青い大地の果てにあるもの_ga
「タマ…大丈夫か?」 さすがに蒼褪めた顔で手にした日記を凝視するアーサー。 そのまま数分固まっているので、ギルベルトが声をかけると、珍しく黙って首を横に振った。
「ここまで来ると誰が誰だかわかんないな…」 極東支部の避難所跡の廃墟にたたずんでアーサーがつぶやいた。
こうして泊っていた伊豆の温泉旅館を発って東から西に魔導生物を討伐しながら一行は車で移動している。 途中で加わった菊も 1 号車に加わった。
とりあえず基地攻めは鉄線が場所を特定後ということで、それまでどうするかと話し合っているところに、──菊様…ご報告が…──と、鉄線の 1 人が気配もなく現れて、菊の前にひざまずいた。
こうして思いがけず和やかに終わった末弟との再会。 おそらく今回の遠征が終われば、当分世界各国のレッドムーンの基地を回ることになるのだろうから、当分極東方面に来る事はない。
「ア~サ~さぁあ~~ん!!!」 「マシュー!!マシューじゃないかっ!!!!」 激動の一夜が明け、大広間で全員が食事を取っていると、菊が来客を告げて来た。 そこで入ってきたふわさらの柔らかい色合いの金髪の青年を目にした途端、アーサーが立ち上がって駆け寄って行った。 ...
優しく撫でる手。 初めての感触。 「…タマが殺されたって思って…死にたくなった」 あの時の事を思い出すだけでゾッとして身体の震えが止まらなくなる。
欲望に素直に全力疾走する同僚を見送って、翼は葛藤する…。 生の半裸アーサーさん …その言葉に惹かれないでもないが、ここは理性だ。 そんなものを見たら、絶対に鼻血を抑えられない。 そうしたら…気づかれる。 浴場に流れる鼻血で絶対に気づかれる。 ...
こうして期待に胸ふくらませた温泉旅館。 当然のようにギルベルトとアーサー、エリザとフランソワーズ、そして遠子と翼が 2 人部屋。 あとの 6 人のフリーダムは 3 人ずつに分かれて泊ることに。
「 やばい、やばい、やばい、やばい、どうしようっ!!! 」 ブルーアース初の敵基地攻略のための初遠征。 その随行員用の移動車両の中で、片手にお玉、片手に鍋を持ちながら乙女が絶叫する。
アーサーが身にまとうのは菊が用意したのだろうか… 昨今では極東でもあまり着られなくなった着物。 しかも何故か女物。 しかしギルベルトが居た頃の実家では皆、普通に着物を着ていた。
そんな風に心の底からほっとして、ギルベルトが胸をなでおろしていると、 「申し訳ありませんっ!!」 と、ガバっと頭を下げた後、菊は 「この馬鹿共!アーサー様から離れなさいっ!!」 と子供達に向かって叫ぶ。
「着いたみたいだな。んで?車乗り換えるのか?」 それに気付いてギルベルトが寝室から出て来てエリザは見知らぬ相手と2人きりの状況から解放されて、ややホッとして大きく息を吐きだした。
中からギルベルトが姿を見せると、菊があわててギルベルトの前に膝まづく。 「お前…それやめろ。もう俺はお館様じゃなくてただのジャスティスなんだから」 疲れきったようにそう言って、ギルベルトは綺麗な毛筆で書かれた名前の並んだ和紙を菊に突きつけた。
「まず状況説明してもらえないかしら?」 とりあえず運転は翼に任せて居間に落ちつくと、エリザはドスン!とソファに腰を下ろす。 そう、状況は把握しなければだが、宥め役がいない今は、それをギルベルトに聞きに行ってフランソワーズの二の舞にはなりたくない。 となると、聞...
「それでは、そういうことで、ご命令を、お館様」 菊がギルベルトに向かって膝まづくと、ギルベルトは立ち上がった。
「まあ…感情持ってはいけないとは言いませんから… とりあえず敵討ちでもしてみますか?」 からかうような口調で言う菊に、ちょっと引く一同。
「…抹殺…」 3 人全員が固まるのも気にせず、一位は菊に笑顔をむけた。
一族5 とりあえずそこは安心したところで、ギルベルトは改めて一位と対峙する。 「一位、お前レッドムーンてどういう組織か知ってんのか?」 ギルベルトの問いに一位はにっこりとうなづいた。
一族4 そして最奥。 まっすぐ進んだ先の大きな扉が開かれると、そこは大広間になっていて、奥には玉座のようなものが二つ並んでいる。 その一つには桜のようにキチンと着物を着こなした同年代くらいの娘が座っていた。 ただ違うのは、彼女はギルベルトと同様、欧州系の...