青い大地の果てにあるものGA_13_23_一族7

「まあ…感情持ってはいけないとは言いませんから…
とりあえず敵討ちでもしてみますか?」
からかうような口調で言う菊に、ちょっと引く一同。


「…もぅ…いい。終わらせてくれ。
エリザ、翼、誰でもいいから…俺様ごとこいつら薙ぎ払え」

敵を討っても、誰を何人殺しても、どれだけつらい思いをして手を汚しても、どんなに後悔しても、何をしてももうアーサーは戻ってはこない。

もう汚れた自分の手を洗ってくれるという優しい手も、傷ついて戻った時に抱きしめてくれる優しい腕も二度と戻ってこないのだ…。

もう何をしても何の意味もない…

虚ろな目で言うギルベルトにぎょっとした顔をして慌てる菊。

「ちょ、ちょっと待った。それは…やめておいたほうが…」

「ええ、やるなら真っ先にあんただけ殺ってやるわよっ!」

逆上したエリザが大剣をブン!!と振り回す。

その後ろでは翼もそれにつられるように、何故か背負って来ている60cm取っ手付き業務用大型中華鍋を手にして、素振りを始めた。


そんな風にやる気満々の女2人。

大剣を振り回す女…まではとにかく、その女の後ろで血走った眼で重さや空気抵抗などものともせずブンブンと鉄の中華鍋を振り回す女はなかなかシュールにして不気味で、戦闘慣れしているはずの一族達もやや引き気味である。


そんな周りの空気もすでに全くどうでもいいことのように、ギルベルトは手の中の剣に視線を落とした。

本当だったら大切なものを守るためのものだったはずの剣…
でも…本当に大切なものは自分のせいで失われてしまった……

今自分に出来ることなんて…守るために黄泉の国まで追いかけていくことくらいだ…

「お前ら…やる気ないならいい」
ギルベルトは剣を逆手に持ち自らにむける。

──遅れてごめんな。すぐ追いつくから…



「うあ、ストップっ!!!」

ブスリと剣が貫いたのは、あわててギルベルトの前にかばうように出された菊の手だった。

虚ろな目で、それでも少し不思議そうに見上げるギルベルトに、菊は痛みに少し顔をゆがめながら

「勘弁して下さい」

とそれでも少し笑みを浮かべると、

「モディフィケーション」
と剣が突き刺さってない方の手に握ったジュエルに向かい唱えた。

するとジュエルは光に解け、苦無となって菊の手に収まる。


「菊…それは…」

目を見開くギルベルトに

「御覧の通りアーサー様のジュエルとはまた別物ですよ。
一位達をかたづけるまではアーサー様をこっそりかくまわせて頂こうと思ってたんですが…」
と、苦い笑いを浮かべる。

「じゃあ…タマは?」

「はい。ご無事ですよ。隠れ家で一族の者に護衛させてます。
と、いうわけで長の私を始めとする鉄線一族はこれよりお館様の下に付かせて頂きます」
と、菊はギルベルトの前に膝まづいた。



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