バキバキィィ~~!!!!
木で出来ていたらしい壁が、アントーニョの渾身の蹴りで木っ端みじんに砕け散った。
これが不運なギルベルトあたりなら、壁がコンクリで出来ていて骨にひびが入るとかいうオチになっていたのだろうが、そのあたりはさすが強運の男である。
そして…さらに幸運な事には、その向こうで驚きに目を見開いたまま固まっている今回の黒幕の姿。
手にはしっかりさきほどのナプキンを握りしめている。
バン!と開くリビングに続くドア。
鍵はかかってなかったし、さすがに入るなと言われてもこの騒ぎだ。
ギルベルトが驚いて飛び込んできて、同じく目を見張った。
「…かくほ……トーニョ、エンリケを確保しろおぉぉぉ~~!!!!」
声の限り叫ぶギルベルトの指示は、ある意味通る。
「それ放せやぁぁ~!!!」
「いややぁ~~!!これはおれん家の私物やでっ!!俺のもんやあぁぁ~!!!!」
従兄弟同士でひっぱりあう汚れたナプキン。
そこから少し離れたテーブルの上で、さきほどまで下に敷いていたテーブルクロスを被って、『見られてた…死にたい…死にたい…死にたい…』とプルプル泣きながら震えるアーサーの横を通り過ぎ、こんな状況でもナプキンを取り合って逃げる様子のないエンリケに向かってギルベルトは疾走した。
「ギルちゃん、自分もかぁぁ~~!!!」
「やっぱり自分もアーサー狙っとったんかぁぁ!!!」
と、乱入したギルベルトに飛ぶ似た面差しの従兄弟たちの怒声に、非常に情けなくもしょっぱい気分になるギルベルト。
「違えよっ!!!俺が確保してえのは、その布っきれじゃねえっ!!エンリケだっ!!!」
と、もう涙目で無実を訴えるギルベルトに、
「ほな、早く連れて来ぃ!!」
とアントーニョに、
「気持ち悪い事言わんといて…自分みたいなの興味ないわぁ」
とエンリケにゴミをみるような眼で見られてそう言われて、もう泣くしかない。
何が悲しくて“気持ち悪い”とまで言われてんだ、俺様?
…と、思いつつも、ここで引くわけにはいかない。
「そういう意味じゃねええぇぇ~~!!!
黒幕のエンリケ捕まえたら脱出手段確保できるだろうがっ!!!
そんな布っきれ、捕まえてからどうにでもすりゃあいいだろっ!協力しろっ!トーニョ!!!」
「あ~そうやったなぁ」
と、そこでやっとわかってもらえたらしい。
アントーニョも協力してエンリケを拘束した。
ここまでどたばたしていれば他も気づかないわけはない。
皆がダイニングに集まってくる。
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