青い大地の果てにあるものGA_13_28_一族12

そんな風に心の底からほっとして、ギルベルトが胸をなでおろしていると、

「申し訳ありませんっ!!」
と、ガバっと頭を下げた後、菊は
 「この馬鹿共!アーサー様から離れなさいっ!!」
と子供達に向かって叫ぶ。


「や~だもん!菊様きら~い!」
べ~っと舌を出す子、

「や~。怖いよ~。怒った~」
と泣いてアーサーに抱きつく子供。

「この人…お館様?」
と、とててっと駆け寄って来て物珍しげにギルベルトの足にしがみついてくる子供。

反応は様々だ。


「これは…鉄線一族の子か?」
ギルベルトは笑って足にしがみつく子供を抱き上げて肩車をする。

「はい。遠出している者の子供を一時的にこちらに置いております。
何かの手違いでこんな事に…申し訳ありません」

頭を下げたまま菊は言うと、駆け寄って来た一族の若者に

「そなたらは何をやってたんですっ?!アーサー様に子守りなんて…!!」
と叱責を浴びせた。

怒られた若者は少し困ったような視線を子供部屋に向ける。

「申し訳ありません。
 お館様の大切な方がいらっしゃると子供に漏れまして、一人が覗きにいったらアーサー様が遊んで下さったらしく、気付いたらその子供がアーサー様を子供部屋に引っ張って行ってしまってて」

「そなたらは~…止めなさいっ!愚か者!!」
 と怒鳴る菊に
 「でもアーサー様が良いとおっしゃったので…」
 と困る顔をする若者。


「ああ、いい、いい。子供好きだから一緒に遊びたかったんだろう、タマも」
 ギルベルトは笑って言うと、幼児二人に抱きつかれているアーサーを見る。

その言葉に菊が
 「は、申し訳ありません。実はこの隠れ家、もう一カ所、お館様のお泊まりだったお部屋にもつながっておりますので、とりあえずそちらの方に戻ってお休み下さい」
 とうながすと、

「いや~!!(泣」
「いっちゃだめ~!!(号泣」
と子供達が泣きながらアーサーにしがみついた。


「そなたららいい加減にしなさい!
今まで遊んで頂いただけですごい光栄な事なんですよ!!」
と、叱る菊に子供達は更に激しく泣き出す。

「ああ、いいから。子供達が寝るまでな。俺様もここにいる。
エリザ達は部屋で休ませてやってくれ」
 ギルベルトは子供を肩車したまま子供部屋に入っていった。


「わ~い、お館様、大好き~♪」
「お館様、あそぼ~」
子供達はとたんに元気になって、ギルベルトの周りにもまとわりつき始める。

「お前らな~、もう寝る時間だ。ここにいてはやるから布団に入れ」
と、ギルベルトは肩車をしていた子供を下ろして他の子供と共に抱えると布団に放り込み、自分もその間に寝転がって布団をかけてやる。

恐らく一番小さい2歳くらいの子供はアーサーにしがみついたままうとうと始め、アーサーがその背中をポンポンと軽く叩いて寝かしつけ始めた。


「子供寝るまで子供の気が散るからお前も部屋出てろ」
とギルベルトが言うと、菊は
「申し訳ありません」
と恐縮しながら部屋を出て行った。


そして

──夫婦の図、夫婦の図ですねっ!!

と、相変わらずパシャパシャする遠子には

「お前も…居たいならせめて口閉じろ。ガキどもが寝れねえだろ。
うるさくすんなら強制退去だぞ」
と、声をかける。

とたんにピタッと静かになる遠子。

それを確認すると、ギルベルトはアーサーに視線を向けた。




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