人は可愛い声をあげて吐精した。

全てを吐き出してぐったりしている恋人の様子も可愛らしい。
ああ、もう何をしていても可愛いわけなのだが。


アントーニョは半分意識が飛んでいるようなアーサーの手からしっかりと噛みしめていたナプキンを取りあげて汚れた自分の手を軽く拭くと、まくりあげていたシャツの下の汚れたアーサーの白い腹を拭いてやり、シャツを戻し、下をはかせて、それをぽ~んとゴミ箱の方に放り出して、

「起きれる?」
と、アーサーの体を起してやった……その瞬間…!!!

――人の気配っ?!!

バッと何かがうごめく気配を感じてゴミ箱の方を振り向くと、そこには壁から伸びている手。
普通の人間であるならそのホラーじみた光景に悲鳴をあげて逃げるところだ。

――たとえその手がしっかり先ほど放り出したナプキンを掴んでいたとしても…――


しかし我らがKYキングは一味違う男だった。

恋人が関わるものはすべて独占し、欠片も他人には渡したくない。
それがたとえ恋人の体液で汚れただけのナプキンだったとしても…だ。



それ返しぃぃ~~!!!

親分は宙を飛んだ。



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