青い大地の果てにあるものGA_13_24_一族8

「それでは、そういうことで、ご命令を、お館様」

菊がギルベルトに向かって膝まづくと、ギルベルトは立ち上がった。

「ここに今潜んでる味方はいねえんだな?」
と確認するギルベルトに、菊は笑みを浮かべてうなづく。

「私以外は全員アーサー様をお守りしております」
「おしっ。全員容赦するなっ!
悪魔と手を結んだ時点でもはや一族と思うなっ!殺れっ!」

ギルベルトは言って剣を振り下ろした。

「承知っ!」
「らじゃっ!」

翼と菊はそれぞれ左右に分かれて敵の退路を断ち、エリザが真正面から道を切り開くギルベルトを追って自分も突っ込む。



そうしてあっという間に累々と屍が並ぶ広間。


「…片付いたわね」
エリザが発動を解いてつぶやいた。

「ああ…終わりましたね」
菊も言って発動を解く。


「ギル?」

エリザが剣を手にしたままその場に立ちすくむギルベルトに心配そうに声をかけると、ギルベルトは振り向いて

「菊、今回は悪かった。…お前には嫌な戦闘させたな」
とつぶやいて頭をさげた。

「いえいえ、私は元々一族のしがらみは大嫌いでしたし清々しました」

と菊はそれに本当に清々しい顔で微笑む。

そしてさらに、
「場所も名称も関係ありません。お館様のいる場所が私にとっての一族ですし。
お館様の意向に背いた時点で彼らは敵なのでどーでもいいんです。
鉄線は所詮場所じゃなくて人につく人種ですから」
とつけたした。

一瞬の間。

うつむくギルベルトに、
「実は…ギルが一番ダメージうけてない?」
と言うエリザの言葉にギルベルトは

「いや、俺は」
と否定しつつ首を横に振るが遺体として転がる河骨の長、紫苑の前にしゃがみこみ開いたままの目を閉じさせると

「こいつにも…気の毒な事したな。
俺は…こいつらにどうしてやれば良かったんだろうな」
と、またつぶやいて肩を落とした。


「肝心の黒幕の一位は逃げたようですが。
ま、良かったんじゃないでしょうか。?あの怖い女性と一緒にならずにすんで。
その点アーサー様は嘘みたいに可愛い方ですよね」
と、菊が話題を変えようと口を開いた。

「そいえばお姫様は今どこに?」
と、エリザがその話題にのる。

「ああ、ご案内しますよ。
灯台下暗しというか…まあ結構ありがちな場所なんですけどね」
菊は言ってクルリと反転すると出口へ向かう。

「ここは飽くまでレッドムーンの基地と言うより一位が一族を率いて立て篭もるだけのために用意した、いわば本基地の存在を隠すためのダミーのようなものなので、壊してもおいても大丈夫ですよ」

という菊の情報に従って、全員出たあとにエリザが容赦なく大剣でたたき壊して火をつけた。



パチパチと夜空を炎が染めるその様子をじ~っと眺めるギルベルトに、菊は後ろから声をかけた。

「あれが全部じゃないんですよ。
一族は少なくはなりましたが本家は先のお館様が急死なされた後末子のマシュー様が継いでいらっしゃいます。
河骨もそれに従い地元に残って本家をもりたてている者も修行を積みながら20歳になってブルースターに入れる時を待っている者もおります。

私は一位がお館様の意志に沿わぬであろう計画たて始めたあたりでお館様に忠誠を誓っている手勢10数名連れて一位の所に潜り込みましたが、鉄線も分家で地元に残ってる者もおります。

お館様が気に病まれる事はありませんよ?
みんなそれぞれそれなりにやっていますから。

私達は別にお館様にどうあって欲しいじゃなくて、私達の方がお館様の事好きで勝手についてきてるだけですから、お気になさらず。

さあ、アーサー様の所にご案内しますから…とりあえず宿に」

うながされてギルベルトはみんなの待つ車に乗り込んだ。



「着くまで少し…一人にしてくれ。」

車が動き始めるとギルベルトは一人寝室へと消えて行った。



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